聖バレンタイン
行けるかなと思ったけど短編賞で落ちた作品
飛び道具(笑)
「どうして……?」
由佳の声は震えていた。目は一点、俺のほうへ向けられたままだ。
出会った時と一つも変わらない大きくて澄んだ瞳……その瞳は悲しみというより戸惑いに満ちている。
「わたし……何かまずかった……?」
「いや……」
こんな顔をされたら何も言えない。純粋に、純粋に、俺の言葉をなかったことにしたい表情だけが、時間が止まったように動かない。
放課後の空き地は冬なのに空が赤々と燃えている。その鮮烈な夕焼けの下で、二人は今まで一度もしたこともない会話をしていた。
俺より頭一つ小さな由佳は紺色のブレザーに緑色のネクタイ、パンツ見えそうで全然見えない短い丈のスカート。特に派手なメイクやアクセサリはせず、体型も悪くない。顔などはむしろかわいい方で、仲間内では「お前がよくゲットしたよな」と言われるほど整っている。
セミロングの髪の毛はさらさらで、首筋からはいつも石鹸の匂いのする由佳。ちょっと嫉妬深いところもあるけど、料理も上手で献身的な由佳を今……俺は振ろうとしていた。
「なんで? わたしがタッチパネル触っても何も反応しないから……?」
彼女は必死で自分の落ち度を探している。混乱しているのか訳の分からないところをついてくるが、実際彼女の手はタッチパネルがまったく反応しない。おかげでスマホ操作がまったくできず、ラインなどが一切できないのには驚く。今の時代タッチパネルに反応しないというのは実生活に相当不便で、電車のキップが買えないだとか、コンビニにアルバイトに入ってみたがレジが打てずに二日でクビになったとか、数え始めれば枚挙に暇がない。
そのことは由佳もかなり気にしている。だから優先順位一番で頭に思い浮かんだのかもしれないが、もちろんそんなことじゃない。
「理由を教えてよ。マジわかんないよわたし……」
吐息が白い。三学期であり寒いのは当然だ。来年は今頃受験なのだろう。勉強なんていう、大して得意でもない分野で缶詰にされることを思うと今から気持ちが重い。だけど、今の成績を考えても、あまり遊んでもいられないことも事実ではあった。
しかしなにも東大を目指すわけでもない俺だ。当然『ベンキョウガイソガシイ』などという理由でもない。
「由佳ちゃ……」
「わたしのカレーでいつもおなか壊すから?」
声は同時に上がった。二人とも、いつもの『間』が分からない。
「え? えっと……」
確かにカレーで腹を壊す。なぜか分からないが彼女のカレーを食べると百パーセント腹を壊す。ちなみにうまい。先日作ってくれたナスのカレーなどは辛味があるのに後を引かない絶妙の味付けであり、駅前の行列インドカレー屋と比較しても由佳のカレーに軍配が上がるといえるくらいにうまい。いわく、彼女の家は親が二人とも働きに行ったままずっと帰らない日も多いから、空いた時間は料理を楽しむ時間だったそうだが。
……グレずにそっち方向に向かった彼女はある意味すごいしえらい。
しかし、なににしても彼女の努力の結晶は俺の腹に致命的なダメージを与えてくる。
「そういうことなの……?」
「いや……そんなことじゃないよ」
「じゃあなんで!?」
由佳の口調からはどうしても納得できないという様が伝わってくる。生半可なことを言えば首を絞められかねないその雰囲気に俺はごくりとつばを飲み込みながら言った。
「由佳ちゃん。初めて海岸を一緒に歩いた時のこと、覚えてる?」
「当たり前じゃん」
あれは付き合い始めて間もなくのことだった。
殺人的な暑さで自己主張をしていた太陽がすっかり優しくなってきたその日は、実力テストの最終日だった。おかげで平日なのに午後が自由になった放課後、由佳が「海に行きたい」と言い出したことがきっかけで、制服のまま、急遽電車を乗り継いだんだ。
「……楽しかった……よね……?」
「うん」
人の少ない海岸を歩けば海風が潮の匂いを運んできて、隣を見れば由佳のまつげがあって、それが無性にうれしくて、胸の辺りがむずむずしたのを覚えてる。
「あの時、初めて手をつないだよね?」
「うん」
俺、由佳と付き合い始めたんだな……という実感が改めて湧いて、おそるおそる右手の甲で彼女の白い指に触れてみた。由佳はちょっとだけビックリした顔をしたけど、その後微笑んでそれに応えてくれたんだ。
あの瞬間を忘れない。今でもその感触が俺の手のひらに残っている。
……なんで、あんなにネバついていたんだろう……。
まるで蜂蜜か納豆の中に手を突っ込んだような……糸を引くような粘りが、由佳の手のひらにあった。
あった……というか、ある。最近は少し減ってきた気もするが、ムードのいい時、彼女の手は異様に粘ついている気がしてならない。
……でもこれ、聞いていいことなのか……?
