ハートは作らないはずだった - 7
【前回までのあらすじ】
各平行世界の中心にはAZがいると語るアン、そして何かに気づき
アンは入港許可証という言葉を聞いてからしばらく考え込んでいた。
そして、どうやら考えがまとまったらしく俺を見て言った。
「言ってみればそうよね。魔法を使わはいと入れない。でもその世界には魔法がないから入れない。なるほどね。魔法のない世界とは、別の見方をすれば魔法の存在を許さない世界ってことよね。つまり異界からの干渉を防いでいる世界であるかもしれない。だから探し出すことはできない。なぜなら見つけ出せるのなら魔法の干渉を許しているのだから。だから今まで見てきた世界には対抗策となる概念がそもそも育ってなかった。その概念があれば術を編み出したかもしれないからその世界にアクセスできない。それで手掛かりさえ見つけられないのだとしたら」
彼女は自分の仮説に興奮を隠せないでいる。
集中して自分の頭の中に入り込み始めているようだ。
「見つけられないということは、私たちのやろうとしている魔法の干渉を防ぐ方法を作り出すことに他の世界では成功している可能性がある。そう、探しても見つけられない。もしそうなら、そうなら希望はある」
魔法はあって当たり前、全ての平行世界にある共通点でありゲートは魔法で作られている。
橋を遮断したらその世界との接点なんて出来るわけない。
どうやらアンはそのことで頭がいっぱいのようだ。
周りが見えないようで何かぶつぶつと独り言が聞こえるが口にするのは断片的でよくわからない。
俺は少し冷めていた。
仮にアンが考えている通りだとして、干渉を跳ねのける魔法で世界を覆うことが出来たとしてもまだその方法さえわかっていないからだ。
まあ、それは俺の担当だからもっと頑張れという話なのだが。
そもそも世界って概念がわからないのだ。
不定形のものをどうやって覆うんだ?
まあいいか、可能性が見えただけでも。
それに、きっと可能だろうと思うのもいいかもしれない。
なぜなら魔法とは本来制限のないもの。
俺が知る魔法とは起こりえない現象を意図的に引き起こすことを指すのだから、なら不可能なんてあるはずがない。
不可能があるのは科学だ。
魔法を自分たちに認識できるように既存の概念である科学に置き換える、もしくは論理立てて理解する必要があるから制約があるように見えている。
しかしその概念を取り払っては俺たちは魔法を使えないだろう。
起点と過程と結果。
この3つを用いることで概念として定着し行使することができるのだ。
だから魔法をそれに当てはめることが出来ればいい。
そうすればなんでも可能だ。
俺はアンの希望を実現させてみせる。
だって彼女は今すごく喜んでいて、目に見えて気が高ぶっていくのがわかる。
そんなに嬉しそうにされたら何もしないでいられるわけがない。
なんだか子供みたいに見えるほど、いつになく冷静さを欠いている感じだ。
それもそうか。
異界からの干渉を恐れ、絶望し自害を選ぶ世界線があるほどの彼女だ。
その元凶と決別することが出来ると知れたらこうもなるか。
よかったよかった。
と思った矢先のことだ。
彼女が俺に歩み寄ってきた。
次回「 ハートは作らないはずだった - 8」




