Chapter Ⅸ デートを誘う勇気
久々の最新話更新です。これでエピソード2のお話は完結です! あぁ……長かったようなぁ……((´∀`*))
拙いとは思いますが最後まで読んでいただければ幸いです<(_ _)>
迷宮みたいな王宮の廊下を通り抜け、目的地のパーティー会場の大広間に着いた。この重々しい扉を見るなんて、久々だなって思ってしまうくらいに長く歩いた感じたような気がした。
「ふぇ……疲れましたぁ……」
ダゼッタはへとへとな表情をして、ばたりと床に尻もちをついた。主が目の前にいるのにだらしないな……と思いながら、俺は重々しい扉の取っ手を握った。
(そう言えば、ライが扉を閉めてくれって王宮騎士団にお願いしていたよな? 扉開くかな?)
鍵がかかっているか分からないし、とりあえず扉を開けよう。
扉の取っ手を引く――すると、ぎぎぃ……と扉が開いた。どうやら鍵はかかっていないようだが……、何故鍵をかけていないんだ? 下手をすれば、邪竜洗脳者が入り込んでしまうのに……。
(まさかな……)
パーティー会場に邪竜洗脳者が入り込んでいるなんてあり得ないと、扉の隙間から大広間の様子を伺う。そこには、会場から抜け出す前と変わらない賑わいのあるクリスマスパーティーが開催していた。どうやら外で起こった事は知らないみたいだ。
「どうしたの? 早く入りましょう」
「お、うん」
扉の前から退くと、アーシェは扉をゆっくり開いてパーティー会場に入った。俺達も彼女の後を追ってパーティー会場に入った。
「よかった……国王様、みんな無事のようね」
賑わいがあって変わりのないパーティー会場の光景に、アーシェは安堵の表情を浮かべていた。
(邪竜洗脳者が潜入した事がバレずに済んでよかったし、国王様やパーティー招待客が無事でなりよりだ)
なんて安堵の表情を浮かべたアーシェを見つめて、ふっ……と微笑んだ。こればかりはアーシェに同情するべきだな。
「アーシェ様!」と呼んで近づく騎士がやってきた。一体誰だろうと騎士の姿を見つめる。右胸に一つ星が刻まれた甲冑を纏っている――あれは王宮警備騎士の人だな。
「探しましたよ、アーシェ様……」
はぁ……はぁ……と王宮警備騎士の人は息切れをしていた。アーシェを必死に探していたんだろうな……お疲れ様。
「あなた、王宮警備騎士のアメリクよね? 用件の前に聞きたい事がある。王宮に侵入した邪竜洗脳者はもういないわよね?」
「は、はい……くまなく王宮を捜索して全員討伐完了しております。今ごろ、王宮外にいる騎士たちを集めて火葬の準備に取り掛かっております」
「そう……」と、暗い表情で頷いた。まあ、邪竜洗脳者は元々アスタリア王国の国民だもんなぁ……。同胞の国民を集団火葬するなんて、見ているのもやっている方も辛いし、胸が張り裂けそうな気分になるもん。
「わかった……それで用件は?」
すぅ……と息を吸って、いつもの凛々しく真面目な感情に切り替えた。
「はっ! 国王様が至急のお呼びです」
「そう、分かった」と、頷いてアメリクと共に国王様の方へ向かった。
「ア、アーシェ……」
いつまでメイド服を着ていればいいの……と聞こうとしたが、彼女は耳を傾けずに国王様がいる正面の特設席の方へ行ってしまった。
(うぅ……どうすればいいんだよ。いい加減にメイド服を脱いでレオに戻りたい……)
代わりの着替えとはいえ、女性もの……おまけに先ほどの邪竜洗脳者の戦闘で返り血がべっとり付着して気持ち悪い。はぁ……話が終わるまでずっとこの服を着ていなきゃならんのか? アーシェのお付き合いはオッケー貰えたのはいいが、邪竜洗脳者の侵入ハプニングが無ければ……デートの予定とか聞こうと思っていたのにィィィィッ! 邪竜洗脳者め……絶対に許さんぞぉぉぉ……!