「えっと……」
というか、どう聞けばいいんだろう。
「えっと……、由佳ちゃんって手にクリームとか塗ってるの?」
「え?」
「初めて手をつないだ時、すごいウェッティだった……よな? 覚えてる……?」
「そりゃあだって……緊張してたもん」
いや待て。汗とかそういうレベルではなかったぞ。
手を離したら糸を引くんじゃないかと思うような……いや実際少し糸を引いて、でも不思議なことにすぐに乾いて、何の物質だったのかよくわからないナニカが……。
「祐希君と手をつないだの、すごくうれしかったんだよ……?」
「うんうん。俺もうれしかったよ」
いや、だけど、そういうことじゃないんだ。なんだろうあの……なんというか、ネットリ感……。
「それと、もう一つ聞きたいんだけど……」
「うん……」
あれはインターネットカフェでのことだ。"あれは"と言ってもつい最近。三学期が始まってすぐ、ダブルの個室で二人きりで映画を見てた時のこと。
俺は不覚にもその映画の途中でうつらうつらとしてしまった。なにせその前の日、仲間の一人に借りたマンガ(全三十七巻)が面白すぎて、ほとんど徹夜の状態だったのが大きいと思う。映画自体は決して眠ってしまうような退屈な内容ではなかったから。
「祐希君はどこまで見てたの?」
「んとな。キャシーが無実の罪を着せられてパトカー四台とすっげーカーチェイスしてたところまでは間違いないけど……」
その後、キャシーがどうなったのかは知らない。気がつけば荘厳な音楽にのせてスタッフロールが流れていた。それはいい。
由佳はその時、一つも怒らずに「終わったよ」と笑っていた。それもいい。むしろ性格の良さに惚れ直す。
でも………。
「由佳ちゃん。あの時の繭玉はなに?」
ここ大事だ。テストにでる。
俺はうつらうつらして……いや、まぁぶっちゃけ寝ていた時、とても暖かいぬくもりに包まれていた。だからなおさら気持ちよく寝てしまったのだろうが、それは由佳が体を摺り寄せてきたわけではなかった。
「え、だって、祐希君少し震えてたんだよ。寒かったよねあのネットカフェ」
「いや、あ、うんうん。確かにあったかかったよ」
ソファに座ってた二人は、首から下を白い粘液の固まりに包まれていたのだ。
「でも、あれはなに? って……」
俺は思わず悲鳴を上げそうになった。すぐに由佳の「カフェだよ。騒いだら迷惑だよ」と口にひとさし指を当てられてその時は黙ったけど、冷静に考えてみてもどうひっくり返してみても"あれ"がなんだか分からない。
「しかもあの繭玉を、由佳ちゃん吸収したよね……?」
「だって、あんなのあそこに捨ててくわけにいかないじゃん」
「まぁ、それはそうだ」
いやしかし、そういう問題じゃない。
二人の体を包むほどの大量の何かは、由佳がかき集めて顔や手などの肌に詰め込んでいた。良く言えば浸透するクリームのようだが、その量がなくなっていく時間を考えると『詰め込んだ』と言う表現がしっくりくる。
「祐希君。さっきからヘンな質問ばっかりしてるけど、それと今日の話……関係あるの……?」
思い出話?をして打ち解けたのか、由佳に先ほどのような悲壮感はない。ただ、「別れよう」と言った俺の言葉が消えるわけではなく、それこそ夢から覚めたかのように不安そうな表情を浮かべてもう一度こちらを見ていた。
もちろんその目には『なぜ、こんなにうまくいってる二人が別れなきゃならないの?』という色がありありと浮かんでいて、俺もそういう目で見られるとどうも説明がしにくい。
いや、だけど……。おかしいのは俺じゃないよな……?ちょっと冷静に考えてみて、俺の持っている違和感は普通の感性でいいよな……?
