・第四話 ≪煙攻城戦≫
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第四話
「煙攻城戦」
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主力部隊が全滅した復興義勇隊であったが、それを知らせられる者はいなかった。逃げる暇すらなかったのである。
そんな復興義勇隊の山城に向かって誠達の軍は進軍していった。
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●復興義勇隊本拠地●
「ふむ、思ったよりもしっかりと城だな」
山城から敵発見の鐘が鳴る音を聴きながら、誠は山城を観察する。
『大砲もないのに攻城戦など無茶だ』
『中尉殿、ここは一旦撤退された方が…』
李国人中隊長達の撤収進言に、誠が意味深な笑みを浮かべる。その笑みはどこか妖艶で…。
『城に籠城するという危険性を反乱軍に焼き付けてしんぜよう』
ーーー最初に行動を起こすのは攻め手。しかし、それは直接攻撃ではなかった。
『私はここに赴任するにあたり、事前に動植物について確認を行いました。その植物を見つけたときは顔を顰めたものです』
銃撃が城からギリギリ届かない場所で、まだ青々しい植物が枯れ木や枯れ葉と共に燃え上がる。山火事と勘違いしそうなほどの煙が風に乗って、山城を包み込む。
『燃やすと異常な量かつ有毒な煙を発生させる植物。そんなものを自軍で燃やしたら大変でしょう?だからしっかり調べました』
その植物を燃やした際に発生した煙は、粘膜を炎症させ、最悪呼吸困難や失明を招く。まさに危険植物。
『ごほごほ‼︎』
『く、苦しい』
『み、水』
ゲリラ兵士達が山城を包み込む煙に苦しむ。その様子はまさに毒ガス攻撃そのものであった。
『我慢できなくなった敵は射殺しろ。まあ、死ぬほどの距離と量じゃありませんからね』
新鮮な空気を吸おうとしたゲリラ兵士達が、南李共和国兵士達に銃殺されてゆく。
『ゴホゴホ、いかん‼︎城から出るな‼︎城壁の中にゴホゴホ‼︎』
突然であるが、復興義勇隊の大半の兵士は最低限の訓練も受けていない農民兵である。国が分断される前までは、搾取されながらも田畑を耕していた農民である。
そんな彼らがパニックに陥った際に、指揮官の言葉で冷静になれるか?否、なれるわけがないのである。
結果として、咳き込みながらも必死に制止する指揮官達を無視したゲリラ兵士達が、南李共和国軍の銃撃に倒れてゆく。
『城というものは動かせない。安全距離からの攻撃に晒されれば甘んじて耐えるしかない。特に防御力の関係のない攻撃などはね。
ーーー煙が止み次第本格的攻城戦に移行する‼︎破城槌用意‼︎』
そこら辺から切り出した丸太の杭を構えた南李共和国の兵士達が唾を飲む。
『ゴホゴホ‼︎』
『殿下‼︎くっ、ここまでか』
『白旗をあげよ。ここまでだ…』
山城に白旗が上がる。南李共和国兵士達に安堵の空気が広がる。
『火を消せ‼︎城の中に兵を送り込め‼︎山城を制圧するのだ‼︎』
口元と鼻を布で覆った兵士達が、ゲリラ兵士達が咳き込みながら出てくる出入り口に突入する。
『抵抗する奴は射殺する‼︎生き残りたいなら武器を捨てて地面に伏せろ‼︎』
ゲリラ兵士達が武器を捨てて地面に伏せる。
『おのれ…ッ‼︎痴れ者共めッ‼︎』
『地面に伏せやがれ‼︎抵抗するなら撃つぞ‼︎』
上層部らしきゲリラ達の前に、口元を布で覆った誠が現れる。
『初めまして諸君。月皇国軍中尉の天ノ川 誠です。諸君らを国家反逆罪にて逮捕いたします』
ゲリラ達が拘束されて外へと連れ出される。
『さて…城の爆破用意‼︎放置したら他の反政府組織に利用されますから、再利用が不可能なほど徹底的に爆破してください』
『『『『はっ‼︎』』』』
こうして大規模反政府ゲリラ、復興義勇隊は全滅したのであった。
≦戦闘完了。リザルト開始≧
誠の頭の中に声が響く。
≦戦闘結果:圧倒的勝利≧
≦撃破敵数:81名≧
≦獲得捕虜:350名≧
≦味方戦死者:0名≧
≦味方負傷者:10名≧
≦評価備考:重要人物の捕虜+6≧
≦獲得報酬:恩賞金130圜、旧李王国金貨25枚、部隊経験値+500≧
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●1週間後●
●第六臨時編成歩兵中隊駐屯所●
『初めましてだな。俺は龍雲一家の頭領の【龍雲】だ。勿論偽名だがな』
まさに山賊といった出立の中年の男が、誠に暴帝国風の臣下の構えを取る。
「(ここら辺は某帝国の影響が強いから暴帝国風なのは分かるが、何故臣下の構え?)」
不審に思いつつも、誠は笑みを浮かべて名乗る。
『月皇国陸軍中尉の天ノ川 誠です。此度の加勢大変助かりました。お礼を申し上げます』
『こっちこそ大儲けさせてもらったぜ。おかげさんで数ヶ月は遊んで暮らせるぜ』
龍雲が出されたお茶を一気に飲む。
『ところで、私に話があるということでしたが…追加の報酬などでしょうか?』
『ある意味合ってるっちゃあ合ってる。提案があって来たんだ』
ギラギラとした目で龍雲が誠を見つめる。
「(これは野心とかそういう類に塗れた目だ。飢えた目だ。とにかく上に行こうとする目だ)」
