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18話「全開放」

絶望する僕の頭の中で、小さく、何かが響いていた。

次第にそれは大きくなって、やがて声となる


――諦めて、いいのか?


これは…僕の声か?


――お前はお前自身について、まだ何も知らないじゃないか。眼の前の怪物の存在も、お前の過去も。まだ謎に包まれている。


……そうだ、僕はまだ何も知らない。自分が何者なのか知らないまま死ぬなんて、嫌だ。

まだ、僕は自分の名前すら知らないんだ。彼女に名乗れていないんだ。


――じゃあ、ここでお前は死んでいいのか?


僕「駄目だ…嫌だ……僕は死なない!僕は僕を知るために、ここで死ぬわけにはいかないんだ!!!」


――流石は俺、いい返事だ。だったら、やることは一つだろ?


ああ、わかっている。この体に宿る力を、無理やり呼び起こすんだ。強制的にイメージの壁をぶち破るのだ。精神的、肉体的な負荷は想像を絶するだろう。

だが、諦めてはいけないのだ、絶対に……絶対に。

深いイメージの先に、鎖のようなものが見えた。その鎖を、解錠する。

僕の中にいつまでもいる、くだらない強さの常識を……ぶち壊せ!!!















不思議な、感覚だった。

違和感があるようで、どこか懐かしい、不思議な感覚。

だが今は………この感覚が、心地良い。

今の僕には力が溢れている。今なら………なんだってできそうだ。


怪物「グオオオオオオオオ!!!!」


棍棒が振り下ろされる。随分と長い間振りかぶっていたんだな。

…いや違う、僕が走馬灯のようなものを見ていたゆえのこの時間の長さというわけか。

このような無駄な思考ができてしまうほど、今の僕は力に溢れていた。

棍棒を片手で受け止める。


僕「残念だったな……今の僕が立っている場所は、お前の力の遙か先だ」

怪物「アアアアアアアアアアア!!!!!」


更に力が強まるが、今の僕には誤差でしかない。僕はもう一本の手で手刀を作り、思い切り棍棒に叩きつけた。

太い棍棒は折れ、破片が四散する。

僕は驚く怪物の背後に回り込み、後頭部に向かって蹴りを放つ。

怪物はよろけたが、まだ倒れない。こいつを倒すにはやはり、もっと圧倒的な力が必要だ。

もっと、もっと…絶対的な、力。

頼む。僕の体よ。あの怪物を倒すだけの絶対的なパワーを、僕によこせ!!!!

心のなかで叫んだ、その刹那。僕の肉体に溢れんばかりのパワーが生まれた。

全開放された肉体よりも、遥かに強い力。


僕「………この力があれば」


地を蹴るその威力は、まさに音速を超えるスピードを持たせるには十分すぎるほどの威力で………

僕が地面を蹴ったと認識する頃には、僕はその怪物を頭を蹴りによって粉砕していた。

恐ろしいほどの力だ。以前の僕は………こんな力を………

困惑していると、周囲の歪んだ空間は閉じていき…気づけば数分前の魚を食っていた場所にまで戻っていた。


僕「……戻って、来れたのか」


だが、安心したのもつかの間。外していた時計を確認すると、その日付はあの怪物に襲われた日の2日後だった。

もしかしたら、あの空間での時間の流れは現実のものとは違ったのかもしれない…!

立ち上がる。

まだ動くだろうか、この体は。

音速すら優に上回る先程のスピードが出せれば、まだ…間に合うかもしれない。いや……きっと間に合う!間に合うと信じるんだ!

あの、絶対的なスピードを。引き出せ。

そう考えると、僕の足に力がみなぎってくる。

…行ける。そう思った僕は地面を思い切り蹴るのだった………

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