「なぁ由佳ちゃん。もう一回聞くけど、あの繭玉はなに?」
「わたしの粘液と菌糸を混ぜたものだけど」
さも当然のように言い放つ由佳。俺はどんな顔をしたらいいのかが分からない。
「普通、人間って、そういうことは、できないよな……?」
細切れに、おそるおそる聞いてみる。
すると彼女は少しうつむいて、視線に入った先の雑草を靴でもてあそび始めた。
「……それが理由……?」
俺の心臓が高鳴っていく。崖の淵に立ったようなものだ。一歩前に進めば奈落の底であり元に戻ってくることはできない。
迷う。迷う。ただ、ここで言わなければこの得体の知れない娘にそのまま引き込まれていきそうだ。
俺は決心してうなづいた。
「ちょっと……怖くなっちゃって……」
「そう……」
訪れる静寂が怖い。もてあそんでた靴の動きが止まってなお怖い。まるで由佳から無の空間が広がっていくようだ。
あの繭玉で絞め殺されるんじゃないか。それとももっと他に思いもかけない何かをしてくるかもしれない。
俺が少し腰が引けたまま彼女から目を離せないでいると、そのうち、うつむいた彼女から鼻をすする音が聞こえてきた。
「由佳……?」
泣いている。俺のよく知ってる由佳にしてみればその反応は当然なのに、意外に思えてしまった俺の手が反射的に彼女の肩に触れようとした。が、彼女はそれを振り払うようにして少しだけ後ずさり、
「……できるとかできないとかって、そんなに大きいことかなあ?」
嗚咽に混じって彼女は大きな声を上げた。
「確かにわたし粘液出ちゃうよ!? ドキドキすると手もべとべとになるよ!! 脱皮だってするし、暑すぎるとちょっと溶けちゃったりするよ!!!」
「ええええええーーーーー!!!!」
信じられない言葉に大声を上げた俺だが、ちゃんと考える暇もなく次の言葉が飛んでくる。
「でもそんなこと大したことじゃないじゃん!! 普通の人はできないっていうけどさ。じゃあ祐希君、スプーン曲げできる!?」
「い、いや……」
「スケート靴履いて四回転ジャンプできる!?」
「……いや……」
「普通の人にできなくたってできることがある人はいるんだよ!! 逆にわたしがもしものすっっっっっっごい音痴で歌がヘッタクソだったら祐希君はそれだけで嫌いになるの!?」
「…………」
「できるとかできないとか関係ないじゃん!! それなのにそんなことで……最低だよ!!」
そこまでを言って由佳は空き地から走り去った。自分のバッグさえ忘れて、一度も振り返ることもせずに小さくなっていく背中を、ただ呆然と見送る俺がいる。
繰り返すけど、俺はしばらく身動きも取れないでいる。
だってみんなはどう思う?
