・第七話 ≪天ノ川 誠という転生者とは≫
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第七話
「天ノ川 誠という転生者とは」
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天ノ川 誠は転生者である。記憶と特典ともいうべき異能…いや、システムを与えられた人間である。
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●玄岳城・司令官執務室●
「今日で転生して20年、か」
誠は誕生日だというのに何も感じないまま、書類を机の上に置く。
「…ステータス」
ボソリと誠が呟くと、半透明な画面が誠の目の前に現れる。
≦名前:【天ノ川 誠】≧
≦基本数値:
・肉体Lv23
・知能Lv42
・器用Lv20
・気力Lv12≧
≦保有ジョブ:
・【国際商人Lv51】
・【攻勢型歩兵将校Lv35】
・【攻勢型騎兵将校Lv15】≧
≦特典:
・【ステータス機能】
・【リザルト機能】
・【異空間倉庫】≧
≦保有経験値:2300≧
「だいぶ軍人よりのステータスになったもんだ」
ーーー誠は特典のおかげで、リザルトで得た特典を己と部下に振り分けることができる。経験値を消費することで、ジョブやそのジョブに関連するスキルを得ることができるのだ。
なお、李国語が堪能なのはジョブ国際商人のスキルを得たためである。
「部下の教育には楽なんだが、人数が多いからな」
大隊兵士や馬賊に対して、誠はこの特典の力を行使していた。しかし、馬賊だけでも相当数を指揮下に置く誠にとって、その作業量は膨大だった。
「どうしても似通ったステータスができてしまったが、この際仕方あるまい」
なお、前に指揮していた中隊も恩恵を得ており、解散後は各地の部隊に割り振られ、各地で才覚を現しつつあった。
「20年でようやくここまでか。長い道のりだな」
窓から外を見た誠は、ふっとどうでも良いことを考える。
「俺って、後世でどう解説されるんだ?」
誠の前世は、解説動画の視聴を趣味としていた。その前世からの密かな憧れが解説動画を出されるような人間になるのとであった。
「どんな感じだ?」
誠は少し考え込む。
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●とある解説動画●
「ごゆるり解説の時間だぜ‼︎今回は月皇国軍人の天ノ川 誠の解説だぜ‼︎」
「聞いたことのない軍人ね。どんな軍人なのかしら?」
説明役と聞き役のキャラクターが話し合っている。
「天ノ川 誠は月皇国の軍人貴族天ノ川伯爵家前当主…が一般人との間に作った子供だったぜ。まあ、当初は知らなかったみたいだぜ」
「いきなりハードね」
誠が生まれた時。父親は母親を僅かな手切金で捨てており、環境としては母子家庭であった。
「貧しい暮らしの中。誠はとある才能を開花させたぜ。それは通訳だったぜ」
「え?通訳?」
「貿易の活発な港近くにいたのが不幸中の幸いで、誠は多言語を理解していたぜ」
ジョブ国際商人のスキルでいくつもの言語をスキルとして獲得したため、誠は若いながらも多言語を理解していた。それを利用して通訳として金を稼いでいた。
「当時は鎖国が解除されたばかりで、通訳が不足していたため、誠の元には多数の外国人商人と弟子入りの志願者が来たぜ」
「軍人じゃなくて、通訳として食っていけたんじゃないの?」
「そこで悲劇が起きたぜ。外国人同士の乱闘に巻き込まれて、母親が射殺されたんだぜ」
「え⁉︎」
つまりは孤児の仲間入りであった。
「しかし、偶然その訃報を聞いた父親が誠を引き取って、軍人として最低限自立できるようにしたぜ。なお、家族としては一切接しなかったぜ」
「oh…ハイスペックだけど、なかなかな人生送ってるわ」
「そして誠は軍学校を卒業後。南李共和国軍に派遣されることとなるぜ。ある意味、あのまま引き取られない方が世界的商人を生み出してたかもしれないぜ」
「運命の悪戯ね」
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●玄岳城・司令官執務室●
コンコンとノックの音が響き渡る。誠の妄想は消えて、頭が仕事状態に移行する。
『どうぞ』
『失礼します』
大隊の兵士が入室する。
