リッキー少年の修行
再び話始めるリッキー。
「師匠の修行は、思ってた物と大分違っていた。」
リッキーを一通り見た上で服装の乱れを直す師匠。
「これから坊主には、オーダーを取ってもらう。」
「いきなりですか、師匠。」
「何が問題だ?ここの客は正直殺伐としている。心身のまずは心を鍛える。じゃあ早くホールに立て!」
「はい!師匠!!」
走っていくリッキー。
「坊主!床すべるから気をつけろ。」
言った傍から足を滑らし頭を打つリッキー。
「いっ痛ぅ~。」
「こら!坊主、足を掬われたら頭を屈め両手で床を叩きショックを吸収しろ。それが受身だ!ホールは、戦場だ気をつけろ!」
「はい師匠!」
頭をさすりながら大声で叫ぶ。
「お客様4人テーブルについたぞ、坊主、お冷を零さず急いで持っていけ。」
なみなみと注がれたコップを4個渡され急かされる。焦って水を零すリッキー。
「馬鹿物、すり足で持って行け、足運びを体で覚えろ!」
やっとテーブルまで着くリッキー、もう息が切れている。
「ご、ご注文は、お決まりでしょうか?」
客A「何する?ここのお勧めは、宇宙ソバ麵固め・・・」
客B「何を!ここは麵柔らかめだろ、この知ったかが!」
客C「まあまあ、あんちゃんも困ってるだろ。落ち着けよ」
客AB「いい子ぶってんじゃね~よ!この野郎!」
客D「お前らソバごときに熱くなりすぎ、それぞれ好きに頼めばいいだろ。頭冷やせ!」
コップを手にする。
「坊主!!」
師匠が叫ぶ。
客のテーブルの間に体をすべり込ませコップの水を体で受け止める。
「お客様衣服は大丈夫ですか!」
客AB「お、おう。」
客C「ありがとうよ、あんちゃん。若いのに俺らに怯まずすごいな。俺らは、戦友でな、命がけで死線を潜り抜け、何事も命がけで行うもちろん遊びも食うことも喧嘩も。そんな中に割り込む勇気に完敗した。ここは敬意を示し大人しく注文しよう。な!」
言葉は優しいが目の奥には、何か得たいの知れないどす黒い念のような物を感じた。
客AB「お、そうだな・・・」
それぞれの意見を纏める客D「宇宙ソバ麵固め、宇宙ソバ普通、宇宙ソバ柔らかめ、冷やし宇宙ソバ麵普通で」
オーダー入ります「宇宙ソバ麵固め、宇宙ソバ普通、宇宙ソバ柔らかめ、冷やし宇宙ソバ麵硬めで!」
「違うだろ!宇宙ソバ麵固め、宇宙ソバ普通、宇宙ソバ柔らかめ、冷やし宇宙ソバ麵普通!頭で考える前に感じろ!!」
「そんな無茶な・・・」
ソバが出来上がると今度は、すり足で零さず運ぶリッキー。
「筋がいい、やれば出来るじゃないか!」
「おい客だ!」
足運びに気をつけながら一人の客の所へいくリッキー。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
無愛想で無口な客が一言。
「宇宙ソバ4つ。」
師匠の方を見るリッキー。黙って壁の張り紙に拳を突く師匠(当店は、宇宙ソバに限りがございます。申し訳ございませんがお一人様2つまでとさせて頂きます)
「申し訳ございませんが・・・」
「4っつ!」
客のかけたメガネの奥からは、今にでも手を出しそうなギラギラした凶暴性を秘めた輝きをしている。
一瞬背筋に寒気を感じるリッキー。師匠をもう一度見ると無言で壁に張られた壁を叩く。
震える声で「二つで十分ですよ~わかってくださいよ。」
「いや4つだ。」
「無理なんです。他のお客様にも2つまでしか提供してません。ので特別扱いは出来ません」
いきなりリッキーの胸倉をつかむ客。
「殴りたければ表へ出て下さい他のお客様に迷惑がかかります。」
「ふん。」手を離すと腰砕けになるリッキー。
「二つでいい。」
笑顔になるリッキー立ち上がり深々とお辞儀をしオーダーを通す。
こんな日々を過ごしたある午後。
「今日は、珍しく客が少ないな坊主。」
すると帽子を深々と被り表情が見えない客が入ってきた。
「いらっしゃ」突き飛ばされるリッキー。
同時に師匠に向かいビーム銃を向ける男。
「金をだせ!」
師匠は、ふ~っとため息をつくと男に向かって言葉を放つ。
「で?」
「き、聞こえなかったのか!か金を出せっつってるだろ!」
「で?」
「馬鹿にしてるのか!これが見えないのか!!」
銃で天井を撃ち再び師匠に向ける。体を陽炎のようにユラユラ動きながら男を見据える。
「それで?」
「馬鹿にするな!」
男は、銃を発射する!
師匠はユラユラした構えから目にも止まらぬ速さそして流れるような自然な動きで湯きりを使いビームを受け止め寸胴鍋へそれを入れた。ジュッと音を立てた。
呆気にとられる男に向かいリッキーは、気を取り直し両足タックルかまし倒すと同時に腕を取った。身動きの取れない男から師匠は銃を取ると町の治安維持隊に連絡し犯人を受け渡した。
「師匠今の教えて下さい!」
「ああ分かった明日からキッチンだ。」
そしてキッチンへ回されたリッキー。
「まずは、湯きり1000回早さよりも自然な動きを身につけるんだ。手首のスナップ両膝でショックを吸収する。」
練習する日々。
「段々様になってきたな、次は、色々な事態を想定しどんな動きも取れるように、体をリラックスさせる、そして瞬時に緊張させるを繰り返す。ユラユラ動くそして円の動きを取り入れる坊主筋がいいな。」
再び練習する日々。
「今日は最後の特訓だ。坊主いやリッキー、お前を我が弟子として認めるため最後の試練だ。これをお前に授けよう。」円筒状のグリップを渡される。「ソウルバトンだ」言われるように構えてみるが変化は見られない。
「ワシは、これから旅に出る。ワシが帰ってくるまでに、それを扱えるようになっとけ。もういじめられないはずだ。」
「ありがとう師匠必ずこのソウルバトン扱えるようになってみせる」
俺はそれから毎日毎日鍛錬を重ねた10年目にやっとグリップからソウルバトンが出た。そして今は、どんな状況でも出せるようになった。
そしてもう一度師匠に認められたい。きっと、この宇宙のどこかで今も旅をしている事を信じて。
「ざっとこんな話だ。シャーリー、構えてみるか?」
ソウルバトンを渡すとシャーリーは、構えた・・・構えた・・・構えた・・・
変化なし。突然咳き込むシャーリー無意識に息を止めてたらしい。ソウルバトンを返す。
ニコリと微笑むとそれをしまった。
「じゃあ月までもう少し時間がある。作業用のツナギ渡すから着替えて部屋の掃除しなさい。月に着いたらお小遣い渡すから部屋に必要なもの買ったらいい。」
「分かった綺麗にする。」