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終章二節 - 陽光と希望

辰海(たつみ)にーちゃん、与羽(よう)ねーちゃんにこのあめちゃん渡してよ」


 一人が辰海に言った。


「分かった」


 辰海は薄い色紙に包まれた大粒の飴を受け取って、与羽に近づく。

 しかし与羽は泣き顔を見られないようにするためか、素早く逃げ出した。戸口は町民であふれているので、天守閣を上階に行く。


「にーちゃん追いかけて!」


「『与羽ねーたん。あめたんあげる』って追いかけて」


 子どもたちが口々に言う。


「任せて」


 辰海はそう笑んで与羽を追いかけた。

 それを嬉々として少年たちがさらに追いかける。十代ほどの彼らは、上段の間は城主と城主の認める一部の人しか上がることができないと理解していたおかげで、親に抑えられずに済んだのだ。


 一方、与羽は天守閣を最上階まで一気に駆け上がった。

 そこはいまだに四方の窓が開け放たれ、辺りの状態を一望することができる。

 辰海が追い付いた時、与羽は城下町方向の窓に向かっていた。


「与羽ねーたん、泣かないでよぉ~。飴たんあげるから」


 子どもたちに頼まれた通り、甘えた声で言いながら与羽の背に呼びかけつつ、歩み寄る。与羽に反応はない。


「与羽ねーたん」


 しかし、もう一回言って与羽の顔を覗き込もうとした瞬間、ゴッと鈍い音がして、与羽の肘が辰海の顔面にめり込んだ。


「ぐぉふっ!」


 不意の攻撃をもろにくらった辰海はくぐもった声を上げ、顔をおさえた。

 その瞬間、辰海を追いかけてきた少年少女から笑い声が上がる。


「いい? ふざけた男に背後から近づかれたら、ああやって撃退するんよ」


 その中の少女たちに冗談めかした調子で言う与羽。


「与羽姉ちゃんかっこいい!」


「辰海兄ちゃんマヌケ~」


「『ぐぉふっ』って! 『ぐぉふっ』って!!」


 与羽も子どもたちと一緒に笑いながら、未だに顔を押さえてうずくまっている辰海の手から飴を奪った。


「まっ、これはありがたくもらっとく」


 そう言って、大粒の飴を機嫌よく口に放り込む。


 辰海の手が与羽をとらえようとして、力なく空を掻いた。

 それを一瞥(いちべつ)して、与羽は開け放たれた窓から外を眺めた。


 窓から差し込む強い日差しが、与羽の髪を夏を思わせる青と黄緑にきらめかせる。



 与羽の顔はまだ涙で光っているが、もう泣いてはいない。



 与羽は城下を見下ろした。


 そこから見える町並みは今までとは少し違ったが、いつもの与羽の中州城下町(ふるさと)だった。

長々とお付き合いありがとうございました。


ケータイ小説で連載していた時には、某年三月の震災のために作品を非公開にしたり、意図的に更新を遅らせたりした多少いわくつきの作品です。

あの時期に人が水で流される描写はいかがなものかと思いまして。

もし、本作品で不快な思いをされた方がいらっしゃいましたら申し訳ございません。

現実とは全く関係のない、娯楽のための空想作品だと思っていただければ幸いです。


当初予定していたプロットを書き直すことも考えましたが、私の能力不足もあり、内容の変更はいたしませんでした。その点につきましては、さらに精進させていただきます。



さて、次は少し番外編色の強い話を書かせていただこうと思っております。


時間軸としては、『七色の羽根』のすぐあとなので、あまり明るい話は書けないかもしれませんが、お付き合いいただければ幸いです。


と、しめの言葉をかきつつ、この後ちょっと長めのおまけ短編があります!

戦終了直後の大斗と華奈のお話です。



2011/8/25

2014/8/20

最終更新日2016/9/25

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