『俺らは馬賊としてやって来た。だが限界が来てるのはよく分かってる。国が安定してくれば俺らは制圧される』
『まあ…そうでしょうね』
馬賊は混乱する国内情勢で、己達を守るため食っていくために武装化した住民が始まりである。国が安定すれば反発する理由も武装する正当性もない。しかも、政府に反旗を翻す可能性もあるため、鎮圧のために兵を派兵される可能性もある。
あくまで、今まで馬賊が跋扈できたのは、旧李王国が腐敗し切っていたためであったのだ。
『そこで、だ。俺らは政府に従うことにした。しかし、軍とは反りが合わねぇ。だから独自武装組織…傭兵としてあんた個人の私兵となることにした』
『私兵、ですか?』
『宗主国の軍人様の私兵だぜ?共和国政府も下手に手出しできねぇ。それに何より馬賊を馬賊として使うあんたの手腕気に入った。軍に合流するより、あんたの私兵をやった方が面白そうだ。
ーーー馬賊連合【【天狼団】構成員800名があんたに膝を着こう』
誠は少し考えると、クスリと笑ってから笑みをそのままに頷く。
『分かりました。貴方の提案を受けましょう。今日から貴方達天狼団は私の配下です』
『忠誠を誓うぜ。俺ら馬賊の王よ』
誠が戸棚の中から旧李王国でも有名であった酒を取り出す。そしてコップに注ぐ。
『飲みながら聞いてください。馬賊らしくね』
『くくっ、そういうの大好きだぜ』
龍雲が酒を飲む。
『一つ聞きますが、天狼団は北にも浸透していますか?』
『数家が北にも縄張りがあるな。それがどうかしたか?』
『国境近くの都市で略奪させてください。天狼団とは無関係なふりをさせてね』
『く、くははは‼︎いいのかよ⁉︎戦争になっちまうかもしれねぇぜ⁉︎』
国境地帯での武力の行使はシビアな問題である。しかも昨年まで戦争を繰り広げていた国同士である。通常ならばガソリンの近くで花火をするかの如き愚行である。
『今の北李王国の上層部は旧李王国上層部の残党です。旧李王国で馬賊の跋扈を見逃していた連中が、南北に別れたくらいで変わると?』
『くくっ、国境の連中に多少賄賂を渡せば問題ねぇだろうな。しかし、卑怯というか卑劣な真似だが、属国の人間にもお優しいあんたのような軍人のやる作戦とは思えないぜ』
『何を言ってるんですか?』
誠は不思議そうな顔をする。まるで豆腐で頭を打って死んだみたいなありえないことを聞いたかのように。
『私がこの国の人間に優しく差別せず対応するのは、その方が利益があるからですよ。恐怖でも人は従いますが、命令された以上の成果は出しませんからね。それなら仁徳で従わせた方が人々は結果を出すでしょう。義理より恩の方が利益は大きい。ですから、必要であるなら卑怯卑劣な真似でもしますよ。時には差別的行動も恐怖を与える真似もします』
『くっ、あはははは‼︎こりゃあ参った‼︎どんどんあんたのことが気に入っちまうぜ‼︎あんたとならどこまでも登っていけそうだ‼︎いいぜ、連中に命じて散々に略奪してやるぜ』
誠はお茶を一口飲む。
『略奪により国境地帯の人々は疲弊する。そして不満は何もしない王国政府へと向かう。懐は暖かく不満は膨れ上がる。一番ありがたいのは国境地帯で反乱が起きること。そして共和国政府が併合に動くことなのですがね』
『そんなことして南北戦争にならねぇか?』
『今の南北の国力差はご存知ですか?』
突然、龍雲に対して誠は問いかける。
『さあ?馬賊が知るわけねぇ』
『人口比率で南800万人、北500万人。北は山岳地帯が多く農作等には向かないのに対して、南側は平地が多く農業に適した土地が多い。工業化は同じ程度ですが、経済力と人口が違う』
南李共和国には成長の余地があったのだ。確実に北よりは。
『王国が王国である限り、現状負けはありません。戦争になったところで勝利は揺るがないでしょう。手こずるかもしれませんがね』
『くっくっく、もしも戦争になっても勝機ありってか?本当に面白いぜ』
誠が懐から封筒を取り出す。それを龍雲に手渡す。
『こりゃあ…金か?』
『現在、戦争で放棄された武器が裏市場に流れているようです。武器を揃えるための資金にでもしてください』
『成程ね。しかしそれなら、月皇国の金にしてほしかったぜ。今は北も南も価値が暴落してて、ただの紙よりはマシ程度だからよ』
『ではこちらを』
皮袋に入った金貨が広げられる。
『金貨⁉︎』
『まあ役得ってやつですよ。これなら物々交換でそれなりに手に入るのでは?』
『勿論だぜ。金なら文句もねぇ』
龍雲が金貨を回収する。
『多少質が悪くても、全員を武装させてください。武装してこその兵士ですから』
『ああ、任せてくれって‼︎』
龍雲が酒を一気に飲み込む。
『んじゃ、俺は帰るぜ。身辺警護と連絡用の兵士は後で送るぜ』
『楽しみにしておきましょう』
龍雲が退室する。
「馬賊連合、ね」
誠は軍服のポケットからケースを取り出し、中に入っている飴を取り出す。苺味のそれを口に放り込む。
「せいぜい使い潰してやるよ。どうせ未来まで生き残ることはねぇんだから」
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エンド
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