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3冊目 『悪魔も怖がる魔界のおばけ屋敷』 その1

 アクマールを封印してから二日間、美緒は風邪でお休みしていました。三日目の朝、通学路に美緒のすがたを見つけたので、俊介は急いでかけよりました。


「美緒ちゃん、おはよう! もう体調は大丈夫なの?」


 俊介に声をかけられて、美緒はにこりと笑いました。マスクはつけていなかったので、よりいっそうかわいらしく見えます。サイドポニーにまとめた髪をいたずらっぽくゆらしながら、美緒がこっくりうなずきました。


「ありがとう、心配してくれて。うん、もう大丈夫よ。心配かけちゃってごめんね」


 ぱっちりした目が、今日はいつもよりも輝いて見えます。どぎまぎする俊介でしたが、うしろから声をかけられて、二人の雰囲気は完全に壊されてしまいました。


「美緒ちゃん、おはよう。今日もよろしくね」


 真っ黒なレースの日傘をさした里音が、お上品そうにおじぎしました。赤いくつに、いつもの黒いだぼだぼのエプロンドレスすがたですが、今日は日傘をさしているからでしょうか、なんだか貴族のお嬢様のように見えます。俊介は憎らしげに里音をにらみつけましたが、美緒は目を輝かせて里音を見つめました。


「あ、おはよう里音ちゃん、今日はすてきな日傘さしてるのね。でも、ちゃんとお日さまにあたらないと大きくなれないわよ」


 俊介は口をあんぐり開けたまま、おそるおそる里音を見おろしました。里音は日傘に顔を隠したまま、うわずった声で答えました。


「も、もう、美緒ちゃんったら、こないだいったでしょ、わたしは同じクラスメイトだから、子供あつかいしないでって」

「あ、そうだった。ごめんね、でも、里音ちゃん見てるとついかわいがりたくなっちゃって。ねえ、ほっぺさわってもいい?」

「だめに決まってるでしょ!」


 声をはりあげたあと、里音はハッとしてから、お上品そうにつけくわえました。


「恥ずかしいから、さわらないでね」

「そっかぁ」


 あからさまにがっかりする美緒を、俊介はほほえましい気持ちで見ていましたが、ふと、頭の中で花子に話しかけたのです。


 ――花子、花子、聞こえる? 花子――


『何度もいわなくても聞こえてるわよ。で、なに?』


 俊介はほっとしたようにほおをゆるめて、それから美緒の頭上を見つめました。美緒の頭から、ふわりと花子のすがたが見えました。

 花子はゆうれいの力を使って、頭の中でテレパシーで会話できるようにしてくれたのでした。美緒に気づかれないように、状況を報告しあえるようにということでしたが、なんだか内緒話をしているようで楽しくなります。はずんだ声で俊介は花子にたずねました。


「それで、この二日間は美緒ちゃんになにもなかったか?」

「えっ? わたしがどうかした?」


 俊介はハッとして、あわてて口をふさぎました。頭の中に花子の声がこだまします。


『バカッ! 頭の中で会話しろっていったでしょ! どうして口に出してるのよ』


 ――だって、つい――


『とにかく早くごまかして。あやしまれたら面倒よ』


 俊介はうなずいて、急いで首をふりました。


「あ、ごめん、なんでもないんだ。ただの独り言だから、気にしないでね」


 美緒はまだ首をかしげていましたが、深くは気にしていない様子でした。俊介はほっと胸をなでおろしました。


『気をつけてよね』


 ――うん、ごめんよ。それで、この二日間は大丈夫だった? 美緒ちゃん、ゆうれいとか悪魔とかに狙われてなかったかな――


『うん、それは大丈夫よ。美緒もずっと風邪で寝こんでたし、外を出歩かなかったから、ゆうれいとかに目をつけられる心配もなかったしね。あ、そうだ、わたしも里音ちゃんに報告があるんだった。いったんテレパシーを切るわね』


 俊介はうなずき、美緒と里音に視線を移しました。どうやら里音の日傘について話をしているみたいです。


「へー、そうだったの。ごめんね、わたし知らなくて。俊介君は知ってたの? 里音ちゃん太陽の光あびると、やけどの一歩手前くらいにひどい日焼けになっちゃうんだって」

「えっ、そうなの?」


 答えたあとに、またもやしまったと俊介は口をふさぎました。里音の目が責めるように俊介をにらみつけています。俊介はすぐにアハハと笑って首をふりました。


「もちろん知ってたよ。きゅ……じゃなかった、里音ちゃんは肌が弱いから、日差しに気をつけないといけないんだって」


 吸血鬼といいそうになって、俊介はすんでのところで言葉を飲みこみました。里音はまるで信用していない様子で、冷ややかな視線を俊介に投げかけました。バツの悪そうな顔で、俊介はうつむいてしまいました。


「なんですって!」


 突然里音がさけび声をあげたので、俊介は飛び上がらんばかりに驚いてしまいました。里音を見ると、しまったという感じで口をふさいでいます。


「二人とも今日はどうしたの? なんだか独り言が多い気がするけど」


 美緒が心配そうに、里音の顔をのぞきこみました。里音は無理やりに笑顔を作って答えました。


「うん、大丈夫よ。ごめんねちょっといろいろ考えごとしちゃって」


 それだけいうと、里音はちらりと俊介を見ました。そのすぐあとに、またも花子の声が聞こえてきます。


『とりあえずあんたにも伝えておくわ。あ、先にいっておくけど、里音ちゃんみたいに大声あげないでよね。これ以上あやしまれたら、いくらわたしでもフォローできなくなっちゃうから』


 ――ごめんよ、わかった。で、いったいなにを里音ちゃんにいったんだい――


『美緒にとりついている間に、また新しい本の波長を感じたのよ』


いつも読んでくださいまして、ありがとうございます。

明日からは毎日1話ずつ更新していきます(日曜日は2話更新する予定です)。

だいたい夕方か夜あたりを考えていますが、時間は日によってずれるかもしれません。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。ご意見、ご感想もお待ちしています♪

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