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その晩、あかねはありさに電話すべきか悩んでいた。
それはあの『布川良平』という人物についてだ。
最近の噂によると、二人は手を繋いで帰っているらしい。先日までありさのお母さんが送っていたはずなのに。
何があったのだろう?
あかねはただただありさの事が心配でならかった。
あの『布川良平』という存在。それがありさにとって悪影響を及ぼすのではないかと思うと、胸が苦しくなる。
よし、電話をかけよう。
そう思うまで2時間ほどかかった。現在は夜の10時半を少し回った時間だ。電話するのにもそろそろ限界の時間だろう。
手に汗を滲ませながらありさの電話にコールする。
機械音を響かせてコールが鳴る。ありさはまだ通話に出てこない。最後にもうコールが切れそうだ、というところでありさが電話を取る。
『もしもし、どなたですか?』
ありさの声だ。その声は少し緊張気味だった。
失明したら相手が誰なのかもわからない。そう言う恐怖があるのだろう。
「こんこん、あかねだよー」
あかねは務めて明るい声色でそう告げる。
『あかねか……』
ありさの声色が柔らかくなる。
『……どうしたの?』
「いんやー、ちょっとね。聞きたい事があってさ」
「何?」
知らず知らずの間に手汗を掻いていたようだ。
あかねはごくりと唾を飲み込む。
「あの、その、えっとね。…………最近、あの布川くんと一緒に帰ってるみたいじゃない? 一体どうしてなのかなー、って」
『ああ、そんなこと』
電話口の向こうでありさは、ほお、とため息を吐いた。
「付き合っちゃってたりするのかなーって……?」
恐る恐ると言う感じであかねは尋ねる。
『そんなんじゃないよ。ただ一緒に帰ってるだけ?』
「それが分からないんだよねー。どうして一緒に帰る事になったの?」
『お母さんがそうしなさいって言ったのよ』
また受話器越しにありさはため息を吐いた。
「いやならいやって言った方が良いよ!」
『別にいやってことはないんだけど……』
「でも、なんかあるんじゃないの?」
あかねは思わず強い口調で言ってはっとした。こんなつもりではなかった。
『別に。ただ、ちょっと話ながら帰ってるだけだよ』
それにありさは変わらず冷静な声で返答する。
「なら良いんだけど……」
あかねの言葉がしぼんでいく。もう、何が何だか分からなくなってきた。
『要件はそれだけ?』
冷水にも思えるほど冷静にありさはあかねに尋ねる。
「う、うん……」
落胆にも似た何かを胸にあかねは言葉を返す。
『じゃあ、もう電話切るね。またかけてね。あかねとのおしゃべり楽しいから、次はもっと楽しい話題で電話をかけてくれたら嬉しいな』
「わ、わかったよぉ。ごめんねー。つまらない事聞いて」
『いいのよ。あかねが心配してくれてる事は痛いほどわかったから。私は大丈夫よ』
「ならいいの。うん。……うん。それじゃあまたね、ありさ」
『うん、またね、あかね』
そしてぷつりと電話が切れる。あかねの中で、何か他のも切れるような音が聞こえたが、務めて気付かないふりをした。
先週は更新できず、大変申し訳ありませんでした。
言い訳にしか聞こえないかとは思いますが、この作品は私にとって、とても手に余る作品のように感じます。
一行一行書くのがつらく感じられます。それほどまでに難しい。
来週も更新できるかどうか分かりません。ご了承ください。
感想・批評・拍手・拍手コメント、お待ちしております。
先日も拍手していただき、とても元気をもらいました。
気軽に押して頂ければと思います。
また、拍手コメントを書かれた際に、『返信は書かなくていいよ』と言われれば書きませんので。
拍手コメントも本当に一言でいいんです、何か反応してしていただきたいんです。
前記のように、この作品を書くのはとても辛いんです。一人じゃいつか止まってしまうのではないかと恐怖しております。
何卒よろしくお願いいたします。
それでは、ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます。
来週更新できることを祈りつつ。