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4冊目 『不死鳥の飼いかた全集』 その3

「でも、あんた、かくれんぼはどうしたのよ? あんたはかくれる側でしょ」

「あはは、お姉ちゃん、ホントは内心ホッとしてるくせに。あたしと本気でかくれんぼしたら、たぶん十年は見つけられないと思うよ。仮に見つけられても、お姉ちゃんに捕まえられるかしら」

「ずいぶん甘く見てるのね。どうかしら、今ここで証明してやってもいいわよ」

「ちょ、やめてよ! なんでぼくの部屋で争おうとしてるのさ! 鬼ごっこしたいなら外でやればいいだろ」


 あわてて止める俊介を、里音と花音が同時ににらみつけました。うっとあとずさる俊介をよそに、花音はぽつりとつぶやきました。


「別になにも企んでないわ。ホントよ」

「どうだか。そうやってわたしを油断させて、またなにかハメようと思っているようにしか見えないわよ」

「お姉ちゃんったら、あたしがいつお姉ちゃんのことハメたのよ?」

「いつもハメられてるじゃない!」


 どなる里音をなんとかなだめて、今度は俊介が花音にたずねます。


「とにかくいったいなにが目的なんだよ。正直ぼくも、里音ちゃんと同じようにしか思えないよ。ぼくの家に来て、いったいなにをするつもりなのさ」


 花音はふぅっと小さく息をはいて、それから真顔で答えました。


「だからいってるじゃん。なにも企んでないって。ただあたしは、お姉ちゃんの魔界図書館の本探しを、手伝ってあげようって思っただけよ」


 里音が目を見開きました。右手を開き、いつでも魔界図書館の本を開けるように準備します。花音は肩をすくめました。


「別に油断させようとか、そんなこと思ってないわよ。それに、もし仮になにか企んでいたとしても、こんなふうにすがたを現さないで、こっそりやると思うけど。どうせお姉ちゃんには見つからないんだし」

「なんですって!」


 ヒステリックにどなる里音を、花音はなだめるように続けました。


「まぁまぁ、とにかく落ち着いてよ。あたしがお姉ちゃんを手伝う理由は、残ってる魔界図書館の本が、どれもとんでもなくやっかいで、お姉ちゃんには荷が重いからよ」

「荷が重い? ずいぶん見くびってくれるじゃないの。司書のわたしが扱いきれない本なんて存在しないわよ」


 自信たっぷりにいう里音を、花音はジト目で見ています。


「司書じゃなくて司書見習いでしょ。ま、それはいいけど。でもそこまでいうなら、すぐに見つけられるはずよね。いいわ。じゃああたしは手伝わないから。お姉ちゃん一人でがんばってね」


 帰ろうとする花音を、里音はまじまじと見つめました。


「……ホントに手伝ってくれるの? またうまいことひどい目にあわせて、わたしをからかおうとか、そんなこと思ってないの?」

「だからさっきからそういってるのに。用心深いのはいいけど、お姉ちゃん疑いすぎだよ。あたしは別に面白ければなんでもいいの。で、残ってる本のことを思い出したら、お姉ちゃんと協力して本を封印するほうが、お姉ちゃんと鬼ごっこするより楽しいかなって思ったのよ。これじゃ納得しないかしら?」


 里音はまだ疑っているようでしたが、やがてぽつりと質問しました。


「あんた、次の本がどこにあって、いったいどんな本なのか知ってるの?」

「当り前じゃん。っていっても、だいたいの場所しかわかんないけどね。まあ、なんの本なのかはちゃんと覚えてるから、安心して」

「覚えてる? 覚えてるって、どういうことよ?」


 花音は「へっ?」と聞き返しました。里音はいらだった様子で再度聞きます。


「だから、なにを覚えているのって聞いてるの。ていうか、覚えてるって意味がわかんないんだけど」

「……お姉ちゃん、まさかなんだけどさ、どうして人間界に魔界図書館の本が逃げたか、忘れちゃったんじゃないよね?」

「忘れるはずないでしょ! あんたが逃げまわるから、わたしが本を投げて、それが合わせ鏡の間にある鏡にぶつかった。だから人間界に本が落ちていったんでしょ。そんなの忘れるはずないじゃないの」

「そんとき投げた本は?」

「……あんたを追いかけるのに夢中で、覚えてないわ」


 花音はわざとらしく、はぁーっと盛大なため息をつきました。里音はぐぬぬと歯を食いしばっていましたが、文句はいわずに黙っています。花音は続けてたずねました。


「ちなみにさ、あと何冊逃げたかって知ってるの?」

「……知らないわよ、そんなの。いったでしょ、あんたを追いかけるのに夢中だったから、覚えてないわよ」

「お姉ちゃんが投げた本は、全部で六冊だよ。で、とりあえず花子ちゃんとアクマールちゃん、それにこの間のおばけ屋敷は封印できたみたいだから、残りは三冊ね。ま、この三冊は最初の三冊と比べて、とんでもなくめんどくさい曲者ぞろいだけど。……ここまで教えてあげたけど、まだ疑ってるの?」


 里音はしばらく花音を見あげてから、ふーっと息をはきました。


「まぁいいわ。わかった、協力してもらうわよ。でも、少しでも変なそぶりを見せたら、その場でとっつかまえるからね」


 里音が花音に手を差し出しました。花音もその手をにぎって、握手します。俊介がほっとしたように口をはさみました。


「でもよかったね、里音ちゃん。花音ちゃんが手伝ってくれるんなら百人力だよ。あ、今更だけど、ぼくは松田俊介っていうんだ。って、名前はもう知ってたよね。これからよろしくね」


 手を差し出す俊介でしたが、花音も里音もうさんくさそうに俊介の手を見ています。


「……あんた、自己紹介だとかうまいこといって、花音の手をさわろうとしてるんじゃないでしょうね?」

「ええっ? 違うよ、そんなこと考えるはずないだろ!」

「どうだか。あの美緒って子のパンツものぞいたんでしょ? そんなやつのこと信用できないわ。ねえ、お姉ちゃん、ホントに大丈夫? もしかしてお風呂のぞかれたり、変なことされたりしてない?」

「しないっていってるだろ! まったく、ぼくをいったいなんだと思ってるんだよ」

「パンツのぞき魔でしょ?」


 二人いっせいに答えたので、俊介は再びがっくりと肩を落としてうつむいてしまいました。そんな俊介のことは無視して、里音は花音に問いかけます。


「まあパンツのぞき魔はどうでもいいから、早く次の本の場所を教えてちょうだい。それといったいなんの本かも」


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