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第5章第1話 「先まわり」

2000PV達成しました。

これもみなさまのおかげです。

つたない小説を読んでいただき感謝しています。

そんなタイミングで、とうとう書き溜めていたストックがなくなってしまいました。

今まで一話約5000字でしたが、これからは2500〜3000字でやらせて頂きます。

毎日投稿も難しくなるかもしれません。

出来るだけ頑張ります。

応援よろしくお願いします。

 二日前に牛車に捕えた彩姫を乗せてどこかへ向かったという酒呑童子の右腕、茨木童子の行方を聞くため、一馬たちは再び大天狗の鞍馬のもとへ向かうことにした。


「では一馬殿、私は一足先に鞍馬様のもとへ参ります」

「よろしく頼むよ」


 頭を下げる鴉天狗カラステングの義経に一馬は声を掛けた。

 だいぶ慣れたとはいえこの時代からすると足の遅い一馬に先行して義経が鞍馬のもとへ出向いて、あらかじめ説明をすることになったのだ。


「一馬さまはあんなにお強いのに、歩くのは苦手にされてるんですね。ふふっ」


 美幸が面白そうな表情をして下から一馬の顔を見上げる。

 やばい、可愛い。

 一馬は目線を逸らしながら答えた。


「これでもだいぶ速くなった方だよ。これからきっともっと慣れると思うし」

「あはは、そうですよね」


 美幸はニコッと笑うと、衝撃的な発言をする。


「一馬さま、彩姫さまをお助けして、スサノオさまを見つけて朱雀さまの封印を解いたら――」

「解いたら、何?」

「わたしのお婿さんになってくれませんか?」

「へっ?! い、今なんて?」


 なんか幻聴が聞こえた?

