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シュールな場面がそぐわない - 2

【前回までのあらすじ】

研究への貢献、干渉術実験の手法を検討

 テスト運用も終わり標的を奴に定めた調査日。

実験場へ行くと驚いたことにアンがいた。

珍しい。

未だ干渉術への反対姿勢は崩していない。

となると何か抗議でもするつもりか。


「やあ、アンじゃないか。珍しいな。何か手伝ってくれるのか?もしそうなら嬉しいよ。君の知見は非常に参考になるからな」

「テストが終わったと聞いたのよ。その成果を見に来ただけ」

「そうか。どんな形でも興味を持ってくれたのは嬉しい。本心からだ。その好奇心が満たされる結果を見せられるといいな」

「好奇心じゃないわ。どんなものか確かめに来ただけ」


 それを好奇心というのでは?と返しそうになったが堪える。


「なんにせよぜひ見ていってくれ」

「ええ。そのために来たもの。今回の対象は何?」

「今回は現地人を使うことを目的にした干渉術テストを兼ねた調査だ」

「現地人を使う?何をするつもり」

「話が出来るなら協力を得ることも出来るかもしれない。そうしたら調査もはかどるだろ」

「ふーん、なるほどね」

「といっても今回はどう反応するのかをテストするつもりだ。だから少し驚かすようなこともする」

「過激にならないようにね」

「ああ」


 察しがいいというべきか。

過激にならないように、か。

彼女の前では気を付けておこう。

また何を言われるかわかったものではない。

 

 さて調査開始だ。

俺は術の起動に取り掛かり、周りの職員は各機器の起動に入っている。

ゲートが開き目的の場所が目に映る。

幸い田中がいる。

しかし家族全員だ。

田中家の食卓にお邪魔してしまったようだな。

お子さんのトラウマにならないといいが。

ま、とりあえず計画通り驚かすとするか。


 小奇麗に整えられた食卓には小物が置いてある。

それを干渉術で少し持ち上げカタカタと小刻みに机に当てるように動かす。

ちょっとしたいたずらだ。

周りの職員たちも小馬鹿にした様子で田中家をみている。

タネがわかると子供だましだが何も知らなければ突然の出来事に目を向けそのまま固まる。

恐怖というよりは戦慄といっていいのかもしれない。

食卓を囲む全員が席を立ち後ずさる。


 はずだった。

小物が動き出して凍り付く田中家をイメージしたのだが実際は逆。

まず田中はポケットから数珠を取り出し念仏を唱えだす。

奥さんは少しあきれた様子で手際よく片付ける。

そして念仏の終わりに入ると、子供がチーンと雑念が払われそうな響きでコップを叩いて終わった。


 なにこれ?

皆同じことを思ったようだ。

想定とは逆で我々研究所職員全員が凍りついていた。

アンの意見を求めて顔を向けると彼女も口を半開きにして固まっている。

そして田中家の皆さんは席を後にし各々の生活へと入り込んでいった。

取り残された俺たちは正気に戻った職員の提案で一旦調査を終了することにした。


 なんであいつら慣れてるんだ?どう考えてもおかしい。

それともあの世界ではこういったことは日常的なことなのか。

やはり魔法が存在する?

いやいや、何度か行った調査ではそんな兆候なかったし何より自分の記憶がそれを否定している。

しかし見たものは事実。

数珠を手に本職と疑う念仏を唱えて更には見事な連携を見せられた後だ。


 俺はただ混乱していた。

わかっていることは研究職員一同もかつてないほど混乱しているということくらいか。

もしあれが自分たちとは共通点の少ない生命体なら不思議に思うくらいで済んだはずだ。

だがあの世界は俺たちの世界に酷似している。

その住人が不自然なことを冷静に対応したのだ。

しかも妙な儀式まで見せられた。


 もう訳が分からん。

まあ職員たちからすればそもそも何をしているのか分かってはいない。

ただ奇妙なことに遭遇して状況が把握できず混乱したのだろう。

まあいい。

冷静に対処できるなら何の問題もなく文字でやり取りできるということでもある。

だったら回りくどいことはやめだ。


次回「シュールな場面がそぐわない - 3」

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