わかるよ。確かに由佳の言うとおり、どういうカラクリなのかと思うほど驚くことをやってのける人間はいっぱいいる。さっき言ったスプーン曲げや四回転ジャンプに限らず、例えばここにあるバッグを売るって話になった時に、商才がある人とない人では売る数も値段も違ってくるだろう。目に見えるものに限らず、"できるできない"は確かに存在するものだ。
だ・け・ど、この場合はどうなんだ。それで済ませていい問題なのか?悩んでる俺のほうがおかしいのか……?
だって繭玉だよ?脱皮だよ?ひょっとしたらさなぎとかになってしばらく冬眠しちゃうかもしれないんだよ?
「ん?」
残された由佳のバッグの手提げの部分にはかわいらしい小袋がくくりつけてある。いつもこんなのはつけてないので自然と目が行くと、端っこに『祐希君へ』と書いてありハートマークで〆てあった。
「そっか……」
今日はバレンタインだ。わざわざこんな日に別れ話を持ちかけたことに、いまさらながらに気付いた俺はそのデリカシーのなさに辟易する。
妙な特性を除けば由佳のことは好きなのだ。こんな話は彼女がウキウキしている日じゃなくてもよかった。
開いてみればカカオの香る、ふわふわしたトリュフチョコが顔を出す。これ、自作なんだろうか。
チョコを練ってる由佳の姿が目に浮かんだ。
彼女が俺のためにがんばってくれてる姿を想像すれば、本当に抱きしめてあげたいほどに愛らしく、自分が今しがた行ったことは取り返しのつかない罪のように感じてしまう。
…………
……だけど……
「……」
由佳、暑いと溶けるとか言ってなかったか……?
……俺はふと、彼女のカレーを食べると腹を壊す原因が分かった気がした。
やっぱりおかしい!暑いからって溶ける女がいるか!?デートで一緒にサウナとか入ったらどうなるんだ!?髪の毛を残してドロドロに溶けた由佳を眺める俺はどうしたらいいんだ!!……死体第一発見者として警察は俺の言うことを信じてくれるのか!?
っていうかあの子は風呂に入れるのか!?というか、だから俺、腹を壊すんじゃないか!?
……様々な憶測が俺の頭の中を飛び交ってパンクしそうだ。
しかしなによりまず考えなきゃいけないのが、このチョコを受け取るかということじゃないだろうか。
バレンタイン。俺のことを号泣するほどに好いてくれる女の子。しかし相手は人間離れした超生命体の可能性がある。俺、ちょっと怖い。
その女の子が俺のために時間をかけて用意してくれた正真本命のチョコ!
さぁ!君ならどうする!?
俺は……
俺は…………
…………。
「……家に正露丸残ってたかな……」
つぶやいて、彼女の手提げからその小袋を取り外した。
その後、家に帰った俺は夜になってもう一度家を出た。
電車で一駅。さらに歩いて十分強の由佳の家の呼び鈴を押す。三度押しても出てこなかった時にはまさか自殺でもしたんじゃないかと不安にもなったが、四度目、おずおずと姿を現した制服のままの由佳は、玄関を半分だけ開けて半分だけの姿で俺を出迎えた。泣いていたのだろうか。目がやけに厚ぼったい。
「これ……」
ばつが悪い。ぼそぼそとしかしゃべれない俺がバッグを差し出すと、彼女も俺と目を合わせないように、バッグの手提げに右手を引っ掛ける。
「寒いでしょ? 上がってく?」
「いや、いいよ」
途切れる会話。なんだろう。あんなに自然に話していた日が嘘のようにうまくしゃべれない。
「……じゃあ、ありがと」
そう言うしかない由佳の目が、急にせわしなく動き出した。
「あれ? チョコは?」
「ああ……もらったよ」
「……ずるいよ」
「え?」
由佳は唇を硬くしてすねたように言った。
「あれはわたしのことを好きな人が受け取ってくれるためのチョコなのに……」
「……」
一瞬、謝ろうと思った。しかし謝ったらそれこそ彼女の気持ちにとどめを刺すだろう。
