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異界からあなたを追って - 暗  作者: Tongariboy


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24/29

いい奴ではあるのだが - 1

【前回までのあらすじ】

アンは身を呈して狂乱の科学者を止めた

 転移術を個人利用できる機器を作ってからというもの毎日飽きることなく異界を見ている。

正確にはゲートを開いて見ているだけか。

最初は探求心から見ていたのだがある時、俺のいる環境によく似た世界を見つけた。

仕事の空き時間で気が向いた時にそいつを見ることがある。

始めはどう違うのかが気になって観察していたのだが段々と気に入ってきた。


 自分の世界によく似た異界といのは面白い。

同じようで違う。

間違い探しのような楽しさとその違いから生まれた在り方に興味を惹かれる。

まずその世界は俺のいる場所と同じといってもいいような研究所がある。

しかしそこにいる人間は違う構成のようだ。

その中に俺と同じ名前の人間がいてぱっと見は少し似ているのだが、このエイゼット君の特徴はすぐに迷うこと。

俺と同じならよかったのだがあいつはどうも意思が薄弱だ。

決断というものがとにかく苦手らしい。


 俺はそんな姿を見ていられず、つい手を出してしまう。

どうせ自分の世界とは関係ないのだからどうなろうと構わないし。

他の職員に万一咎められても適当に研究の為とでも言えば問題ないでしょ。

手を出す時はあいつの精神に干渉して俺の指示に従うように仕向ける。

だがこの術は完全に操れるわけでもないし精神干渉はまだ技術的に難しく、術の結果は対象の意思の強さに大きく左右される。

といえばカッコはつくが実際のところ、このエイゼット君でさえ抵抗できるほど弱い術だ。

だから背中を押すくらいのことしかできないが、まあ十分だろう。

うまくやれよ、エイゼット君。

俺は君の味方だ。


 この世界を見始めてそれなりの時間が経ったが、かつてないほど今のあいつは落ちこんでいる。

憧れの彼女に見放されてしまったらしくあいつの望む結果から外れてしまったようだ。

これは俺が干渉したことが原因と思われる。

しかし思っていることは伝えるべきだ。

こと重要な局面であれば尚更。

あのまま状況任せに黙って丸め込まれるのがいいとでもいうのか。

目標を定めたなら行動しなくては何も進展しない。

なのにあいつは迷ってばかりいる。

ずっと気になっているがどうしてそこまで迷うのか。

そんな必要があるほどのことでもないだろうに。


 原因はあいつの問題解決能力が低いことだ。

そのせいでどうすればいいかわからないからいつも迷う。

どうすれば変えられるだろうか。

どう干渉すればいい?

問題点はなぜ能力が低いのか。

経験のなさか?メンタルに問題が?そもそも素養の有無はどうだろうか。

ただ不安になりやすいだけなら改善の可能性はある気もするが。

うーむ、しかしあまり学業は向いてなさそうだな。

ぼんやりしていて集中力に欠ける。

理解力も乏しい。

特に強いプレッシャーに晒されているわけでもないからポテンシャルの低下は見られない、と考えると。

これは、だめかな。


 さてさて、知能を高める方法ね。

成人した人間の潜在能力の向上なんて可能かどうか。

行動基準がましになる概念をひたすら干渉術で送り続けるとか。

しかし条件反射で動くだけになるのでは?

これは知能の高さとは違う気がするな。

召喚術関連の知識にしぼり、壊れない程度にあの頭に流し込むか。

いや、干渉術で知識の補強なんて精神干渉と同様の手法になる。

となればあいつのやる気に左右されるわけだから効果はないな。

なんだか面倒くさくなってきたぞ。

だが何かしないと気が済まん。

イライラする。


 そうだ、荒療治になるがいっそ頭をぶつけてみるか。

今研究中の過去へのアクセスを試してみたかったし。

幼少期なら干渉も楽だろう。

知能にどう影響が出るか考えるとわくわくしてくるな。

一般論でいえば脳に悪影響が出るのはわかっているが、打ちどころとかでいい結果になるかもしれない。

ああそうだ、もしくは雷を浴びせてみるのもいいか。

楽しくなってきたぞ。

よしよし、死なない程度に試してみよう。


 なーに、大丈夫さ。

あの世界にはなんと傷を癒す魔法があるのだ。

他の世界では見かけなかったのだが。

うーむ、なかなかに興味深い。

実に面白い世界だ。

さてさて、どんな方法を試してみようかな。


 待てよ、さすがに人目のつくところで人体実験はまずいよな。

念のため研究所に人が少ない時間帯でやらねば。

この間も施設を個人利用するなって所長にどやされたばかりだし。

やれやれ。

ま、バレなきゃ問題ないさ。


 頭をぶつけてみた。

一時間ほど意識が戻らなかったのでとても焦った。

むしろ俺の心臓が止まりそうなほど冷や冷やした。

いやー、てっきり死んでしまったかと焦って周囲にいる人間手当たり次第に干渉して助けを呼ばせてしまった。

こういうのは実際に事を起こしてしまうといい気がしないな。

うん、この手のことは今後控えよう。

大丈夫かな、エイゼット君。

もうふわっとしててもいいや。

元気でいてくれたらそれでいいという親心を理解したよ。

さよならエイゼット。

さて、明日はどの異界を見ようかな。

次回「いい奴ではあるのだが - 2」

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