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5話「覚醒!?」

それから。とくに敵が現れることもなく日々は過ぎ、今は七日目、最終日の早朝。

ふたりとも寝ている間に奇襲でもされたら即敗退なので、夜はかわりばんこで見張りをしていた。現在は僕の番というわけだ。

少し周りを見回ってみて、安全を確認する。今日も……おそらく大丈夫だ。

僕は拠点に戻ることにした。もしかしたら三条はもう起きているかもしれないしな。

…………だが、しかし。


僕「あ…れ…?」


そこには、誰もいなかった。

眠っているはずの三条の姿は、影も形もなかった。代わりに、一枚の紙切れが落ちていた。


『湖で待つ』


……僕が失敗した。僕のせいで、三条が危険にさらされてしまった。どうして僕は彼女が目に入る範囲で見回りをしなかった。

いろいろな思考が頭を巡ったが、僕はそれを振り払って動き出し……湖に着くと、そこには倒れた三条と、ガタイのいい男子生徒がいた。


生徒「お前がこいつのパートナーか?」

僕「そ…そうだ…なぜわざわざ僕をここに呼んだ?」

生徒「ああん?そんなの決まってるだろ、この女の拠点を見てたらどう見ても一人用じゃなかったんでな、一人、もしくは数人、協力者がいるってわかったんだ」

僕「それで…僕をおびき寄せるために」

生徒「そのとおりだ…だが、お前のそのひょろい肉体を見る限り、別に人質を用意するまでもなかったかな…」

僕「で?この試験はもう今日で終わりなんだ、僕達が闘う理由はかけらもない」

生徒「理由ならあるさ、俺はお前達が許せないからだ」

僕「…?僕達、お前になんかしたか?」


全く思い当たる節がない。首をかしげる僕相手に、そいつは拳を強く握りしめて、


生徒「いいや、お前らは何もしていない。そう!何もしてねえんだよ!!俺は…この6日間、食料を求め続けた。そして沢山の奴らと戦い、そして勝ってきた!」

僕「……」

生徒「俺があそこまで大変な思いをして、この手を汚してまで手に入れていた食料を簡単に手に入れていたお前達が許せなかったんだよ!」

僕「………そうか」


確かに、僕が死ぬ思いをしたのは、初日のナイフの男の時だけだ。

でも、この男はその思いをこの6日間、ずっとし続けていたのだとしたら、僕達が許せないという気持ちが生まれるのも、しょうがないだろう。

………なら。


僕「僕達を、ここで叩き潰すってことだな?」

生徒「ああ、覚悟はできたな?」


僕は、その場で深呼吸をした。

この六日間、僕が何もしていなかったわけがない。考えた。僕が動こうとすると、なぜ体がうごかなくなってしまうのか。

今までの僕の身体が動くなった時に共通することの一つは、僕が全力で行動しようとしたときであるということ。

実力把握テストのときは測定に全力を出そうとしたら動かなくなり、六日前の戦いでも、攻撃をするために全速力を出そうとした瞬間に動かなくなった。

そしてもう一つ。身体が動かなくなったときに感じる、身体と思考が合致しない感覚。

これらのことから、おそらく僕はもともとかなりの実力者だったが、今の僕は記憶を失ったことによってその肉体をうまく操ることができないのだ…と考察した。これならば、様々な辻褄が合う。

三日前、何故か男がどこかに消えていたのも、気を失った後、命の危機に僕の肉体が反応して無意識に動いたのかもしれない。非現実的ではあるが、記憶を失う前の僕が何者であるかわからない以上、0%とはいえないだろう。

その仮説を確かめるため、先日僕はあえてリラックスして軽く体を動かしてみた。

すると僕の身体は違和感を生むことなく、そこそこのパワーを生み出すことができた。

あの力を発揮することができれば、目の前の奴ら程度、一瞬で叩きのめせるはずだ。

体全体から一度力を抜け。三条をさらったことへの怒りも、今はすべて鎮めるんだ。


僕「……いくぞ」

生徒「ハハッ!おいおい、あまり調子に乗らないほうがいいぜ!雑魚が!!!」


正面から殴りかかってくる男の攻撃を見切って、一歩後ろに下がることで避ける。

そのまま後ろに回り込んで、そいつの背中に拳を叩き込んだ。

男は何回かバウンドし、10mほど飛んだところで起き上がり、こちらを睨みつけた。


生徒「お前…何者だ…俺はFクラスのやつの顔は一通り確認したが、お前のようなやつは見てないぞ…つまりお前はGクラスってことになる…なのに」

僕「なのに、なぜ僕がお前の攻撃を見切れたかって?簡単だ。四日前の実力把握テストのときよりも僕が強くなっている。それだけだ」

生徒「んな、馬鹿なっ!そんなのハッタリだ!そうだ、さっきのはまぐれだ、そうに決まってる………今度は油断しねえぞ!」

僕「ああ、かかってこい」


男は再び正面から突進してくる。先程よりもスピードが上がっていたため、僕はその拳を避けきることができず、手のひらで受け止めた。

一見パワー互角に思えたが、僕は全力の攻撃を叩き込んだそいつの一瞬の隙を見逃さなかった。


僕「胴ががら空きだぞっ!」


空いていた右足でそいつの脇腹を思い切り蹴りとばし、男はその場に気絶した。

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