第六話 翼を下さい……もらいました翼。
いま、わたしの願い事が叶うならば、翼が欲しい。
正にそんな気分です。
垂直落下しながら、そんなことを考える。
うん! ヤバいね!
原因は、団長の転移魔法の誤爆。
故に、ここが何処だかもわからない。
いや、わかるよ。
だって、下に劇団のキャラバンがあるもの。
魔法が使えれば、もしかしたら助かるかもしれないと思いつつ魔力を練る。
団長に聞いた所、魔力を練るのは意外と簡単らしいからいけると思う。
……魔力………魔力…………魔力?
そもそも、魔力ってなんだ?
俺、魔力を知覚できてなくない?
つまり、無理。
俺、魔法使えない。
ん?
……詰んだ?
本格的にヤバいなこれ。
死ぬ?
マジ?
えっと、何か使えるスキルは……無い!
地上を見……。
うん。この高さ、百回死ねる。
どうしましょうか。
だんだんと地面が近づいてきて……
奇妙な感覚に襲われた。
体を何かに掴まれてるような感覚だ。
落下もしていない。
けど、移動はしている。
気になって、俺を掴んでる何かの方を向く。
がんも、がんもどきの由来を知っているだろうか。
そもそも、がんもどきのがんは、竜頭を意味する。
つまり、がんもは、竜頭擬きなのである。
格好良く言うと、偽竜頭。
ところでだが、俺の向いてる方向に、擬きではなく、モノホンの竜頭があるのはどーゆーことでしょう。
うん。
ドラゴンだね。
俺、ドラゴンに連れ攫われてる。
……猫だまし、ドラゴンにも効くのかな。
ドラゴンの巣にいます。
もう一度言う。
ドラゴンの巣にいます。
今目の前に居る竜は、種族で言えばフェザードラゴン。
通称『白毛竜』と呼ばれるドラゴンだ。
古代龍の直系と言われる種族で、二対四翼の翼と体全体が羽毛に覆われているのが特徴だ。
温厚であり、敵対者には容赦無しの竜らしい。
しかし、今は俺の視点から語りたい。
結構可愛い。
「よ〜しよしよし」
『キュー』
フェザードラゴンの頭を撫でてます。
なんか、猫みたいな感じがするんだよ。
野良猫じゃなくて家猫。
しかも、懐き方は何となく犬。
『キュゥ』
全長約10mくらいか……
俺が丁度乗れるくらいの大きさだ。
「こんなペットが欲しいな」
更にフェザードラゴンの頭を撫でる。
そんな事を呟いた途端、目の前に表示が現れた。
《フェザードラゴンが仲間になりたそうにこちらを見ている。
テイムしますか? はい/はい》
……選択肢がねぇよ。