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時空の裂け目

このエピソードでは、スチュアートがついに謎のトンネルの奥深くに入り、かつて誰も見たことのない「時空の裂け目」と対面します。果たして彼はこの先へと進む勇気を持てるのか?本格的な冒険の始まりです。

トンネル


予想に反して、下りるのにはかなりの時間がかかった。というのも、暗闇の中で金属のはしごを降りるのは、上るよりも遥かに難しい。上るときは、脳が自然と次の一歩を導いてくれるのだ。


やがて足元に硬い地面を感じた。足をつけた底は完全な闇で、彼はすぐに、進むためのスイッチを手探りで探すことにした。


数秒後、左側の頭の高さあたりにスイッチを見つけ、慎重に右へ回した。カチッという音とともに、ランプが次々と点灯し、奥へ奥へと通路を照らしていった。


トンネルが明るくなるや否や、彼はすぐに上へ戻り、上のハッチをしっかり閉めた。秘密の通路を他人に知られないようにするためだ。


再び底に戻ると、彼はあたりをよく観察し、前方に木製の階段が続いているのに気づいた。階段の途中にはいくつかの踊り場が設けられていた。


好奇心は少しずつ恐怖へと変わりつつあり、彼は慎重に階段を下り始めた。果たしてどこに辿り着くのかと不安が募る。


階段は終わりがないかのようだった。


下に進むにつれてトンネルは徐々に広がり、左へ、右へとゆるやかに曲がっていく。


おそらく今はすでに水面下にいるはずだったが、トンネルの中は乾燥していて冷たかった。彼は斜めの階段を静かに踏みしめながら、音を立てぬように歩を進めた。


長年放置されていたにもかかわらず、階段は驚くほど頑丈に見えた。それが彼に少しばかりの安心感を与えた。


やがて十分ほど経ち、彼は最下段の踊り場に辿り着いた。


そこから先の通路は、彼をさらに驚かせた。トンネルは前よりも二倍の広さになり、その中央には一本の線路が敷かれていた。そして、線路の上には古びたレールカーがぽつんと置かれていた。


それは、かつてサクラメントの鉄道博物館で見たものによく似ていた。



彼はトロッコに近づき、横に取り付けられたレバーのほかに、金属の棒が突き出しているのを見つけた。

車両の中央に立ち、どうすれば動かせるかを考えたが、役に立ちそうなのは複数のギアに繋がった中央のレバーしかなかった。

彼はそのレバーに近づき、全力で押したが、まるでセメントで固められたかのようにびくともしなかった。

もしかするとブレーキが機構をロックしているのかもしれないと思い、今度は棒を反対方向に力いっぱい引き、再びレバーに戻った。

すると驚いたことに、今回は抵抗がずっと弱く、やがてトロッコ全体がわずかに動き始めたのを感じた。


彼はリュックを下ろして床に置き、興奮のあまりレバーを上下に押し続け、安全と思える速度に達するまで加速させた。

最初は小さな軋み音が聞こえていたが、速度が上がるにつれてその音も次第に遠のいていった。


彼は夢中になり、トロッコが岩に衝突するかもしれないという心配を忘れていた。

前方の様子を確認するために、車両の前部に移動し、トンネルを注意深く見守った。


もし本の指示が正しければ、レールはあと2マイル足らずで終わるはずで、その直前に「トレジャーアイランド」と呼ばれる場所があり、そこに時空の裂け目があるという。


彼はふと、自分の行動が正しいのか疑問に思った。

興奮のあまり、理性を失っているのではないかと感じたのだ。


「今引き返したら、向こう側に何があるのか一生わからない。

でも、たとえそこに行って何かを見たとしても…戻ることはできるはずだ。」彼は声に出して言った。

「よし、なるようになれ。」


彼は再びトロッコの中に戻り、減速していた車両を再加速させるべくレバーを上下に動かし続けた。

そして前方を見守るために再び外に出て、必要であればすぐにブレーキを引けるように構えた。

最悪の場合は飛び降りればいい。サンフランシスコの路面電車で何度かやったことがあるのだ。


長い年月が経っているにも関わらず、トロッコは驚くほどスムーズに距離を進んだ。

一度スピードが乗れば、1分に1回レバーを動かすだけで一定の速度を保てた。


やがて、スチュアートはトンネルの壁に「STOP」とペイントされた文字を見つけた。

彼はすぐさまブレーキを引き、大きな音とともにトロッコは完全に停止した。


前を見ると、巨大な垂直の壁が約50ヤード先にそびえ立っていた。

もしあの文字に気づかずにそのまま突っ込んでいたらどうなっていたのか…。


だが、今はそんなことよりも、この先に本当に「裂け目」があるのか確かめたいという好奇心が勝っていた。


彼は木製の階段を降りて辺りを見回した。

この場所の空気は、トンネルの入口とは明らかに違っていた。


最後の一段を跳ね下りてリュックから地図を取り出すと、指で目指す場所をなぞった。

そこには、岩の隙間の奥に第二のトンネルへと繋がる秘密の通路があると記されていた。


通路は縦に並んだ木の板で覆われていたが、外すのはさほど難しくなかった。

およそ10分後、彼はわずか60センチほどの狭い裂け目を発見した。


その裂け目の向こうには、最初のトンネルよりも広い空間が広がっていた。

そしてそこに立っていたのは、彼の想像を遥かに超える存在だった。


「時空の裂け目」——

それは扉でもなければ、ポータルでもなかった。

それは大地に刻まれた巨大な亀裂であり、高さ30メートル以上、左右に果てしなく伸びていた。

左を見ても右を見ても、その裂け目は地平線の彼方へと消えていく。

まるで地球そのものが古代の目に見えない線に沿って引き裂かれたようだった。


裂け目の縁には、太い鉄のリングが地面に深く打ち込まれており、そこに結ばれた太いロープが円を描くように床に置かれていた。


スチュアートがその黒い深淵を見つめると、世界の輪郭が徐々に薄れていくような感覚に襲われた。

黒い表面は波打っているようにも見えたが、よく見るとそれは粘り気のある黒い空気のようだった。

視線を逸らすことができない、不思議な引力を持っていた。


そしてもう一つ奇妙だったのは、その「音」だった。

それは彼がこれまで聞いたことのない、不思議な音。

トンネルに入った時には聞こえなかったのに、今はこの裂け目の前で、その音と風のようなざわめきしか聞こえない。

声を出そうとしても、こもったように歪んでしまった。


彼は悟った。

この裂け目は物体だけでなく、音までも吸収してしまうのだと。


その場に立ち続けるうちに、身体が不安定な感覚に襲われ始めた。

まるでジェットコースターに乗ったときのような感覚だった。


彼は裂け目から15メートルほど離れた位置にいた。

本の指示によれば、裂け目に近づく前にロープを腰にしっかり結びつけるべきだという。

そうすれば、必要であればいつでも元の世界に戻れるのだ。


ロープには1メートルごとに大きな結び目がつけられており、手から滑り落ちないよう工夫されていた。


彼はリュックを隅に置き、近くにあった布で覆った。

誰かが彼を探しに来たときのために、彼は壁にこう記した:


「スチュアート・マディソンは1984年6月13日、時空の裂け目に入った。」

ここまで読んでいただきありがとうございます!次回はいよいよスチュアートが時空の裂け目を越える瞬間が描かれます。次のエピソードもぜひご覧ください!

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