第二幕:天使が求めしは彫刻家
やあ、君。美しさは武器になるのか?その事を考えてみようか。ボクはキレイなモノを見るのが好きで、触りたい。…第一幕は、新たなるファウストの魂を受け継ぐ者として『タジオ』が選ばれた。…第二幕では、彼が次に何をするか、君と共に見たい。
やあ、君。美しさは武器になるのか?
その事を考えてみようか。ボクはキレイなモノを見るのが好きで、触りたい。そこにあれば、本当にーーまあいいさ。
第一幕は、新たなるファウストの魂を受け継ぐ者として『タジオ』が選ばれた。彼は貴族だが誇れる国を持たなかった。彼が誇ったのは、自分の美しさのみだった。しかし、彼は美は永遠ではなく、いずれ神に取り上げられるものと気づいた。
第二幕では、彼が次に何をするか、君と共に見たい。
ボクらは今、ワルシャワ近郊の貴族学校で、特にロシア帝国の影響下の建物の美術室にいた。時間は、学校の授業が終わった頃だ。
そこは二階の小さな部屋、壁にルネサンスの複製画がかけられていた。
13歳くらいの子どもたちが、
粘土細工を持ち寄って、あるモデルの形を再現しようとしてた。
彼らがモデルに命じられたのは、
そのモデルの少年の裸体だ。
部屋の中央に机を寄せ集め、
その上には、ミケランジェロのダビデのポーズで、タジオが立っていたのだ。
はっきりいうと、無謀だった。
リンゴくらいなら、彼らでも再現できたかもしれない。
彼はリンゴでは、なかった。
リンゴだったら良かったのに。
子どもたちは、まるでリンゴのような創作物をタジオに見せるしかなかった。
学業の後に、毎回繰り返される美の制作時間。これが、学校に許されるわけがなかった。
五回くらい続けたら、学校側はタジオを学校から休むように言われた。
タジオの裸体は、学友たちの精神的なダメージを与えた。
彼は『学徒の女王』という名をもらう事になった。
彼の屋敷の部屋で机に向かって、
何かを書き散らしているタジオに、姉が聞いた。
「タジオ。人前で、裸になるなんて、
はしたないわよ。何がしたかったの?」と。
彼がなぜ、こんな事をしたかったかと言うと、答えは明白だった。
彼の美を彫刻、なんらかの形として永遠に残したかったからだ。
結果は、散々だった。
彼の周りにはミケランジェロがいない。
時は残酷だ。彼をムリヤリ大人へと成長させる。
タジオは彫刻家を愛した。
彼の机の上のノートには、
ミケランジェロへの愛が囁くように書き込まれている。
『どうか、ボクを見つけてーー』
『墓から蘇って、ダビデ像の隣りにーー』
『時間がない。天使の時間がーー』
彼の誇りが、失われるのが耐えられない。
抑えられない衝動。
彼は狂う代わりに、姉のドレスを着て、近くの森の中で一人踊り続けた。
ああ、空から、
地から彫刻家が現れたならーー
彼は何もかも売っただろう。
永遠の美よ!
彫刻家よ!
滅びる前に!
(こうして、第二幕は少年のダンスで幕を閉じるのだ)
抑えられない衝動。彼は狂う代わりに、姉のドレスを着て、近くの森の中で一人踊り続けた。ああ、空から、地から彫刻家が現れたならーー彼は何もかも売っただろう。永遠の美よ! 彫刻家よ!滅びる前に!