邪竜洗脳者の乱入に対してムカついてきりきりと歯軋りを立てると、ぐるるうるる……と腹を唸らせた。大量の高原牛を食べたのに、なんでかお腹すいてきた。仕切り直しに胃袋をパンパンになるまで食おう。
そう考えた俺は早速バイキングの方へ向かい、皿を手に取った。その時、ぱさりと何か肩に掛けられたような感触が伝わった。
「レオナさん……返り血が目立つのでコートの方を着てください」
背後を振り向くと、ダゼッタだった。どうやら服に着いた血を他の人に見せないように配慮してくれたのだろう。
「あぁ……ありがとう、ダゼッタ」
「えへへ、どうしたしまして! それでは……」
バイバーイと手を振って、アーシェ達がいる特等席の方へ向かっていった。
「……まあ、とりあえず着ておこ。血だらけの姿を見たら、恐怖を与えてしまうしな」
一度皿を空いた場所に置き、ぽつぽつとコートのボタンを付ける。ちょっとむっちりと胴体を締め付けているような……これってサイズか小さいよね? ……折角コートを持ってきてくれたんだし、このままでいいか。どの道、人前に目に着くときだけ着ていればいいだけだもんな。
(さて、高原牛あるかな?)
早速肉のコーナーの方へ向かい、高原牛があるか確認する。
「おっ……ラッキー、高原牛まだあるじゃん」
バイキングのお皿の上に大量の高原牛があったので、自分の皿の上に大量の高原牛を盛りつけた。このぐらい欲張らないと、またお腹がぐるるうるる……って唸るかもしれない。
盛り付けを終えてライがいるところに戻ると、きょろきょろと何か探している素振りをしていた。何を探しているのか、ちょっと話を聞いてみるか……。
「ライくん!」と、女の子の振る舞いで、ライネスの肩をポン……と叩いた。
「うおっ!? レ、レオナさん!?」
急に肩を叩かれたのか、びっくっ……と体を震わせながら驚いていた。
「おわっ……驚かせちゃってごめんなさい」
「いいえ、大丈夫です。レオナさん、その大量の高級肉は……?」
「あ、あぁ……お腹すいちゃって……私の胃袋、消化早くて……あははは」
「ははっ……先ほどのレオみたいなことするんですね。あいつもこのぐらいの肉食べていましたから」
なんてライは苦笑する。そうだよ、このぐらい食べるんだよ。それに今話している人物は当の本人なんだがなッ! ……まあ、俺がレオだという事は口が裂けても言えない。バレたら女装趣味があるの……キモって言われそうな気がして怖い。
「そ、そうなんですか? はははっ、レオくんって私と同じ量を食べていたんですか……そうですかぁ~~」
「ははっ……」と苦笑するライネス。くっそぉ……皮肉げに苦笑いするんじゃねぇよ。そうだ、肝心のきょろきょろ何を探していたのか聞いてみよう。
「そう言えば、先ほどきょろきょろと何か探しているような素振りしていましたけど、誰か探しているのですか?」
淑女らしいポーズでライネスに質問する。
「あぁ……レオの奴、探しているんです。トイレの時間長すぎるんですよ……腹下しているのかなぁ……?」
「――ははっ……多分、迷宮入りの廊下を迷っていると思いますよ」
ライ……俺は目の前にいるよ。気づいていなようだけど、ずぅぅぅぅぅぅぅぅぅっと目の前にいるよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
ふふっと微笑みながら、気づいて欲しいと目で訴えていた。同時に気が付かないでくれという訴えも含めていた。言っている事がおかしいかもしれないけど、今の気持ちはそういう気持ちなんだからね。
「ま、まぁ……レオなら王宮の廊下を迷いそうな……迷わないような……」
俺の静かな圧に気づいて、ライネスは俺から視線を逸らした。
「ま、まぁ……もうちょい探してみるよ。それじゃ、ごきげんようレオナさん」
ライネスは手を振り、逃げるように立ち去って行った。ちょっと怖がらせちゃったかな……?
