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第四幕:言葉の重さと口の軽さ

やあ、君。ボクらが今いるところはヴェニスのビーチの砂浜にいる。そこに、タジオは座り込み海を眺めていた。…第三幕では、タジオとグスタフがヴェニスという非日常の世界の中で会い、非日常を味わってしまうところまでを見た。第四幕はその後の話さ。

やあ、君。ボクらが今いるところはヴェニスのビーチの砂浜にいる。

そこに、タジオは座り込み海を眺めていた。ボクは口を抑えている。

なぜかって?

このバカに語りたがる口を、

黙らせるためさ。


第三幕では、タジオとグスタフがヴェニスという非日常の世界の中で会い、

非日常を味わってしまうところまでを見た。


第四幕はその後の話さ。


穏やかな海。

目の前に広がる白い砂浜は、

オレンジの色を上からかぶされていた。


甘い希望も何もかもが、

やがては夜のベールに沈む。

タジオは、

自分がバカでマヌケで、

まるで三匹のこぶたが狼をママ代わりにしたようなヤツとわかった。


タジオは無言で、

両腕で自身を抱きしめた。

グスタフは彫刻家ではなかったと、

彼は”いまでは”知っている。


波の音がザザーンと笑うように聞こえる。


二人が信頼しあった瞬間に、

グスタフの口からもれた魂の讃美歌が二人の関係をめちゃくちゃにしたんだ。


それは、こういう内容だった。


ああ、この若き子の魂を

俺のような男が味わえるのだ

俺の人生は諦めの日々

だが、今こそ書けそうだ

俺の芸術を、まるで彫刻のように。


この詩が、めちゃくちゃにしたんだ。

まったく、口は災い。語り部たるボクも気をつけなきゃいけない。

ねえ、そうだろ、君。


タジオは考えていた。

彼から逃れる方法を。

でも、最悪なことしか浮かばない。

あの男は、

故郷に戻ってもついてくる。



タジオは父に相談するか?

最初、彼はそう思ったさ。

だけど、父からは、

失望しかもらえない。

これは自分が招いたことなんだってね。

軽々しく全てを捧げるとか、

言わない方がいい。

もしも君がーーそんな陶酔したら

ーーまあいいさ。


タジオの頭は最悪なケースを何度も考えるんだ。


グスタフは都合の良い頭をしてるから、恋人の心変わりには気づかない。


どう始末をつけなきゃいけないのか。

美が自分にもたらしたモノは。

少年の頭に、いろんな事がぶつかる。


「疫病」


タジオの口から、この言葉が自然ともれた。

彼はふと、考えこむ。

「この街の隠された秘密だ。疫病の闇が、きっと解決してくれる」

唄うように、彼は立ち上がる。


「どうにかして、

ーーあのバケモノを退治してやる。」

少年は唾を飲む。

「疫病をつかうんだ」


(こうして、第四幕は疫病の影により幕を閉じる)

タジオは考えていた。彼から逃れる方法を。でも、最悪なことしか浮かばない。あの男は、故郷に戻ってもついてくる。

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