5.想いの始まり
キトさん視点の話です。
「終わりました…」
と言うアリヤの言葉に、俺は気づいて振り返った。するとそこには、俺のタオルケットを体に巻いたアリヤ。それを見て、何かを勘付いた俺。
「…と、待て。おまえ、全裸か?」
年頃の女の子には失礼かもしれないが、気づいたときには口からこぼれていた。そう訊いた俺は、世界レベルの馬鹿だと思う。殴られる覚悟をして、アリヤの言葉を待った。
とはいえ今日は、アリヤの背中の火傷の痕を治療するつもりだった。3週間くらい前にしたのにもう忘れてやんのか、と心の中で舌打ちをした。
「…っ、とりあえずおまえ、服着ろ」
アリヤから目を背けて言った。あ、わかりやすい奴だ。そっちが脱げって言ったのに、っていう顔してる。
「…キトさんが言ったんじゃないですかあ……」
ほら、図星。というか全裸だということも肯定している。その証拠に、アリヤの顔がりんごみたいに真っ赤に染まっている。
「…、(可愛いな)」
不覚にも可愛いな、と思ってしまった。触りたいとさえ、思った。
「…どうしたんですか?」
アリヤはタオルケットで体を覆いながら、俺に訊ねる。俺は嘘をついた。
「…どうもしてねーよ」
少しだけ赤くなった顔を隠しながら、言った。熱くなっていくのが、わかった。
「今日のキトさん、なんか可愛い」
そんな俺にアリヤがそう言って笑ったから、俺もつられて笑った。
医者と助手は自分の気持ちに気づかない。
気づくのは、いつになることやら。
5話目でした!
初めてのキトさん視点でしたが、みなさんどうでしたでしょうか?
少しでも、キュンキュンしていただけたら嬉しいです笑
次も頑張ります!