「はぁ……結局、一人になってしまった」
アーシェとダゼッタは国王様の方で話をしているし、ライは目の前にいるのに気が付かない俺を探し始めているし。
「そうだ……腹減っているんだ。折角持ってきた肉を食べよう」
ライと話しているせいで、お腹すいている事すっかり忘れていた。さっき取ってきた肉を食べよう。早速フォークで肉を取り、口にほおばった。
モグモグ……うん、美味い。感想は先ほど食べた時と同じだな。まぁ……さっき、パクパクと高原牛を食べて美味しいという感想が言えない。なんというか……舌がこの肉になれちゃって普通って捉え方になっている。
モグモグ……モグモグモグモグ……美味しい。うん、美味しい。一人で食べる高級の高原牛のステーキ美味しい。
沢山あった高級ステーキを数分で平らげた。けど、胃袋がまだ足りないと訴えている。
「あーまだ足りねぇ……もう一回取って来よう」
胃袋が物足りないので、もう一度バイキングの方へ向かった。
「肉肉……おっ、まだある。いただきだぜ」
高原牛のステーキが盛りつけられたバイキング皿を見つけて、ひょいひょいと皿に盛りつける。
「これでしばらく肉喰わなくてもいいぜ」
テーブル席の方に戻り、先ほど取った高原牛のステーキをむしゃむしゃと貪り始める。
「うまいうまい! 肉なんて飲み物だ。ごくごく飲むように食べつくすぜ!」
「何を食べつくすつもりなの? レオくん」
「肉だよ、肉。このようにがーっと口の中に――――のゎぁぁっ! あ、アーシェ様ぁぁ!?」
声が聞こえて背後を振り向くと、国王様と話していたアーシェがいつの間にか目の前に現れた。えっ……こ、国王様のお話は!? お、終わったの!? は、早くないか!?
「『国王様のお話はもう終わったの? 早くない!?』って思っているでしょ?」
「ふえっ!? どどどどどどっ!?」
どうして……と言おうとしたが、呂律が回らなかった。
「ふふっ……国民を守る者、敵の読み方を考えるのが私のモットーなのよ」
ふふっ……とモットーの言葉に俺はびくりと悪寒を感じた。な、なに……怖いんだけど。相手の事を先読みするなんて怖いんですけどおおおっ!! 確かに戦場ではこれが大切だけど、実際に自分がやられるなんてこ、こえぇ……。
「ごほん……さて、話を戻して――国王様との話は終わったわ」
「う、うん……おこがましい事だけど、国王様の話って?」
「王宮に侵入した邪竜洗脳者の事よ。とりあえず、王宮警備騎士全員総出で隈なく王宮を探しまわって洗脳者の全員討伐が確認できたって話。今の段階では王宮の中は大丈夫よ」
「そ、そうか……よかった――」
とりあえず、邪竜洗脳者を全員討伐できてよかった……と安堵の表情を浮かべた。
「そ、それよりも……何故、俺の所に?」
わざわざ驚かし、邪竜洗脳者の討伐完了の報告するだけにやってきたのでは無いはずだ。他の用事を伝えるために来たのでは……と脳内で思考する。
「メイド服――そろそろ着替えた方がいいでしょ? 洗脳者の血痕で汚れているし、貴方の友達が心配になって貴方を探しまわっているわ」
「ライ……」
すまねぇ……な、目の前にいるのに本当の事言えなくて……。だって女装趣味があるなんて知られたら、嫌われるかもしれないじゃん! 何度もしつこく自分で言っているけどッ! 嫌われたくないもん!
