第四話 吾輩は猫である!(キリッ
少し、短めです。
『シュレディンガーの猫』というものを知っているだろうか。
これは、「重ね合わせの原理」を猫の生と死によって観測する思考実験のことである。
まず、蓋のある箱を用意して、この中に猫を一匹入れる。箱の中には猫の他に、放射性物質のラジウムを一定量と、ガイガーカウンターを1台、青酸ガスの発生装置を1台入れておく。もし、箱の中にあるラジウムがアルファ粒子を出すと、これをガイガーカウンターが感知して、その先についた青酸ガスの発生装置が作動し、青酸ガスを吸った猫は死ぬ。しかし、ラジウムからアルファ粒子が出なければ、青酸ガスの発生装置は作動せず、猫は生き残る。一定時間経過後、果たして猫は生きているか死んでいるか。
だが、俺はこう言いたい。
「箱を叩けば、猫の鳴き声とか聞こえてくるよね?」
だって、おかしいじゃん。
生き物なんだよ?
生きてれば呼吸の音が聞こえてくるだろうし、死んでいれば何も聞こえない。
だからこの実験は、俺に取って何の意味も無いのである。
っと、どうでもいいことを話してしまった。
どうせなら、こいつ等を箱詰めにしようかと考えながら、縄で巻かれたエルサス達を倉庫に放り込む。
団長の指示だからしょうがない。
「こいつ等どうするの?」
倉庫をの鍵を閉めていると横からノエルが顔を出す。
「なんか下っ端みたいだし、拷問して情報を引き出そうかと思ってる」
「へぇ。鬼畜だ」
「いや、ちょっと待とうか。俺、嗜虐趣味は無いぞ」
何故にノエルはそんな勘違いを!?
「カルさんが、ゼタ君はドSって言ってたから」
「よし、あのくそドワーフ屠る」
俺の中で決定された。
アイツコロス。
そんなある日、事件が起きた。
集会で、団長が急にこんなことを言い出した。
「ごっめ〜ん。もう劇場を借りる金もないの!」
その瞬間、団長以外の劇団員が皆絶句する。
そして、
「フッザケンジャネェゾこの糞団長—!」
「馬鹿か? 馬鹿なのか?」
「もっと前から言っとけや!」
「死ね寧ろ死ね!」
不満が爆発した。
当然だ。
それくらいのことは、早期に言っておけば幾らでも金策できる。
しかし、こうなってはもう手遅れだ。
劇場を借りる金もないなら、劇で稼ぐことは不可能。
ま、まさか、解散とか言わんよね?
「大丈夫。金策は用意してあるから、それまでは……」
そう言って、団長は手を叩いた。
「各自で稼いで! じゃね『テレポート!』」
転移魔法の詠唱と共に、団長が消える。
「「「「「ふざけんじゃねぇぇぇぇええええええええ!」」」」」
団員達の叫びが、木霊した。
会議の結果、団長を『シュレディンガーの猫』と同じ目に遭わせることが決まった。
あの団長のことだ。
苦しみはすれど、死ぬことはないだろう。