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同期に会うとテンション上がる


〜刹那視点〜


 俺は相棒を駐輪場に停めてから氷室の待つ生徒指導室まで気分良く駆け抜けていった。

 入院中は電極をさして運動もしていたが、こうして監視などもなく走れるのは久しぶりで嬉しかったというのが大きい。

 そして、気分がよかった要因はもう一つある。それは氷室を直接ぶん殴れる日が来たからだった。


「おい!氷室!……お前随分と色々とやってくれたじゃねぇかおい!」

「ああ、誰かと思えば御影か……体調はまあ、見るまでもなく万全みたいだな……それにしても出会って早々に先生を呼び捨てなんてしてどうしたんだい?」

「お前がカメラの設置とか余計なことしてくれたおかげでこっちは大変なんだけど!!」

「ははっ、それは俺じゃなく凛花隊の人間に言え。そしてあいつらに協力してくれと頼まれただけの俺に当たるのは筋違いというものだろう」

 

「ぐっ……痛いところついて来やがって……だがお前にも責任がある!1発殴らせろ!!」

「やれやれ……恩人に向かってそんな態度とは……先が思いやられるな」

「あの件はマジで感謝してるが、お前に心配されることなんてねぇわ!」

「……仮にも今の俺はお前の先生だからな、いろいろかわいそうな生徒の将来を心配して何が悪いというのかな?」

「その先生が1番の悪役ってのが皮肉が効いてるぜ!とにかく1発殴らせろ!」

「ふむ……ならば構わない……さっさと向かって来るがいい!」

「歯を食いしばれ!って……くそ!……避けるな!!おら!!!」

「ふははっ!せいぜい当てられるように頑張るといい!……最も当たってやるつもりは微塵もないがな!!」

 

 俺たちはなんだかんだ久しぶりの再会に気分が上がり、組織の同期ということもあってはしゃいでいた……

 氷室は普段は冷静沈着な参謀といった雰囲気を漂わせているが、ごく一部の人間にはこう言ったノリのいい部分も見せている……というかそうでもなければ意味もなくカメラを設置したりしないはず……



「さて、戯れるのはそろそろ終わりだ。例の調査の件は動けそうか?」

「ぐっ……軽々と受け止めやがって……あーなんだっけ、転校生を調べろってやつだろ?」


 しばらく空振りしていた俺の拳を指一本で止めながら氷室は今回の本題について話し始める。

 

「覚えていたようで何より。あのマッドサイエンティストの元で入院と言っていたからな、頭をいじられて全て忘れてしまうのではないかと心配していたんだ」

「は?……えっ、まじで?あの医者そんなヤバいやつなの?」

「……すまない、蛇足だったな……忘れてくれ……本題に戻すぞ」

「おい……まぁ、とりあえず退院できたからいいけど……」


 俺はどうやらとんでもなくヤバい医者の元に入院していたらしい……それを聞くと、中身の見えない黒い袋の点滴、電極を挿しての運動と謎の栄養剤……そして2週間程度で傷が完治したこと……色々疑ってしまうところだ……


「三日月 武尊。俺が十中八九ヒーローだと疑っている男だ。本当にヒーローだったならばヒーロー名などのあらゆる情報がほしい」

「……あれ?7〜8割とか前言ってなかった?気のせい?」

「何のために監視カメラをあちこちに設置したんだと思っている……まぁ、肝心なところは掴めなかったが」

「……凛花さーーーーん!!ここに裏切り者がぁーーー!!」


 どうやらノリが良かったのではなく性格が悪かったらしい……人の金を使いまくって自分の目的を果たそうとするとは……


「失敬な……悪の組織の人間であれば当然の選択だろう」

「……お前絶対友達いないだろ……」

「ふっ、そんなものは俺の目的を果たすのには必要無いからな」

「あ、友達欲しいのにできないやつのセリフだ……」

「くっ……とりあえずだ、お前が三日月と接触しなければ話にならない。紹介でも何でもいい、とにかく関わりを持ってくれ」

「基本丸投げってことね……」


 氷室は少しだけ渋い顔をしたが、すぐにいつもの表情に戻り、今後の調査の方針を告げた。


――――――――――――――――――――――――――


 氷室との打ち合わせ?も無事に終わり、俺は教室へと向かおうと思ったのだが……


「まだこんな時間か……あ!だったら久しぶりに炭酸飲みたいな!」

 

相棒のおかげで予定よりも早く辿り着いたこともあり、ホームルームまではかなり時間がある。そして入院中禁止されていた炭酸飲料を久しぶりに飲めることに気づき、俺は急いで体育館の横にある自販機に向かった。


「さて、久しぶりの炭酸飲料……入院明けのこの一口はおそらくなによりも甘美な味がするはず……それはもう一生に1回味わえるかどうかと言うレベルのはずだ……」


「おい!貴様!!」


「幸いな事に体は少しの汗をかいた事でベストコンディション……コーラを一気に飲み干すことで得られる爽快感も捨てがたいが、クエン酸を注入して体を同時に労ってやるのもまた気持ちいいだろうな……これは悩むぞ……」


「聞いているのか!!そこのお前だ!!」

 

 俺はコーラを飲むか、レモンの風味と体に染み込む酸っぱさを堪能するかはたまたアメリカンチェリーの味を満喫するか非常に悩んでいた……それこそ誰かに話しかけられている事にも気づかないほどに……


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