とある家庭の日常
高校3年生の俺、菅原道樹と、中学3年生の妹、菅原真琴は兄妹共同の部屋で睨み合っていた。もっと細く状況を伝えるとすれば、俺が自分のベッドの上で脚を開いて膝を曲げて腰を落とし拳法の構えをとって立っていて(体は妹を正面に右足が前に出ている状態)、妹は右足が前側に来るように斜めに直立している。
「そろそろ決着をつけようぜ」
俺が妹に告げる。対して、
「フン。太陽系ごと消えてなくなれ!」
妹は腰を落として右腰に何かを両手で掴んでいるかのような形を作る。
そう、何を隠そう俺達はドラ〇ンボールごっこをしているのである!
正直細かなセリフとか全然覚えてないけどそれは妹も同じ。お互いうろ覚えの記憶とその場のノリでキャラクターを演じているのだ。
何となく察しはついていると思うが妹はセル役をやっている。俺は…多分悟飯だと思う。正直ノリでやってるからキャラが定まっていない。
そして今は妹がかめはめ波を撃とうとしているところだ。こっちだって。
「かぁ、めぇ、はぁ、めぇ…」
かめはめ波を言うのが1番テンションの上がるところだ。そして俺の妹だ。真琴もそれは同じなのだろう。
「くらえ!太陽系破壊かめはめ…!」
妹の声量から熱意が伝わってくる。
俺達のテンションは最高潮を迎える!!
「「波
ガチャリ
「道樹、真琴、何やってるの?」
ぐぉお!母さんが入ってきた!下の階のリビングでドラマ見てたから油断してた!何とか言いくるめねば!
「見てわからないの母さん?真琴と物理用語の答えあいっこしてたんだよ」
俺は母に今までで1番とも言える真顔でそう言う。かめはめ波のポーズで!!
「そうそう。兄ちゃんと物理用語の答えあいっこしてたんだよお母さん」
妹は全世界真顔コンテストがあったら確実に優勝すると断言出来るほどの真顔で俺に同調する。かめはめ波のポーズで!!
「そ、そう。邪魔しちゃったみたいでごめんね」
「いいよ気にしないで母さん。でも次から気をつけて。さぁ我が妹よ、続きだ!」
「ドンと来いだよ!」
「波形の進行しない波はァァァーー!?」
「定在波ァーーーーッ!!!」
ガチャン
母は俺達がきちんと(?)勉強しているのを見届けると部屋を出ていった。
「ふぅ。危なかったな」
「もう少しでバレるとこだったね」
ガチャリ
「屈折角が直角の時に起きる現象はァァァー!?」
「全反射ァーーーーッ!!!」
ガチャン
くっ、母さんめ。即座に部屋の中を確かめるとは・・・。どうやら成長しているのは俺達だけじゃないようだな。
勉強サボりには無限の可能性が眠っている。僕はあなたにそう言う。
かめはめ波のポーズで!!