俺は少しの沈黙のあと、「おいしかったよ」とだけ言う。
「おなか壊さなかった……?」
「正直言えばちょっと……」
本当に正直に言えば三時間トイレに篭った。間違いない。あのチョコは彼女の手作りだ。
彼女のトリュフチョコはハンドメイドの独特の暖かみのあるちょっといびつな丸型にココアパウダーがまぶしてあって、それぞれにL,O,V,Eの文字が刻まれていた。
食べてみるとほんのり洋酒の香りとともに、ふわりと口で溶けるカカオバターがその味をしばらく口の中にとどめていつまでもおいしい。一粒三百円とかする高級チョコを食べてみたこともあるが、これほどの感激はなかった。
「ほんとにおいしかった……」
その余韻が、その台詞を繰り返させた。由佳が俺を見上げる。
「もう、おなか壊す心配もないね」
「なぁ由佳」
俺は急速に遠ざかっていくように思えた彼女の心に手を伸ばすように、反射的に名を呼んだ。
「なに……?」
「ゴメン、由佳"ちゃん"」
「いいよどうでも」
「聞きたいんだけど……」
「うん」
「由佳……ちゃんは、本当は何者なんだ……?」
「え?」
「俺も、由佳ちゃんがなんだってわかってれば、そんなにビックリしなくてすむと思うんだ。だから……」
もし想像を絶することを言われた場合、受け止められるかも分からずに、俺の口はつらつらとそんな言葉を並べていた。
「なんだって言われても……」
由佳は視線をそらして、
「普通の人間だよ」
「俺、腹壊した時によく考えたんだけど……」
つまり三時間、うなりながら考えていたわけだが。
「やっぱり、普通の人間は脱皮しないと思うんだ」
繭玉も出せないと思う。糸引くほど粘つかないと思う……
「そんなことないよ。人間垢がたまるでしょ? それがわたしの場合、一気にむけるだけだよ」
そんな人間はいないと思う。
もっとも、由佳はそんな次元で話していなかった。
「脱皮とか……関係ないじゃん。祐希君にメイワクかけること……?」
半分だった扉をバンと開け放ち、由佳は俺の正面に立って、悔しそうな声を上げた。
「わたし、ネットカフェで祐希君が寒そうだったから……風邪ひくといけないと思って粘液と菌糸混ぜて包んだんだよ? 祐希君だったからしたんだよ? 祐希君を信用したから、自分の本当のところを打ち明けたんだよ?」
その目からまた涙がこぼれだし、彼女の頬をぬらしていく。
「ごはんだって……祐希君おなか壊しちゃうかもしれないけどさ。溶けていくのを必死にこらえて煮込み料理とか作るんだよ?」
「う……うん」
言っていることは奇天烈極まっているが、それ以上に由佳の一生懸命さが伝わってきて、かわいさの方が勝ってしまう。繰り返すけど俺だって由佳のことは好きなのだ。
「ラインもできないわたしだけど……いつもいつも祐希君がいてくれるから楽しいし、毎日すごいうれしいのに……」
「うんうん」
「わたし……祐希君が大好きなのに……」
「由佳ちゃん……」
そのあまりのいじらしさに俺は思わず彼女の手をとった。
そしてそのままついなりゆきで……彼女を手繰り寄せ、彼女の柔らかい部分に触れる。
……唇をその小さな唇に……。
……俺たちの、初キスだった。
温かい彼女の口内に味はないけれど、ふわりと広がる幸せが僕を包み、……そしてきっと由佳を包んだんだと思う。
ゆっくりと唇が離れた時、彼女はその胸いっぱいに僕を追いかけた。
「祐希君……!!!」
ひしっと抱きついて、また一つになる俺たち。しかし次の瞬間!!
ブッシャァァァァァァァァ!!!!!
擬音にするならそう。実際音はなかったが、とにかくそういう勢いで由佳の全身から大量の水が噴出したのだ。
ずぶぬれになる二人。でも感激している由佳は俺を離そうとしない。
俺は……
俺は…………。
……これでいいのか……?