「そうだな……着替えるよ」と答える。
「それじゃ、近くに更衣室があるから行きましょう」
アーシェがそう言うと、更衣室の方へ向かう。そして俺はアーシェの後を追いかけた。
数分後、大広間の近くにある男性更衣室に付き、早速着替えを始めた。
『貴方の濡れた服、レイシアにお願いして乾燥させて男性更衣室の籠に入れといたわ。私は誰にも入れないように外見張っておくから――』
「本当だ、ちゃんと乾いている」
籠の中に入った服を触れると、湿り気もなくサラッとしていた。口が悪いけど、レイシアに感謝だな。
「ふぅ~~う、ん……ふふふふん~~」と鼻歌を奏でながら、血だらけのメイド服を脱ぐ。
(ふぅ……やっとメイド服から解放されるぜ。でも、今後王宮に忍び込むときはこれ必須だよな……。はぁ……王宮内では女装かぁ……まあ、恋人という事を王族にバレないようにするには仕方がないか……)
なんて思いながら、汚れたメイド服と貰ったコートを空いた籠に置く。
「さて……」
ぱっぱっ……と素早く着替える。そして籠に入れたメイド服とコートを手に取り、更衣室を出る前にコンコンとノックした。
「終わった?」と、アーシェが声をかけた。
「うん。誰も来ていない?」
誰か来たらマズイと思って、アーシェに質問する
「えぇ、大丈夫よ」と答えると、俺は男子更衣室を出た。
「汚れたメイド服はどうすればいい?」
「私の方で預かるわ。それと、貴方のメイクを落とすから一緒に洗面所に来て」
「お、おう……」
こくりと頷いて、男女の更衣室の隣にある洗面所へアーシェと共に入った。
洗面所はきれいに整備されていて、木のぬくもりを感じられる色の空間になっていた。蛇口もきれいだし、衛生的だよな。うちの宿舎なんて、たまに反吐のような水が湧き出て臭いんだよね……。
「水で洗う前に、この石鹸で洗って」
アーシェはポケットから小さな石鹸を取り出し、俺に手渡した。
「おおう……」
言われた通り、蛇口をひねって水を出して石鹸に水を加えて泡立てる。ジャバジャバと顔を洗って石鹸を落とすと、あら不思議……艶のあった肌色メイクがスッキリと落ちているではないか!
「すげぇ……メイクが綺麗に落ちている」
「せ、石鹸については秘密よ。いいわねッ!」
石鹸の事なんて聞かないけど、アーシェはビシッ……と指差して言わないように声音のトーンを強くして言う。
「……わかった」と答えると、アーシェはタオルを俺に投げつけた。
「それと、喉仏の催眠魔法――解除しておくわ」
そう言うと、アーシェはポケットから翡翠色に光る鉱石を取り出して俺の前に差し出した。
「廻り巡るマナよ……静かに沈みたまえ――――」
目を瞑ったアーシェが魔法詠唱を唱えると、翡翠色に光っていた鉱石がゆっくりと濁った鉱石になった。これはそう……解除鉱石と言う。魔法の生命であるマナを鉱石に封じ込め、魔法効果をすべて隠す事が出来る魔法師にはもってこいの便利アイテムだ。ただし、一回しか使用できないのが難点である。
「これで元の声音に戻ったわ」
「どれどれ……お、本当だ……」
先ほどまで声音が高かったのに、いつもの男らしい低いトーンに戻っていた。
「さ、早く友人の所に戻りなさい。これ以上心配させる前にね」
「お、おう……」と頷いて、ライがいるパーティー会場へ向かった――が、俺は足を止めてアーシェの方を振り向いた。
「な、なぁ……アーシェ――」
恋愛雑誌のパターンだと、二人っきりの空間で流れ的にアーシェからあの言葉を言うのかなと思っていた。けど言ってこなかった。なら俺はアーシェに一つ伝えたい。
「ん? なに?」と首をかしげる。
「そ、その……だな……」
うぅ…初めてとはいえ、こんな事言うの恥ずかしいな……。でも、やっと願いが叶ったんだ。これは俺から誘うべきだろう……。
アーシェの傍により、彼女の耳を手で覆いかぶさってぼそぼそと思いをぶつけた。
「そ、その……明日、暇ならデート――しないか?」
い、言っちまったぞっ! さ、さぁ……アーシェ、一体どう出る!?
「――ごめん、明日はこの事の事後処理で忙しいの。というより、バレたら私たちの関係は終わりなのよ」
無理という即答でかつ正論な事を言われて、俺はばたりと倒れ込んでしまった。
(はっ……はぁ……し、知っていましたよッ! どーせ、デートなんて出来ない事なんて! バレたらいけないのに……普通出来るわけないじゃん!?)
