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6話 タマと鬣の姉妹

 猫人教会、通称「鬣の姉妹」は重鎮を多数輩出している名門レオナルド家によって創設されたイョーグ内でも随一の教会であり街の中心部に位置しており、猫人族なら誰でもその門戸を叩くことができる。たてがみを持つのは猫人族の中でも獅子人の男性のみだが、その威光は全ての猫人に与えられること、また慣例として女性が中心の役職に就くことからそう呼ばれている。


 「いらっしゃい、姉妹たち。」

 門に入るやいなや、猫人の司祭が話しかけてきた。柔らかく落ち着いた物腰ではあるものの、黒く大きな図体をしていたのでタマは驚いて思わずブランシェの後ろに隠れてしまった。

 「クーガ司祭、こんにちは。本日は御用がありまして…。」

 単刀直入に申し上げれば、この子をしばらく預かって欲しい。そう言いかけたところで、司祭は指を立てて遮った。

 「待って、当ててみせましょう。そうですね、例えば…この子は外の世界から来た。」

 「…その通りです。神託でもありましたか。」

 「あらブランシェ、貴女が冗談に付き合うだなんて珍しいですね。」

 「いえ、冗談とも言い切れないのですが…何と説明してよいものか。」

 一瞬、司祭の目つきが鋭くなったがすぐに元の穏やかな表情に戻った。タマはこのやりとりをブランシェの片脚に尻尾を巻き付けながら肩越しに眺めていた。

 「なるほど、訳ありということですか。いいでしょう。黒毛の姉妹よ、こんにちは。お名前は?」

 ぬうっと、長い首がこちらに伸びてきてさらに委縮してしまう。大きいものが怖いのは生きる者の本能だろう。

 「タマです。しばらくご厄介になります。」

 「良い名前ですね、タマ。宜しければこれまでの生活のことを教えてもらっても?」

 タマは前の世界での生活について、そしてこの世界でどうしたいのかを語った。自分の生きていた土地のことも知らず、名も知らぬヒトに飼われていたこと。それは幸せで、それが全てであること。そしてもう一度ご主人に会いたいこと。


 「私は幻惑による記憶の改竄を疑っています。トランキアの幻術士に解呪を頼もうかと。しかしその前に、この子は生きる術も世界のことも知らないのでまずはこちらで一通りの教育を、と。」

 ブランシェはあくまでも、タマの記憶には懐疑的である様子だった。司祭は目を閉じて頷くとこう告げた。

 「ではタマ。あなたはしばらくの間ここで生活をして、これからを生きるすべを学んでもらいます。よろしいですね?」

 「はい。」

 それではこちらにおいでなさい。と司祭に手招きをされた。近くで見るとより大きい。見上げてぽかんとしていると抱きしめられた。

 「大丈夫ですよ、ここは安全ですし、皆優しいですから。」

 司祭の白いローブ越しに体温が伝わってくると、撫でられていた頃を思い出して少し懐かしい気持ちになった。タマを抱いたまま司祭は続けた。

 「ではブランシェ、タマが文字を書けるようになったら手紙を出しますからね。」

 「ええ、お願いします。折を見て伺いますので。タマ、いずれ迎えに来るから、それまで元気で。」


 タマは司祭と二人でブランシェを見送った。教会には夕日が差しこんでいた。タマの背を押すように大聖堂から鐘の音が響いていた。

その場のノリで固有名詞付けてるから全然覚えられない

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