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3冊目 『悪魔も怖がる魔界のおばけ屋敷』 その10

 本を開いたとたん、本のページがボワッと燃え上がりました。アクマールがよく使う、あの地獄の黒い炎です。アクマールのナイフとフォークを一気に燃やして、そのまま地獄の黒い炎が大きくなっていきました。まるで本自体がコンロのように炎をふきあげていきます。そして、天井をも焦がす炎の中から、ボワワンッとこわもての男が現れたのです。


「わーお、お姉ちゃん、いいセンスしてるわね。アクマールちゃんの相手に、魔界でのライバル店のシェフ、魔人料理長を呼び出すなんて」


 里音が開いた『魔人料理長の男メシ』を見ながら、花音がひゅうっと口笛をふきました。どくろをかぶった魔人料理長は、ギロッとアクマールをにらみつけました。


「ふん、小娘が、お前が生まれたよりはるか前から、このわしはダシを取り続けてきたのだ。わしの前に立ちはだかるなど、生意気にもほどがあるぞ!」


 魔人料理長は、腰にかけていた巨大な包丁を取り外して、ぐっと握って構えました。花音にあやつられた状態でも、どうやら魔人料理長のことは覚えているようで、アクマールもにくらしげに魔人料理長をにらみつけています。それを見て花音が目を輝かせています。


「すごいわすごいわ! まさか本物のクッキングバトル、『死食会(ししょくかい)』が見られるなんて、ああ、これだけでも人間界に来てよかったって感じだわ」


 一人ではしゃぐ花音に、里音がじりじりっと近づきます。花音は意外そうな顔で里音に視線を向けました。


「あれ、お姉ちゃんは見物しないの? せっかくの『死食会』なのに、じっくり観戦しようよ」

「アクマールと魔人料理長の実力は互角だから、観戦なんてしてたら日が暮れるわ。それにあんたをとっつかまえたら、どうせ全部丸くおさまるんだから!」


 息巻く里音とは対照的に、花音は冷めたような目つきで里音を見おろしています。


「なによあんた、なめてると痛い目見るわよ!」

「どうかなぁ? だってお姉ちゃん、もう二冊本を開いてるじゃない。『司書見習いが同時に使える本は二冊まで』っていうルール、まさか忘れたわけじゃないよね? 司書見習いじゃないあたしだってそんなことは知ってるよ」


 つまんなさそうに両肩を上げると、花音はその場に腰を下ろしました。そのままアクマールと魔人料理長の戦いを楽しむ花音でしたが、地面からにょろりとツタが生えてきたのを見て、はじかれたように跳躍しました。


「うまくよけたわね、でもまだまだ!」


 地面から大量のツタが現れ、一気に花音に向かって伸びていきます。花音は黒い光を帯びた足でけりまくりますが、どんどん伸びるツタに防御が追いつきません。ついにはツタが、花音の足首をからめとったのです。そのままグルルッと足にツタがからんでのぼっていきます。ふくらはぎから太もも、そして腰までツタに巻かれたところで、花音がビュッとなにかを投げつけてきました。


「イタッ!」


 どうやら石を投げたようで、里音が持っていた本が弾き飛ばされました。そのとたんに花音に巻きついていたツタが消えて、花音はくるるんっと一回転して着地しました。


「びっくりしたわ、うまく本を吹き飛ばせたからよかったものの、あと少しでつかまっちゃうところだったわ。でもどうして他の本を使えるのよ?」


 花音が目をぱちくりさせます。驚いている花音を見て、里音はしたり顔で笑いました。


「司書見習いでもないあんたが、わたしにルールの説明をするなんて、ずいぶんまぬけなことをするじゃないの」

「どうして他の本が使えたのよ? あっ、わかった、お姉ちゃん得意のずるっこね!」

「違うわよ。別にずるでもなんでもないわ。ただ、アクマールや魔人料理長は自立型書籍で、さっき出した『魔界ガーデニングのススメ』なんかは操作型書籍ってだけよ」

「自立型に、操作型? なにそれ、そんなの初めて聞いたわ」


 ちんぷんかんぷんといった顔をしている花音に、里音は説明を続けました。


「自立型書籍は最初に魔力をこめるだけで使える本よ。なにかを召喚したりする本はこれに当たるわ。それに対して操作型書籍は、常に手で持っていないと使えない。でも、そのぶん操作型書籍のほうが使う魔力は少なくていいわ。司書見習い試験でもよく出るルールよ」

「ふーん、なんだかよくわからないけど、でもそれと他の本が使えたのとどう関係があるの?」

「大ありよ。だって自立型書籍は、召喚にさえ成功すれば、あとは本を閉じない限り、ずっと出たままなのよ。手放してももちろん本の効果が消えることはない。その間にほかの本を開いても関係ないし、司書見習いの冊数限界にもカウントされない。だから今のわたしは、使える冊数が二冊のままよ。これでも退屈?」


 花音は八重歯をむき出しにして、目をらんらんと輝かせました。まるでけもののような笑顔に、俊介たちはもちろん、里音ですら引き気味です。


「退屈? まさか。むしろこうでなくっちゃ面白くないわ。さあ、お姉ちゃん、あたしと遊びましょ。鬼さんこちら、手のなるほうへ♪」


 花音が手をたたきながら、すたたたっと出口へ向かいます。あわてて追いかけようとした里音に、美緒が声をかけます。


「待って、里音ちゃん、一人でつっぱしっちゃだめよ! みんなで行かないと危ないわ」

「そんなこといっても、その子たちをかばいながら花音を追いかけるなんてできないわよ。わたしがとっつかまえてくるから、あんたたちは待ってなさい!」

「なにいってるんだよ、里音ちゃん! ぼくらだけでどうやって身を守れっていうのさ! 花音ちゃんだけじゃなくて、このおばけ屋敷自体がとんでもなく危険だってのに」

「ああもう、うっさいわねぇ」


 里音が手のひらを開きました。いつもは赤く染まる手のひらが、なぜか今回は白い光に包まれます。そしてポンッと、真っ白な背表紙の本が現れたのです。背表紙どころか表紙も全部真っ白な本を、里音はひょいっと俊介に投げてわたしました。


「危なくなったら、その『白紙の本』を開いて身を守りなさい。このおばけ屋敷の化け物程度なら、ちゃんと封印できるはずだから」

「あっ、ちょっと待ってよ!」


いつもお読みいただきありがとうございます。

同時連載中でした『清子とうその呪い~正直者の日野清子さん~』が無事完結いたしました。

もしよろしければそちらもどうぞ♪

ご意見ご感想などもお待ちしております♪

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