イタズラは準備をしている時が1番ワクワクする
「あれをこうしてここに繋げて……そしたらこっちがこうなって…………」
「あら、随分熱心にやってるわね」
「ああ、凛花さん……ちょっとこの前の作戦の時にいろいろ思うところがありましてね、イライラをぶつけてました」
「あぁ、なんかザリガニが組織を抜けたとかなんとかってやつ?」
「それです!俺だって抜けれるならさっさと抜けたいってもんですよ!」
「うーん……刹那ちゃんはもう難しいんじゃないかしら?」
「ぐっ……」
自分でもすぐには無理だろうなと思っていたが、現役の幹部に難しいと言われてしまうとくるものがある。
「だいたい何で辞めたいわけ?給料も悪くないし、下っ端なら身バレさえなければ捕まるリスクなんてほとんどないじゃない」
「いや、まあそうなんですけど……」
「社会に出て働いたり、普通のところでバイトすると嫌でもわかるわよ……」
「?なにがです??」
「稼ぐのが大変ってことによ……新卒社会人で月給23万ボーナス年2回(1ヶ月分)、年収いくらになるとおもう?」
「……300万ちょい?」
「322万ね、計算くらいぱっとしなさい」
「まぁ、それは置いといて、それがどうしました?」
「一般社会ってのはね、稼ぐと税金がかかるのよ」
「税金……ですか」
「さっきの金額でも年間で50〜60万くらい国や自治体に払うことになるわ……そしてそれとは別に生活する上で消費税とかを払っていくことになるのよ」
「な、ん、だ、と」
「それに比べて悪の組織からの支払いには税金はかからないわよね」
「……たしかに引かれてるとか聞いたことないですね」
「下っ端でも毎回土日だけ稼働で4万×8回として32万も月に稼げて、年間で384万税金なし」
「……ゴクリ」
「それってつまり、一般社会の年収500万レベルとほぼ同じ手取りってことなのよ?」
「500万……」
「年収500万なんて普通に働いてたら30代後半とか40代でようやく手が届くかどうかってレベルなのよ?」
「な、ん、だ、と」
「それを学生の時点で手にしてしまった刹那ちゃんは、これから社会に出て真面目にコツコツ働いて、夜遅くまで残業して上司にネチネチ小言を言われながら今より少ない給料で生活するってことに満足できるのかしらね?」
「………………………………」
「ま、よくよく考えることね。脱税って言われないようにいろいろ対策したり社会人下っ端はそれはそれで大変みたいだし、捕まるってのは人生において相当なリスクだからね……刹那ちゃんは学生なんだし、本気の本気で辞めるってなったらまぁ、多少の口添えくらいはしてあげるわよ」
「ありがとうございます!……凛花さん実はいい人ですよね……」
確かに給料のことなどを言われると厳しいというのはその通りなのかも知れない。
でも悪の組織にずっと所属しているのに恋愛や結婚っていうのは難しいだろうと思ってしまう。家族との時間を犠牲にすることもあるだろうし、何より家族に悪の組織に所属していることがバレる心配を毎日っていうのはかなりのストレスになりそうだ……
相手が七瀬さんだったら……結婚式……子供……幸せな家庭生活……憧れるよな……
「結婚したいな……」(できるなら七瀬さんと)
「は?……けっ、結婚!?」(話の流れ的に私と……ってこと!?)
「はい……だめですかね?」(やっぱり悪の組織だと普通の人と結婚とか難しいですかね?)
「ちょ、ちょっと……本気でいってるの??」(本当に私としたいってこと?)
「もちろん本気ですよ」(可愛い奥さんとの幸せな生活とか憧れだよなぁ〜)
「えっ///あっ///……でも歳の差とか……」(私もまだ25とはいえ刹那ちゃんは未成年なのよ!)
「そんな気にするほどですかね?」(相手が理想の七瀬さんだとしても1歳上だし……結構普通のことなんじゃ?)
「そ、それでも……せめて高校卒業してからにしてちょうだい///」(18歳にもなってないなんて……私が手を出したら犯罪じゃない!!)
「そんなの当たり前じゃないですか!」(今の立場のまま結婚なんてできないですから!)
「そんな食い気味に言うほど真剣なの!?」(これって本当に本気ってこと?)
「真剣になったらだめなんですか!?」(組織抜けるの後押ししてくれるんですよね?)
「……ダメというか……その……えっと……まだ心の準備が……」(ダメよ凛花……相手は刹那ちゃん、、こ、高校生なのよ!!)
「……え?心の準備??やっぱり必要ですかね??」(なんで急にモジモジしてるんだこの人……でもまぁ、組織を抜けるなんて簡単じゃないよな……)
「あ、当たり前じゃない///い、いろいろとね!女の子には覚悟ってものが必要なの!!」(やっぱりこれってもしかしちゃう!?)
「ん?……女の子には?覚悟?なんの話です?」(幹部としての根回しとかならわかるけど……)
「え?……は??今私と結婚したいって……」
「いやいや、組織を抜けたいって話じゃ……」
「「……はぁ?」」
どうやらどこからか盛大に話がすれ違っていたらしい
というよりも俺と結婚するって話だと思ってあんなにモジモジしてたのかこの人……意外と可愛いところあるじゃないか……
「ぶ……ぶっ殺してやる!!!!!」
「ちょっと!凛花さん!待って!銃はやばいって!!俺悪くないし!!!」
「うるさい!あんたが紛らわしい言い方するからでしょうが!!撃たれて死ぬか一回記憶がなくなるまで殴らせなさい!!」
「理不尽すぎるでしょう!!!」
顔を真っ赤にしながら作戦準備で製作した銃を俺にぶっ放してくる。
最近作戦準備で一緒にいることも多くて気楽に絡める関係になってきたが思わぬところに地雷が埋まっていたらしい。
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「ごほん!それよりもトラップの方はうまくいきそうなのかしら?」
「その急な切り替えはなかなかに無理があるんじゃ……」
「なんですって?」
「いや、なんでもないです……はい」
「はやく報告してちょうだい」
「はいはい……現状作ったのは、設置型の粘着トラップに冷却機能を加えたものと、投擲タイプの行動阻害を引き起こすねばつきボールですね」
「……効果はどれくらいなの?」
「実際に試してみますか?」
「やるならあんたがやりなさいよ」
「……まだ怒ってます?」
「乙女の心を弄んだ報いは高くつくって相場は決まってるのよ」
「……俺は悪くない!!」
「そこの下っ端達!!刹那ちゃんに総攻撃!!やっておしまい!!」
「「イィーーー」」(ラブコメ野郎は絶対許さん!!)
「お前達うらぎったな!!」
「「うるせー!さっさとやられちまえ!!」」
俺は総勢10人ほどの下っ端仲間から自作したトラップを嫌というほど使われ敗北した。
くそ……寒さとねばねばで体が動かねぇ……
「「刹那打ち取ったりーーー!!」」
「よくやったわ貴方達!……それにしてもなかなか使えそうなトラップじゃない!刹那ちゃんもよく作ったわねお手柄よ!」
「んーーー!!んーーー!!」(はやく解放してくれ!まじで寒さで死んじゃうから!!)
「で?これどうやって取るのかしら?」
「「さぁ??」」
「んーーーー!!」(お前ら本当にバカだろ!!!)
あ、これ本当に死んじゃう……意識がだんだんと遠くなっていく……