「うぇぇぇん……すヴぃません……俺が間違っていましたぁ……デートなんて出来るはずないよねぇ……ヴぇぇぇ……すいませんすいませんすいませんすいません……」
泣き喚きながら土下座して必死に謝った。どうせデートなんて無理に決まっているよ……王族や国民にバレたらどうなるか分からないし……友人ですら言えない状況下でデートに行こうと考えている俺が馬鹿でしたすいません……。
「デートするなんて無理よ。今は誰も居ないけど、誰かに知られたら終わりなのよ!」
「そ、しょうだけどぉ……! 千載一遇のチャンスをゲットしたんだよぉ……? デートなんて夢だったんだよぉぉ……アーシェとデートしたいんですよぉ……」
「泣き喚いてもダメ! とにかくデートは無理よ!」
「うぇぇぇぇ……無理なのぉぉ……デートしたいのに……むりなんだよねぇ……うぅいいんだぁ……バレないようにするにはちょうどいいもんなぁ……くすん」
そうだ……デートはしちゃいけないもんなぁ……俺とアーシェの恋仲がバレるぐらいならやらない方がいいもんなぁ……。
「デートは無理だもんね……はぁぁぁぁぁあああ……」と、負のオーラをまき散らす。
「――――むむむむむむっ……分かったわよ! とりあえず明日はダメだから、デートは明後日だからね!」
「わわっ……アーシェ様ぁぁぁぁ、アリがどうございまずうううううう!!」
ワーんと泣き喚きながら、アーシェをギュッと抱きしめた。
「ふぇぇぇぇぇっっ!? 抱きしめないで! 変態っ!」
「だ、だでぇぇぇぇ! 嬉しいだもぉぉぉん!!」
「も、もう……子供みたいに泣き喚かないで! 男でしょ」
「うぇぇぇぇ……う、うん……」
アーシェの言葉に頷き、俺は泣くのを止めてゆっくりと立ち上がった。
「それじゃあ、明後日の一〇時に王宮前通りの噴水に集合ね」
「お、おう……分かったぜ!」
小指を上げて約束の合図を出す。アーシェも釣られるように小指を上げて約束の合図を出した。
「……俺、ライの所に戻るね そ、それじゃあ、明後日……よろしくね!」
「よろしく……」と赤面になったアーシェの表情を眺めて、俺はパーティー会場の方へ戻った。
(くぅぅぅっ! やったぜぇぇぇッ! ついにアーシェとデートだァァ! けど、二人の恋仲関係をバレないようにしなきゃな! あぁぁ……早く明後日にならないかなぁぁぁぁ!)
まるでバレリーナ如く、軽快なリズムのあるスキップで喜んでいた。デート以外で例えるならそう、給料日や欲しいものを手に入れた時と同じ感覚でめっちゃ喜んでいた!
「ふぅぅん~~~~!」と、不協和音の鼻歌を奏でていた――
※
――一方、レオと別れた後、アーシェは……壁にもたれながらレッドカーペットの上に座り込んでいた。
「はぁ……はぁ……私は王女様……孤高の王女様と呼ばれているのよ……? あんな呆然とした表情でイケメンでもない奴……挙句の果てに初めてのキスまで奪われているのよ……な、なのに……む、胸がく、苦しい……わ。何なの……この、胸焼けしそうなドキドキとした気持ち……」
彼と十年ぶりに再会した時はドキドキなんて起こっていなかったのに……。決闘を挑んだ時に『好きなんだッ……!』って告白されてから……その、彼を見てみるとキュンキュンしてしまう。こ、告白ってこんなに胸を躍らせていたっけ? ああぁぁん……もおぉぉ! 恋した事無いから、解らなぁぁぁぁぁい!!
なんて、今まで体験した事のない『恋』というモノに悶絶するアーシェであった……。
※
そして、パーティーはトラブルや邪竜洗脳者の事を知る事無く無事に終了した。まあ、色々あったけど……大きな夢が叶う事が出来てよかったと俺は思う。
「あああああああああああああああああああああああああっ! もぉぉぉぉぉっ! 彼女なんてぇぇッぇクソくらうぇだぁぁぁぁ! なんでぇ……なんでぇ……美男のライネスがモテないんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
と、今回のパーティーで彼女ゲットできなかった事にヤケ酒をして、泣き叫ぶライネスであった――