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焼鳥屋の店事情   作者: 一齣其日
第2シーズン
16/24

戦友

週末は酒を飲みこの一週間の憂さを晴らしたい、というのが人情なのだろうか。俺の働く焼き鳥屋に一番多く客が来るのは、やはり金曜日。

この日は下手にサボることもできず、おやっさんの元でせっせと焼き鳥を焼くのに励む。熱気が店によくよく渦巻いていた。

「ん、ネギまの塩」

「ネギまの塩一本!」

なんてやり取りで焼いていくが、なかなか手が回らない。さすがにおやっさんと俺と二人じゃキツイというもの。

まあ、その為に助っ人はしっかり呼んであったりするのだが。

「おやっさん、正真、遅くなってごめんねー!」

と、駆け込んできた一人の女。

彼女こそが金曜日の助っ人である。最近は大学生活で忙しいようだが、金曜日だけは必ずきてくれる、頼もしい女だ。

「ほらほら、手を止めないよ正真!」

「わあってるよ思惟!」

仕事には住み込みでここに働いてる俺よりも地味に厳しかったり。だが、その分彼女の、思惟の働きは頼り甲斐があった。

思惟がいれば百人力なんてのは言い過ぎかも知れねえが、実際仕事の流れがスムーズになったのも確かだ。

だがスムーズになったとしてもまだまだ客はやって来ては飲み、食い、騒ぐ。

時には暴れ出す客もいるが、

「こらそこなにやってんだぁ!」

なんて思惟が鬼の形相になるもんだから、軽く収まる。

俺も元不良なりに凄むことができるが、どうも思惟の前では気迫負けしてしまうらしい。

なんというか、女って怖いな。


そんなこんなで漸く客足が途絶えた深夜になって、俺たちは一息つけるくらいになった。

おやっさんは一人外で酒を飲み、俺と思惟は中でのこった焼き鳥をちょくちょくつまむ。

「相変わらず、元気そうにやってんじゃん」

「そりゃ元気にやってるさ。それに、ここはもう俺の家なんだしな、これくらいは」

「昔は喧嘩ばっかで迷惑かけていたくせに、よく言うよ」

「るっせえな。俺だって少しは変わるもんなんだよ」

「そっか……まあ、いい方向に変わってくれたみたいね」

にいと向けられた笑顔は、何処かほっとしたように思えた。なんていうか、それを見ていると背中がムズッとして、ついつい目を背ける。

焼き鳥はとうに冷え、美味さはほんの少し落ちている。それでも、ふと見ると思惟は俺が焼いたやつを綺麗さっぱり食っちまっていた。


ほんといいやつだよな、お前。


そんな風にして、忙しくもひとときの安らぎを与えてくれる金曜日は終わりを告げる。

「今日もお疲れ様」

「おう、おつかれ」

なんて拳を合わし、最後に一杯酒を飲み干す。

戦友と飲む酒は、一人で飲むよかずっと美味かった。


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