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龍神の詩5 - 七色の羽根  作者: 白楠 月玻
一章 羽根無き鳥
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一章六節 - 薄明と嫉妬

 次の瞬間、大斗(だいと)は駆けだした。前方を歩く与羽(よう)たちに向かって走る。その口元には徐々に笑みが浮かんだ。

 足音に気付いて振り返った与羽に、大斗は勢いを殺さずに駆け寄って、その腰を片腕で抱え上げた。


「ちょ……、九鬼(くき)先輩!」


 辰海(たつみ)が驚いたように声をあげ、体勢を崩した与羽が反射的に大斗の頭にしがみつく。


「城に向かった薬師(くすし)夫婦が気になるんだろう? それならもっと急がなきゃ」


「……時間をかけてるのは、先輩たちだと思いますけど!」


 与羽は足をばたつかせて大斗におろすよう示しながら、とげのある不機嫌な声で言った。


「そうだな。急ごう」


 大斗は与羽を抱えたまま歩きだした。


「おろしてください」


 硬い声で与羽が言うが、従ってくれるわけがない。

 辰海も困ったように与羽を見上げるだけで何も言わなかった。


「おろしてくれないと髪の毛抜きますよ」


「勝手にしなよ。どうせ親父みたいに禿げるんだ。早いか遅いかの違いでしかない」


華奈(かな)さんに言いつけますから!」


「それで華奈が俺に何か言ってきてくれるなら、大歓迎だね」


 文句を言いつつも、与羽は無理やり大斗の腕を抜けだそうとはしていないようだ。

 与羽の苦情を大斗がのらりくらりとかわす。お互いに駆け引きを楽しんでいるにすぎない。


 その場に立ち尽くしたまま、雷乱は不快げに眉間のしわを深めた。


「気にいらねぇ」


 ――オレだけ何も知らねぇみてぇじゃねぇか。


 自分を置いてどんどん先へと進んで行く三人を見て、雷乱はつぶやいた。

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