1.医者と助手
医者と助手の話です。
私は所詮、ただの助手だから、あの人と特別な関係になることは出来ないと、そんなこと最初からわかっていた。
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私が12歳のときあの人に出会った。医大に行くまでの過程を全て飛び級で卒業した私にとって、医大なんてものの壁は厚い筈がなかった。そんな私の研修先に選ばれたのが、“キト・ファーネスト”という18歳の若き医者の所だった。彼も私と同じで、医大に行くまでの過程を全て飛び級したという。
そのキトさんという人が、『あの人』なのだ。キトさんの第一印象は“なんか怖そうな人”で、目つきの悪いせいか、とても医者とは思えなかった。
『おまえが、“アリヤ・エルガー”か。なんか、ちっさいな』
初対面でキトさんと交わした言葉は、それだった。当時12歳の身長142cmの私は、『12歳なんだから、仕方ないじゃないか!』なんてことを、思っていた。
『…よろしくお願いします…』
内心腹が立ちながらも、キトさんに挨拶したのだった。私よりも遥に背の高いキトさんの顔は、背伸びをしてもよく見えなかった。
前もって私は、キトさんのことについて調べた。1つ目は、とても頭がいい、ということ。医大をたったの2年で卒業して、それから1年後の16歳の時に医者になったのだという。18歳の今、彼は医者3年目だという。しかも、とても腕が良く、来年の夏からはこの町1番の大富豪、“マロニアル家”の専属医にも誘われているらしいのだ。2つ目は、女関係がとてつもなく酷いらしい、ということだ。研修に来る前も、色々な人から気をつけなさいよ、と言われた。まあ、こんなところだろうか。
思ったより情報が少なかった。1週間後までには調べ直しておくことにする。
私はキトさんのもとで3年間、助手として研修するのだ。邪魔だと思われないように、精一杯頑張ることにする。
『所詮、ただの助手なので』を最後まで読んでくださりありがとうございます。
2話目も頑張ります。