17話「絶望」
対応できたとはいえ一瞬死んだかとも思えるような一撃。最初のサバイバルの時以来のこの、死が近づいてくる感覚。
これに慣れることは、一生ないだろう。……余計なことは考えるな、どうする。敵の攻撃力は確実に今の僕以上。おそらく最低でもAクラス相当だ。
ただスピードは僕よりも遅いし、知能だってないだろう。最悪振り切れれば………
怪物「ア?クククッ……」
僕の様子を見ると静かに笑って、手のひらを上空にかざした。
構えて様子を見ると、怪物の手のひらから何かが放出された。
………いや違う!?怪物の手のひらの上の空間が、歪んでいる!?
怪物はその空間の歪とでも言うべきものを僕に投げつけてきて、僕はナイフで防御しようとナイフを構えた。
しかし、空間の歪は僕の眼の前で静止し、周囲のものを吸い込み始めた。僕も抵抗しようとする前に吸い込まれてしまって………
目を覚ますと、気持ち悪い景色に包まれていた。
空も、床も、すべてが歪んだ空間。そこに僕と怪物は立っていた。
おそらく僕が逃げることを考えていたから怪物はこのバトルフィールドを作り出したということだろう。
僕「ったく、超能力みたいなことしやがって……さっきからわけわかんないことばっかだよ…」
思わず笑いが溢れてしまう。
腹はくくった。ここでこいつに時間を取られるわけにはいかない。ここで、こいつをすぐに倒しきる……!!
まずはあいつの弱点を探ろう。怪物の周囲を走りまわると、イライラした様子の怪物は僕に向かって棍棒を振り下ろしてきた。
僕「おっと!あぶねえな!でも…そんなゴツい棍棒振り回してちゃ自由に動けないだろ!」
まずは、顔面。そいつの顔に飛びついて鼻を思い切りぶん殴ってみたが、怯むことなくすぐにひっぱたかれた。
僕「…これは結構…芯に響くな…」
この戦法は、いわば諸刃の剣。
僕が弱点を見つけ出し怪物を倒すのが先か、僕の体力が切れて奴に殺されるのが先か。
怯えて、躊躇しているうちは絶対に勝てはしない。僕は再びそいつに近づき、出せるだけの力で足をナイフで切りつけようとする…が。
僕「は?」
ナイフが………折れた。
動揺している隙を敵は見逃さず、僕は棍棒の薙ぎ払いをモロに食らってしまった。
体中が痛む。
僕「でも……諦めるわけには――――」
そうだ、挑まなければ勝ちは得られない。
この空間に入れられてしまった以上、あるのは勝つか負けるか。
つまるところ、生きるか死ぬかであるのだから、諦めちゃ………
怪物「ぐうおあっ!!!!」
怪物は僕が弱っているところを見て、いたぶることに決めたようだ。
やつは大きい左手で僕の体を鷲掴みにし、右手で僕を殴る。
一発。意識が朦朧とした。
二発。気を失うにも、痛みが強すぎて逆にそれができない。
三発、四発、五発………やつの拳は止まらない。もはや………力が入らない。
だめだ………勝てるわけがない。僕は、絶望に飲み込まれていた。記憶を失ってから、初めての絶望。その味を初めて知った僕は怯み、マイナスの思考に陥る。
おかしいだろ……こんな、わけがわからない化物にわけもわからないまま殺されるなんて。
眼の前の怪物を睨みつける。……なぜだろうか。たった5メートルしかないあいつの体が、さっきとは比べ物にならないほど大きく感じる。
睨み返され、僕の体は動かなくなってしまった。
怪物はいたぶるのも飽きたといった様子で僕の体を離し、僕は地面に力なく落ちた。
棍棒が振り上げられ………怪物は力を込め始める。
トドメだ。一撃で、僕を地面に叩きつけ、潰すつもりだ。まるで虫みたいに。
『生き残りましょうね、絶対』
彼女の言葉が、頭の中を反芻する。
ごめん…愛華。君との約束を、僕は守れない。僕はまだ弱いから………君との、約束を……




