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偽善事業  作者: 灯月公夜
第一章:真っ暗/日常/私の世界
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 今は授業と授業の間の準備時間。

 ありさはひとり、ぼんやりと机に座っていた。と、ふと背後から同じクラスの男子生徒の声が聞こえて来た。失明した目の代わりに耳がだいぶ発達してきたらしい。意識していないのに、それらの声はありさの耳に届いた。

「あの布川って言う転校生が大森さんと一緒にこの頃下校しているらしいな。しかも手を繋いで」

「ああ、そう言う話最近聞くよな。どうなのか俺は知らんが。だが、もしもその話が本当なら、あの転校生には腹立つよな」

「なんで?」

「いや、なんかうざいじゃん。あいつもどうせ大森さんの顔見て下手に出てると思うとさ。あんなデブがさ」

「まあ、それはあるな。ほんとのところどうなんだろうか。あいつ、大森さんと付き合っているのかね」「

「どうだろうな。噂が本当ならその可能性もあるわな。ちょっとお前、聞いてこいよ。あそこで大森さん座ってるし」

「いやだよ、お前こそ聞きに行けよ。あのデブと付き合っているんですか? って」

「うるせぇ。聞きに行けるかよ。まだデブに聞いた方がマシだぜ」

「はは、確かに」

 そこで授業を告げる鐘がなる。後ろで話していた男子生徒たちもそそくさと自らの席に帰ったようだ。

 次の授業は英語だ。がらりと前の扉が開けられ、担当教師が入って来る。

 起立、礼、と日直が声をかけ、授業が始まる。

 ありさは録音機器の電源を入れ、ぼうっと授業を聞いていた。

 授業は滞りなく進み、やがて終了のチャイムが鳴る。今日はもうこれで終わりだ。あとは担任教師の連絡を聞き、解散となる。

 今日もまた良平と帰る事になっている。ここ数日、いつも良平がありさの元へ来て、「それでは帰りましょう、大森さん」と言うのだ。

 いつも通りと言えば、朝も良平が迎えに来てくれる事になっている。本当になんて奴なんだろうと思わなくもない。しかも、ありさの希望で、朝早いままだ。それでも良平は送れずありさを迎えに来てくれる。

 真理恵は単純にそのことを嬉しがっていた。これで前みたいにみんなと仲良くやれると信じているのだ。

 関係ない、と思う。私にはもうどうでも良い事柄なのだ。すでに盲人学校へ行くことが決まっている。修学旅行までの関係にそこまでの思入れはない。

 ありさの目の前の扉が開かれえる。

「おーい、席につけー」

 渡辺が開けるとともにそう教室内に言い放つ。

 その声に従い、クラスメイトたちは思い思いの行動をやめ、机に戻って行った。

 それを渡辺は確認すると、納得したように一度頷いた。

「さて、もうじきお前らが待ちに待った夏休みがあるわけだが、自由課題があると言うことを覚えているよな」

 その声にクラス中から重たいため息が木霊した。

「知っていると思うが、一応確認な。自由課題は個人、あるいはグループで提出してもらう。課題の内容は不問。何でもいい。その内容は各自で考える事。提出は夏休み明けな」

 そこまで言って、渡辺は「あっ」と声を出した。

「大森は提出しなくていいぞ。目の事があるからな」

「……はい」

 ありさは小さく頷く。クラスから「何故大森だけないの?」というブーイングはなかった。それどころか、渡辺の最後の一言でクラス中に気まずい空気が流れる。

 そんな空気の中、終礼を終えた。

「さて、じゃあ帰りましょう、大森さん」

 良平がやって来て、いつものように手を差し伸べる。

「……うん」

 それにありさは小さく頷いた。

今週もなんとか更新。が、来週も更新できるかどうか危ういです。すみませんorz


感想・批評・拍手・拍手一言コメント、お待ちしております。これらがあるだけで頑張れます。どうぞよろしくお願いいたします。


それでは、来週も更新できることを祈りつつ。

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