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テストとは日頃の成果を試すもの

「ふぅ……なんとか間に合ったぜ」


 七瀬さんの拘束を見事に掻い潜った俺は時間ギリギリではあるものの、なんとかテストの開始時間前に学校に到着することができた。


「自転車を一時とは言え失ってしまうのは痛いが……進級と天秤にかける事はできないからな、うん……それに七瀬さんと出会うことが出来たんだからむしろ買い換える事になっていたとしても安い買い物だったと言うべきだろう」


 あれほどの美少女と出会うきっかけになったんだ。万が一の時にも自転車には胸を張って逝ってほしい。

 それにあの通学路を歩いていればまた七瀬さんに出会えるかも知れないからな、そう思えば自転車がない生活も悪くないかもしれない。


「おぉ〜し、それじゃあテスト始めるぞ〜……問題用紙と解答用紙を後ろに回してけ〜」


「さて、七瀬さんの事は一旦置いておいて、集中集中っと!」


 うちのテストは全教科複合型だからな……得意な分野の問題の比率が高いといいんだけど……まぁ、何にしてもやるしかないけどな!


「言っとくが、カンニングは発覚次第、即進級取り消しだ。場合によっては退学もあるからやるんじゃねぇぞ〜、それじゃあ始め!」


………………………………


 問い1

  ガスバーナーの炎で特定元素を用いた溶液を燃焼させると炎の色が変化する。一般的にLiを用いる事で赤色の反応が見られるが、今回は青緑色の反応が見られるようにしたいと考えている。この場合に用いるべき元素を答えなさい。


 炎色反応……青緑……どっかで聞いたなこれ……


 俺の頭の中にふと浮かんできたのはとある作戦の準備をするために急遽呼び出された時の倉庫の中での光景だった……


「うふふ……下っ端ちゃん達!今度の作戦には花火を大量に使うわよ!準備しなさい!!今回の花火はイメージカラーの青緑の花火にするわよ!火薬と銅化合物を混ぜて準備なさい!世界を母なる地球の本来の色!青緑に染め上げるのよ!」


 …………あ、銅(Cu)かこれ、、、



 問い2

  ある建物の高さを測るため、建物から離れた2地点A、Bを設定した。ビルの屋上をPとして、Pから地面Hに下ろした垂線PHに対し、AB=10m、∠PAH=60°、∠HAB=15°、∠HBA=120°であった。

この場合の建物の高さを求めよ。

 

 建物の高さ……これもどっかで聞いたような……

 そして再び俺の頭の中にはある日の作戦の会話が呼び起こされる……


「今回は隠密作戦だ!侵入までの経路を確認するためにまずは建物の高さの概算を出すんだ!正弦定理を使えば建物の設計図が事前になくてもおおよその高さが出せる!今の規格化された建物なら高さを出せば構造は何処も似たような形になってるから侵入経路や脱出経路も計画しやすい!覚えておけ!」


 あ、正弦定理かこれ……ここをこうして……こうして……次!!


 ……………………


 こうして俺は悪の組織での日頃の成果を十分に発揮した結果、いつも以上の高得点を叩き出すことが出来そうなのであった……


――――――――――――――――――――――――――


 テストが無事に終わりった開放感なのか、他学年がテストで部活動も今日が無いためなのか、あちらこちらの友人グループからこの後カラオケに行こうだの、スポッチャに行こうだのといった会話が聞こえてくる。


 俺もクラスメイトから声をかけられてはいるものの、朝一に盛大に事故してしまった自転車を回収、もしくは供養しなくてはいけないため誘いを断り足早に家路につく事にした。


 事故現場の近くにたどり着いた俺は物陰からひっそりと様子を伺ってみると、警察やヒーローが処理を済ませた後だったのか、自転車どころか事故があった痕跡が丸ごと消え去っていたのである。


「ちっ、例の物の回収は失敗か……奴が何処にあるか、どこに隠したのかを突き止めないといけないとは……手間を掛けさせてくれるぜ全く……」

「うふふ……下っ端ちゃんにしてはやれやれ系悪の参謀ムーブがサマになってるじゃない」

「っ!!びっくりした!!貴女は花火の時の……私服だと幹部ってすぐわからないものですね……あ、そうそう……テストではお世話になりました」

「テスト??一体なんのことかしら……まぁ良いわ、今日は私オフの日だから私服なのよ……それはそうとあの作戦で1番頑張ってくれた下っ端ちゃんが何か困ってるなら暇だし手助けしてあげるわよ」

