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小物は小物らしく


〜足蹴視点〜


 普通のヒーロー達が年齢、家庭、体力、新しい世代の台頭……様々な要因で引退していく中、それでも戦い続けるオールドヒーローは正に金剛の身体に鋼の意志を持った存在と言える。


 そんなオールドヒーローとの対決……それは幹部の中でも戦闘に特化しているか、対ヒーロー戦の経験が相当豊富でなくては務まらないということを意味する。所詮直参下っ端でしかない俺達ではいくら集まろうとも万に一つの勝ち目もない。


 例の切れ者幹部候補は「新シーズンの魔法少女がピンチになった時に現れる初代魔法少女然り、劇場版で新ヒーローと協力して戦う歴代ヒーロー達然り、歴戦の勇士というのは現れるだけで全てを解決し、大団円へと導く我らの天敵と言える存在だ!」と言っていた。シーズンだの劇場版だのという意味はよくわからなかったが、オールドヒーローが街中で戦えば、老人から子供まで全員が一体となって応援する空気が生まれると言われればその通りだと実感できる。


 そんなオールドヒーローだが、幹部候補が言うには条件を3つは満たせば拘束でき、5つ満たせば倒せない相手ではないとのこと。


「イイ!(その条件はすでに2つは満たしている……あと1つも時間の問題だな……)」

「イィ〜(くくっ……計画通りってね……)」

「何を企んでいるのか知らんが、さっさとかかってこい!」


 ヒーローは独特の構えをしながらこちらを警戒しているが、背後には機密情報や資源の保管されている扉があるため安易にこちらに踏み込んできたりしない。

 油断をしないのは利口だが、たかが下っ端2人相手にそれは警戒しすぎと言うものだ。


「イィ〜(かかってこいって言われて素直にいくわけないんだなこれが〜)」

「イィ!(まぁ、素直に行かないだけで小細工はさせてもらうがな)」


 ーーパン!パン!ーー


 俺は天井に向けて刹那特製の弾丸を打ち込む。

 この弾丸は手元のスイッチを押すと膨大な煙幕を放出するもので、撤退の時の目眩しとして使用することができる。

 今すぐ発動はさせないのだが、こちらに到着すると合図があったため今のうちに仕込んでおく。


「そこまでだ!(オールドヒーローよ!)観念するんだな!!」

「イイ!(ようやく来たな!)」

「よく来てくれた!さっさとこいつらを片付けるぞ!」


 俺たちの背後から見覚えのある1人のモブヒーローが駆けつけた……そう、俺たちが追い剥ぎしたヒーロー……つまり、中身は直参下っ端である!


「俺は右のを片付ける!少しの間左のやつを足止めしてくれ!」

「(オールドヒーローの)足止めですね了解しました!!」

「イィ……(よし、手筈通り行くぞ)」

「イイ!(わかってるぜ!)」


 俺たちは焦ったような雰囲気を出しながら銃をオールドヒーローに向ける。

 オールドヒーローは銃弾など簡単に弾けると前傾姿勢になりながら腕を前に出しながら突っ込んでくる。


「イイ!(今だ!)」


 ーーバン!!!ーー


「なんだ!?」


 天井に仕掛けた弾丸を起爆させると大きな破裂音と共に煙が吹き出してくる。

 音を警戒したオールドヒーローは天井を見上げる。


 ーーコロコロ…………パン!ーー


「ぐあ!目が!!」


 前傾姿勢から視線を上に上げると同時に炸裂する閃光をまともに直視したオールドヒーローは一瞬だけ目が眩むが、落ち着いて扉を突破されないようにとバックステップをして距離を取る


「ぐっ、くそ!(ヒーローのくせに)逃げるな!!」

「イイ!(ちっ、少し距離が出来ちまったか)

「イィ!(問題ない!順調に事は運んでいる!)」

「無理をするな!撤退するなら逃しておけばいい!!」


 モブヒーローの声に反応してオールドヒーローは落ち着くように声をかける……


「でも(オールドヒーローを)逃すわけには!……ぐあっ!」

「大丈夫か!?」

「イイ!(設置完了!行ってこい!)」


 俺たちはモブヒーローの背中にトラップを貼り付けてモブヒーローをオールドヒーロー近くの煙幕の中に放り投げる。

 勢いよく転がっていくモブヒーローは煙に巻かれながら助けを求める演技をする。


「ぐっ、くそ!煙が!!ゴホッ!前が見えない!!助けてくれ!」

「視力は戻った!待ってろ!今行く!!」

「イィ!(安全装置を抜け!)」

「イイ!(了解!)」

「ゴホッ!何か背中に付けられた!自分じゃ届かない!取ってくれ!!」

「これだな!今すぐ取ってやる!動くんじゃないぞ!!」

「すまない!(こんな簡単な罠に引っかかってくれて)感謝する!」


 ーーカシャンーー


「おい!これはなんの真似だ!?」


 ーーバン!!!ーー


「ぐぁぁ!!」


 モブヒーローは背中の箱を取ってくれようとしたオールドヒーローの手に組織の幹部を拘束するために用意された特別性の手錠をかけ、背中を預けるようにして冷却トラップを起動させた。


「イィ!(ナイス!)」

「イィ!(あまり長い時間は稼げないからな!さっさと撤退するぞ!)」

「ははっ!すまないなヒーロー!しばらくそこで大人しくしていてくれ!準備を終えたら改めてお宝をいただきに参上する!」

「くそ!待て!!」


 今回の作戦の肝である3つの条件とは、

 1.ヒーローをその場に留めておく理由を用意する

 (機密情報や資源を守る扉の前から動けなくする)

 2.周囲の声援を送れる人員を排除する

 (協会最奥の細道は一般職員もいない閉鎖空間)

 3.油断させる。もしくは勝ったと思わせるような状況をつくり、一撃で仕留める【ヒーローは逆境に強いため長期戦は下策】

 (下っ端2人というすぐに制圧できる状況にモブとは言えヒーローの増援。油断も慢心もするだろう)

 

 俺たちはこうした状況を生かしてオールドヒーローを数十秒足止めすることに成功して悠々と撤退した。

 機密情報や資源を手に入れるとそれを逆境と認識したヒーローが復活する可能性もあるため、貴重なものは回収していないが、今回の作戦で使えそうなアイテムは他の場所から確保できたので概ね順調と言える。


「イイ……(凛花様や刹那は大丈夫だろうな……)」


 俺は与えられた役割を果たして一息つき、より厳しい役割を担っている仲間たちのことを想うのだった。

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