 突然の言葉に一馬は焦ってしどろもどろだ。


「だからわたしと結婚して、お婿さんになってくれませんか、って言ったんです」

「な、何を言ってるのか分かんないよ」

御剣一馬みつるぎかずま、いい名前だと思いません?」

「いや、いい名前も何も、俺は元の世界に」

「でもわたしがお嫁さんにして頂くのもいいかも。渡辺美幸わたなべみゆき、この名前も可愛いですよねっ!」

「いやいやいやいや、そ、そんなの」

「あ、今答えていただかなくても大丈夫です。ゆっくり考えて頂ければ。でもわたし、本気ですからねっ」


 美幸はそう言って微笑んだかと思うと、急に阿修羅の方へ行ってしまった。

 置いて行かれた一馬は呆然。

 小悪魔だ……。

 一馬のドキドキは当分止まりそうにない。


 そうして歩いてやっと鞍馬の住処へたどり着いた。


「一馬殿、お待ちしておりました」

 義経が一馬を出迎えた。


「鞍馬様がお待ちです。こちらへ」

 義経にうながされて前回と同じ小屋の中に入ると、鞍馬が待っていた。


「一馬、義経より話は聞いた。茨木童子という鬼の行方だが――」

「はい、彩姫さまを連れているはずです。どこへ向かったか分かりますか?」

鴉天狗カラステングどもに聞き込みをさせると、いくつか情報があった」

「え! で、どこに」

「西之国へ向かっておるようじゃ。どの情報もそれに合致する」

「やっぱり難波泰隆に売り払うつもりですぜ」


 猿彦の言葉に、管狐と豆狸が騒ぎ出す。

「ああ、彩姫様、なんとおいたわしゅう。このワタクシ管狐がすぐにお救いに参りますゆえ」

「それは一大事や。西之国に入ってまう前に何とかせんとわややで」


「それで、今どこにいるか分かりますか?」

 一馬は鞍馬に聞いたが鞍馬は首を振った。

「それは分からんのだ。そこまでの時間がなくてな」

「そうですか……」


 考え込む一馬に馬頭が話しかける。

「どうするんだ、場所が分からないと追いかけられねえぞ」

「そうだよなあ」

「追いかけるのではなく、待ち伏せしてはどうでしょうか」

 更に悩む一馬に義経が提案した。


「まちぶせ? どうやって?」

「その鬼どもは彩姫どのを運ぶのに牛車を使っております」

「うん、そうだね」

「この南之国と西之国の境は険しい山々です。その山のふもとまでは幾通りもの道がありますが、山を牛車で越えることが出来る道は一つしかありませぬ」

「そうなの?」

「はい。天野原あまのはらという村を通る道なのですが、鬼どもがそこを通ることは間違いないと思います」


 義経の考えを聞いていた猿彦が同意する。

「ちがいねえ。旦那、あっしは天野原に行ったことがありやすが、あの道なら牛車で山越えすることが出来ます」

「そうよの、義経の考えはあながち間違ってはおらんと思うが、どうじゃ一馬」

 鞍馬もそれがいいと思ったようだ。


「なるほど、話を聞く限りそれが良さそうですね。運が良ければそこへ向かう途中で追いつけるかもしれないし」

「そこで待っておれば茨木の奴めがそこへ来るという算段じゃな。渡辺一馬、茨木はわらわに討たせてくれ」

 父のかたきがそこに来るとあって阿修羅はすでに目をギラギラさせている。

 それにしても鬼姫はやっぱり俺をフルネームで呼ぶんだな。


 一馬たちは鴉天狗の義経の案に乗り、さっそく出発することになった。

 引き続き義経も一馬と美幸たちに同行してくれるようだ。


「2日遅れとはいえ、牛車は遅いですから先に着かれることはないと思います。ただ一馬殿もいらっしゃいますから急ぎましょう」

 義経の言葉に皆が頷く。

 どうやら文字通り足を引っ張ってしまってるようだな。

 馬に乗れるといいんだけど、そのためには鞍やあぶみを手に入れなきゃ。

 一馬は前回馬に乗った時のようになるのはもうこりごりだった。


 そうして急ぐうちに、徐々に山道に差し掛かってきた。

 だんだん登りの勾配がきつくなり、道が蛇行し始める。

 たしかにこの道を牛車で進むのは大変だろう。

 目的の天野原の村が近づいてきた時、先行していた猿彦が走って戻ってきた。


「旦那、この先に牛車を連れた集団がいます」

 猿彦の言葉に緊張が走る。

「そこに茨木童子はおったか?」

 阿修羅はもう殺気立っている。

「い、いや、遠目で見ただけだからわかんねえよそんなの」

 阿修羅に睨まれて猿彦が怯えている。

 鬼姫、顔はいいんだけどそのせいでよけい怖いよな。


「とにかく見えるところまで追いついて、様子を見よう」

 一馬の言葉と共に一行は移動の速度を速め、牛車の一団に追い付いていく。

 しばらく行くとかなり離れてはいるが集団が見えてきた。


「どう? 阿修羅さん見える?」

 一馬の言葉に阿修羅は首を振る。

「われら鬼の目は人よりもかなり良いはずじゃが、はきとはわからん」

「そっか、もう少し近づかなきゃだめだね。バレないようにこっそり行こう」


 一馬たちが静かに、徐々に距離を縮めていた時にそれは起こった。

 目標の牛車の集団が何者かに襲われたのだ。


 牛車を中心にした集団の人数は約10名。

 そのうちの5人ほどが武装しているようだった。

 それを襲ったのは、道端の薮に隠れていた10人ほどの集団。

 全員が武装しているようだ。

 まずは物陰から弓を射かけ、それで牛車側の3人が倒れたのが見えた。

 そのまま抜刀して牛車の一団に襲い掛かる。

 瞬く間にまた一人が倒れた。


「ありゃどうみても鬼じゃありませんね、旦那」

 猿彦の言葉に一馬はうなづいた。

 鬼があんなに簡単にやられる訳がない。

 普通の商隊が盗賊に襲われたのだろう。

「だからと言って放っておく訳にはいかないな。行こう」

「そうですね、牛頭ちゃん、馬頭ちゃん、行きましょ」

 一馬達は走り出した。


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