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ハートは作らないはずだった - 1

【前回までのあらすじ】

魔王の殺害、そしてアンの取った行動は

 俺は昔から自分のことしか考えていなかった。

他人に合わせる意味が分からず友達や仲間という感覚も希薄だ。

困ったことはなかった。

必要性も感じない。

せいぜいたまに話相手がいるのは楽しいと思うくらいの感覚がある程度だ。

それに小さい頃から共同作業や仕事で競ったり作業を取り合う様を見ては理解に苦しんできた。

出来る奴がやればいいのに我先にと前に出たがる奴が少なくない。

そうまでして認めてもらいたいのか?その相手はたいしたことなんてないのに。

何がしたいのかわからない。

だから他人のことは気にせず自分さえよければそれでいいと、ずっと思っていた。


 アンの懸念はもっともだ。

この魔法は悪用すれば戦争などままごとのようなもの。

必死に危険性を訴える彼女と話していると、どういうわけかこれまで考えもしなかった方向へ頭が動いた。

世界のため、つまり他人のために自分の考えを改める。

始めは言いようのない敗北感が胸を占めたが、彼女と何度も会話を重ねる中で彼女への好感が心を覆い、次第に胸の内にあったものは気にならなくなった。


 俺には大きな目標はない。

人生を楽しめる題材があればそれでよかった。

だが今は彼女のために何かしたい。

懸命に取り組む姿に心を奪われてしまった。

こう想うのは悪い気がしない。

不思議な感覚だ。


 彼女と議論して魔法の源流を探すことになった。

その現場を押さえ魔法の発展を潜在的に止める。

この世界だけなら歴史をたどればおおよその時間軸は割り出せる。

しかし魔法は異界からもたらされた可能性もある。

対象はほぼ無限だ。

しかしどこかに必ずきっかけになった瞬間がある。

どう探すかはこれから。

仮にこの俺たちが見つけられなくとも未来から過去の自分に向けて情報を共有し続ければいつかは見つけられるはずだ。

時間を超越して情報共有することで有限の時間で無限に挑むことが可能なのだ。

ああ、俺の気が変わったのはもしかしたらそうなのかもしれない。

だが悪くはない。

受け入れてやろう。

いい気分だ。


 俺とアンは召喚ゲートをランダムに設定し様々な異界を渡っては調査を行った。

異界は沢山ありどの世界も似ているようでまるで違う様子を見せていた。

印象に残ったものがいくつかある。

八首の龍と対峙する少年。

神の国に戻るため地上を奔走する神々。

名のない人が行きかう世界。

異形と化した友人の人に戻る旅路に助力する青年。

かつて強い光を放った少女が暗がりでもがく姿。

桜の魔王に挑む鳥。

神となった少年。

電波の交差点で苦しむ若者。

化け物退治における最高位の栄誉を得た女性。

これ以外にも数多の異界を見た。

異界を見ていると本を開いているような心地になる。


「わかっていたつもりだけど、実際に目にしてみると異界は本当に多彩ね」

「そうだな。俺たちがいるこの世界とはまるでルールが違う。しかし、どの世界にも魔法があるのは不思議だな」

「そう?私としてはあるのが当然だけど。前世の記憶だっけ。その世界には魔法がないのよね。むしろその方が珍しいんじゃないかしら」

「たしかにこれだけ見て見かけなかったからな。そうなのかもしれない。そうなると、この世界の魔法がどこから来たのか特定するのは無理だし、何より意味がないな。なんせあって当たり前なんだから」

「あきらめるわけにはいかないわ。もし魔法を消すことが出来ないのだとしても、その効果を抑制する魔法を作った世界があるかもしれない。それを探すのはどう?」

「いいと思う。賛成だ」

「ありがとう。あなたの助力には感謝しているわ」

「そう言ってもらえると心変わりした甲斐があったと思えるよ」


 2人で話していると心が和んでくる。

こんなに穏やかな心持になったのはいつ以来か。

アンも嬉しそうにしている気がするし、俺の選択は決して間違ってはいないという確信がある。

これでよかったのだ。

「よし、そろそろ次の世界を見に行こう」

「ええ。記録用デバイスの容量は足りている。うん、問題はない。準備はいいわ。次はどんな世界か楽しみね」

「目的を忘れないでくれよ。ゲートが開いた。さてさてどんな世界なのか」


 ゲートが開くと薄暗い部屋が映し出された。

よく見えないが誰かがいる。

そして妙な緊張感が漂っているのを感じる。

目が慣れ状況がわかってきた。

部屋には多くの機材があり2人の研究員らしき人が会話をしているようだ。

その2人は何かを見ている。

あれは、まるで。

次回「 ハートは作らないはずだった - 2」

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