『報告いたします。南李共和国政府より伝令があり、1週間後に視察をしたいと。こちらがその手紙で、伝令は奥の部屋で待たせてあります』
『視察?』
誠は手紙を受け取ると、手早く中身を読み始める。
『…成程、やりすぎたかな?これは』
『やりすぎた、とは?』
『前の部下たちがそれなりに活躍しているようで、部隊運営を視察して今後の部隊教育に活かしたいそうです。といっても、教えたことなど算数と簡単な読み書きくらいなのですがね』
手紙を閉じると、誠は返事の手紙をサラサラと書き始める。
『視察をお受けになられるので?』
『大した解説はできませんがね。これを伝令に渡してください』
『はっ、失礼します』
大隊兵士が立ち去る。
「しかし1週間か。相変わらず国境と首都が近い。遷都するべきだろうに」
そう、南李共和国首都は元王都であり、そこは南北国境に大変近かった。それこそ馬車ですぐに着くほどには。
「機関銃だけは片付けておくかな?」
『た、大変です大隊長殿‼︎』
『…ノックぐらいしてください』
慌てて入ってきた大隊兵士にため息を吐いた誠が応対する。
『な、難民です‼︎北側から難民が‼︎』
『まあ、情勢がかなり荒れているようですからね?たびたびあったことでしょう?なぜそんなに慌ててるのですか?』
『民間人だけで500を超えており、武装した兵士100名も亡命を希望しています‼︎どうやら難民に家族がいるようで‼︎』
『成程、それは慌てますね』
誠は少し考えてから行動を起こす。
『武装解除させてから城に入場させてください。それと大隊の半数は外からの攻撃に注意‼︎残りの半数は救助に当たってください‼︎それと私の私費で近くの都市でも闇市でもいいので、大量に食料を買い集めてください』
『はっ‼︎』
大隊兵士が命令を伝えに走り去る。
「…ある意味、視察がもっと早いと助かるんだが」
不幸中の幸いにも政府の伝令がまだ城内に残っていたため、この難民亡命事件はすぐに政府の知るところとなった。
『すぐに受け入れ体制を整えろ‼︎逃げてきた同胞を救うのだ‼︎』
『馬賊部隊もいる城に、馬賊によって発生した難民が逃げ込むとは…』
『言っている場合か⁉︎食料品と生活物品を用意する‼︎それと城の指揮官には格別の配慮を期待すると伝えろ‼︎つか、指揮官誰だ⁉︎』
『月皇国から出向してきている少佐だ。大変李国語が堪能な佐官だ』
『南側馬賊のまとめ役でもある』
『あ(納得)』
南李共和国政府は難民保護に前のめりとなり、その行動がのちに北側にも伝わり、多くの難民が南側の同胞を頼って亡命してくることとなる。
ついでに、この事件のせいで王太子の引き渡しが延長されることになったのは、また別の話である。
『包帯くれ‼︎』
『赤ちゃんが栄養失調だ‼︎どこかにミルクはないか⁉︎』
『こいつはもう死んでる。悪いが埋葬させてもらう』
難民を受け入れた玄岳城では戦場の如き修羅場が生まれていた。難民達は馬賊襲撃から命からがらに逃げてきた者達であり、多くの助けを必要としていたのだ。
『このままでは我々の食糧まで無くなりそうですが』
『北側にいるならまだしも、今は南の同胞に頼ってきたのです。それならば同胞であると同時に同志です。助けるだけ救うのです』
『ッ‼︎はい‼︎全力を尽くします‼︎』
大隊の兵士達は精力的に難民達の手助けをした。元々彼ら彼女らは同じ国の民である。南側からしても北側からしても、分たれた同族を救うために必死であった。
『俺らもなんとかしたいところだけど…』
『荒らしまくった側だしなぁ』
『城にはしばらく行けねぇな』
馬賊は難民を恐怖させないため、大隊の代わりに国境地帯の警備を行っていた。
『崔 斗鉉大尉だ』
『お久しぶりですね。あの山城攻め以来ですね』
『覚えていたのか…今日は救援物資を持ってきた。それと…少しづつ、政府の作った難民村に連れて行く』
『ええ、お願いします』
両者が握手を交わし、大量の支援物資が玄岳城に流れ込んだ。
「しかし、なんというマッチポンプ。我が所業ながらやりすぎたか?」
『大隊長?どうかされましたか?』
『いや、何でもありません。それよりも救助を急ぎます。早めに安定した難民村に難民を移送するのです』
難民事件が収束するまで、2週間近くの時間がかかることとなる。
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エンド
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