「あぁ……別に大丈夫ですよ、朝方車に轢かれた時の自転車が残ってたら回収しようと思ってただけなので……」


 悪の組織の幹部にもオフ日というものは一応あるのだが、この人は趣味とかないのだろうか……それにこんな場所を完全私服で歩いてるってことは実はご近所さんだったのね……

 それはそうと幹部レベルの人がオフにわざわざ声をかけて手伝ってくれるほど俺は下っ端でも認知がされているらしい。


「あら、轢かれたって……その割にはずいぶん元気そうじゃ無い?」

「実は組織の服を制服の下に着たままだったので、盛大に吹き飛んだものの無傷だったという感じでして……」

「あら、ダメじゃない!組織バレは御法度なんだからちゃんと私生活では脱がないと……でも無事でよかったわ……誰にもバレて無いなら今日の私はオフだし聞かなかった事にしてあげるわ」

「ありがとうございます……」

「その代わり今度私の作戦がある時は必ず準備から手伝ってちょうだいね」

「あぁ……わかりました」


 この人の作戦は何というか、頭いいのにやってる事馬鹿みないな感じなので色々大変なんだよなぁ……


「いま下っ端ちゃん何か失礼な事考えなかったかしら?」

「いえ、とんでも無いです」

「あらそう?……まぁ良いわ。それはそうと自転車だったかしら……この辺りの事故の物証なら基本的に東署か東方協会のどちらかで保管されてるんじゃ無いかしら?」

「やっぱりそうですよね……」


 東署というのは東警察署の略称で、東方協会というのは、東町方面ヒーロー協会支部のことである。

 事故や事件に駆けつけたのがヒーローと警察どちらが先になるかで物証の保管先が変わるのだ。捜査自体は協同して行うのだが、どちらかが諸事情で到着が遅れた時に物が置き去りになってしまって物証が保管できないと困るという事で先に来たほうが処理の後保管するという暗黙の了解が出来ているらしい。


「どちらに行くとしても下っ端ちゃんはその組織の服は一応脱いどかないと……なんかあったらめんどくさいわよ?」

「ですよね……まずは着替えて、とりあえず東署から行きますか?」

「そうね、東方協会なんてできればあんまり近寄りたく無いものね……」


 悪の組織の幹部と下っ端がヒーローの本拠地に乗り込んで奪われた物を取り戻す!

 ……作戦で実施するならさぞ大掛かりな準備をして、幹部たちはワクワクが止まらないという感じの展開だな、うん……いや、数でも勝てない戦いに乗り込むとかそこまで幹部も馬鹿ではないか……


「でも乗り込んで自転車を力ずくで取り戻すみたいな展開なら東方協会のほうがワクワクするわね」


 どうやら馬鹿のほうの幹部だったらしい……

 ―――――――――――――――――――――――――――


 悪の組織機密情報②稼働日


 悪の組織では全員が休みなく働いているといったブラックなイメージだが、実際には幹部は交代制(作戦立案の週、準備の週、実行の週、振り返り+休暇の週)をとっているぞ!


 幹部の数が多いから各地で悪事を働いているが、ボスはしっかりと作戦計画を確認した上で実行の指令を出しているんだぜ!

 ボスがいつ休んでいるか……だと?

 経営者(管理者)には休みとか残業って概念が一般企業にすら無いのに悪の組織のボスにあるわけないだろ!!


 ちなみに幹部は作戦の成果で得た給料で休みの日に趣味をエンジョイしてるって噂だぜ!

 一部の幹部は自分は無趣味だからと言って街を徘徊して才能がありそうな人間を新たに勧誘したり、次の作戦の下準備に自主的に入ってる殊勝なやつもいるみたいだぞ!


 下っ端のことが知りたい?

 下っ端の学生は数人しかいないが普通に学校行ったり、成人してる奴らは平日は仕事場で真面目に働いてるんだぜ!

 まさに下っ端は社会でも下っ端働きって感じだな!!

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