契約ですかね?
「ん...ん?」
目が覚めた、布団と枕が有るとかそういうツッコミは取りあえず置いといて。
「あ!マスター!!おはようございます!」
布団に侵入している彼女はいったい何を考えてるんだ。
「うわあ!なんで中にいるのさ!」
完全に目が覚めた。
「マスター抱き枕使ってたじゃないですか~♪」
楽しそうだなおい。
「そういうことじゃなくてね、年頃の女の子が他人と同じ布団に入るんじゃありません!襲われたらどうするんです!てか、襲ってないよね...?」
エ、エ、冤罪!
「マスター、落ち着いてください。」
え、ア、ハイ
「道具は主の望む用に使われるのが本懐です、悪夢も倦怠感もないでしょう?」
「うん...?ほんとだ、人生で一番体調が良いかも。
え、君の力?凄い...」
「[概念付与]ですね、安眠に必要な要素をこれでもか!と注ぎ込むましたから!」
(ここまでしてやっと常人程度の眠りですけど、普通の眠りはこの様なものなのですけれど...マスター...)
「凄いね!本当に凄い!いまだかつてない程の目覚めだよ!」
「喜んで頂けて良かったです!」
「ただ、それはそれとして、やっぱり異性の布団に潜り込むのはいけないよ?」
危ないからね。
「むぅ~、わたしは貴方の道具の付喪神、いわば守護神!貴方以外の人の布団なんかに潜りませんよぅ!」
プンスコ怒ってる、可愛い。
いや違う違う、そうじゃなくて。
「言い分はわかったよ、君のお陰で良く眠れたのも分かったし、ただなぁ、会って間もない相手」
「私はあなたが10に満たない歳から憑いているのですよ~誰よりも付き合いが長いですぅ~!」
ああそうか、僕から見えないだけで、一緒に居てくれたのか。
「そっか...うん、ありがとう。」
ちょっと泣きそうだな。俺。
「ふっふふ~ん、添い寝を許可してくれますね!」
「あ~うん、良いよ、でも他人が見てる時はちょっとなぁ~」
いつまでも来る気配無いけど、異世界に飛ばされるはずだし、そうなったら誰かと雑魚寝なんて事も、うわぁ嫌だな~
「腕時計とか、ブレスレットの形じゃあ話はできない?それなら一緒にいて欲しい。」
ここまで素直に話せるのも彼女の何かの力?なんかな?
「大丈夫ですけど、私も人の体を楽しみたいのですよぅ。」
なるほど、自由に動けるのは楽しいか、それは奪っちゃいけないな。
「う~ん、じゃあ、添い寝は誰も見てない時、誰か居ればブレスレット辺りで妥協しない?僕も一緒に居て安心するし。」
ヤバイな変態みたいだな自分、でも、何でも言える相手が居るのは良いな。
「じゃあそれで妥協策としましょう!というか紅茶を飲んだ時点でずっと一緒ですよ?気づいてると思いますけど。」
「あ~やっぱり?この感覚ウソじゃないのか、繋がってるって感覚、初めてだからなんとなくしかわかんないけど。」
「大正解!」
(愛ってやつなんですけどね、その繋がりの感覚を知るのは。)
「ふむ、安心感?今までより気を張ってない感じ、これはコレで気をつけないと危ないな。」
「危険管理は私にお任せあれですよ!」
(そんな寂しいこと言わないでくださいよ。)
「そう?でも僕も気をつけないとね。」
何があるか分からないし、負担をかけたくもないし。
「『負担をかけたくもないし。』ですってぇ...」
あれ、声に出てた。
「うん?な、なんで怒ってるの?」
「マスター!!繰り返し言いますけど私は道具に憑く付喪神ですよ!道具が本来の姿です!使ってくださいよ!負担なんて思いませんから!」
「え、あ、ああ。」
そか、人と道具じゃ価値観が違うか、道具の価値観ってなんだ?
「分かったよ、うん、存分に使わせて貰うよ、宜しくね?」
「それでいいのです!私に遠慮しなくていいのです!じゃあそろそろ契約しましょう?」
「あ~それ、契約って?異世界ものでよくある強制力のやたら高いあれ?」
契約すると容姿とか力に変化でたりするやつ?
「う~ん、なんというか、繋がりをより強固にするというか?」
「あれ?それ紅茶飲んだ時点で出来てない?」
「だからより強固に。一心同体みたいな?私からは離れられませんよ~フフフ、みたいな?」
なんでホラーテイストで説明するのさ、笑っちゃうじゃないか。
「ふ~ん、じゃあ、契約しようか、内容は?」
「あれ、脅しくらいの感じで言ったんですけど、良いんです?」
「? 全然いいよ?これ以上信頼出来る人はいないってくらい信用してるし?」
(はうあぁ!不意討ちはズルイですよマスター!)
「また顔赤いよ?」
付喪神は顔赤くなりやすいのか?実在するかも知らなかったからわからんけど。
「なななんでもないです!え~と、ではですねぇ、名前を付けてください!」
「名前、かぁ、」
うん、殆ど決まってたんだよね、実は
「リフィーでどうかな?生命って意味なんだけど、あ、言霊みたいなものって言ってたね、概念付与の能力、大丈夫かな?」
まぁ悪い意味ではないハズだが。
「マスターが付けてくれたならどんな名前でも良いのですよ!リフィー、了承します。」
ん、んん?んんん?
「どうしました?マスター?」
「これが概念付与の効果か...」
どこか作り物の用な美しさだった目の前の美少女が、人間的に見える、緊張と気恥ずかしさで脈拍が一気に高まる。
「大丈夫です?マスター?」
「わわ!近い近い!あと服!服着てください!」
上着しか着てないのに容易く話せたのもきっとそのせいだろう、体温を感じる、息の温もりも。
僕は生き物が苦手だった。