直参下っ端との計画
〜足蹴視点〜
俺の名前は足蹴郁弥九条凛花直参下っ端、凛花様に踏まれ隊の隊長を勤めている。
こう見えても直参設立メンバーで、NO.3に位置している。
踏まれ隊の活動や設立のきっかけと凛花様の魅力……これらはいずれ詳しく語るとしよう。
まずは今回の大規模作戦に置いて未来の同好の士である刹那から託されたミッションについて語るとしよう……
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俺は決起集会の後刹那に呼び止められた。
「おいコラ足蹴!1人で逃げやがったな!!」
「ふっ、刹那ではないか。一体何のことを言っているのかわからんな?」
「お前が凛花さんの写真押しつけて消えた件だよ!!」
「あぁ、あれか……あの場で見つかったところで叱られるだけだったからな、踏まれ隊の俺としてはそれは解釈違いだから隠れただけの事よ」
叱られ隊のサポートをしてしまったと後悔したことはよく覚えている。それにこの俺もあの場で叱られながら踏まれる未来が存在するなら喜んで刹那と共にあの場に残っただろう。
「解釈とかしらねぇわ!踏まれんのも怒られんのも一緒だろうが!」
「ふっ、これだからお子様は……まぁ、いずれその辺りはじっくりねっとり教えてやろうでは無いか」
刹那は全くわかっていない……凛花様は叱る時に距離を詰めてくる癖がある。状況によってはガチ恋距離とも言われるほど接近する。それを楽しむのが叱られ隊だ。
確かにそれを正道と言っても良い。だがしかし、ごく稀に踏みつけられるパターンが存在する!その希少価値の高さこそが俺たちを惹きつけるのだ。
踏まれながらもこっちを見ろと言う凛花様、そして下から見上げることでさらに美しさに磨きが掛かる御御足……
ああ……思い出すだけで喜びで体が震える……
「変態に教わることなんてねぇわ……それより、お前の逃げ足を見込んで頼みがある」
「なんだ?」
「東方協会の重要機密関連か、資源を奪取しに行ってほしい」
「……ふむ?今回の作戦は結局のところ足止めだと認識しているが?」
「ああ、それは間違いないが、それを軸にすると失敗する可能性がある」
刹那はバカだがアホじゃ無い。それは凛花様含め直参メンバーも認めている。だからこそ今回だけではあるが、幹部補佐として指揮を任せている。
その刹那が足りないというならそういう未来もあるのだろう。であれば手を貸してやることもやぶさかではない。
「ふむ、まあ構わないが具体的にどうすれば良い?」
「突撃と同時に最深部に突っ込んで機密や資源の奪取が目的だと誤解させてほしい」
「実際には獲らないのか?」
「重要機密や資源では無いが、協会なら必ず持っているある物を取ってきてほしい」
「ほう?」
「一応これも渡しておくから上手く使ってくれ」
「なるほど、確かにこれなら……考えたな刹那」
詳しく話を聞けば聞くほど今回の作戦の立ち回りに置いて俺の行動が重要だと認識できる。
そして刹那は俺が失敗するとは微塵も思っていないのだろう……こういうバカだが真っ直ぐ人を信じられるような所を凛花様も気に入っているのだろうな
「できるか?」
「無論必要なのであればやるとしよう」
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こうして俺と刹那は秘密の作戦会議を終えて作戦決行の日を迎えた。
「さて、いよいよか……」
「足蹴……大丈夫か?」
「俺たちナンバーズはもとより凛花様のために死ぬと誓った者達だ。覚悟などとうにできている……だがまあ、失敗したら凛花様に踏んでもらえなくなると思うと少し思うところはあるが……それでもこれほどの大規模作戦で散って凛花様の記憶に残り続けるのもそれはそれで悪く無い……」
「縁起でも無いこと言うなよな」
「ふっ、まあ俺も易々と失敗してやるつもりなど毛頭無い。任せておけ」
「じゃ、頼んだぞ」
そう言って刹那はトラップを周辺に配置しに行った。
「では俺たちも始めるとする!踏まれ隊!突撃!!!」
「「おおーーーーー!!!!」」
俺たちの目標は時間稼ぎのための人質の確保とヒーローの無力化……そして、予備のヒーロースーツと拘束手錠の奪取だ。
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「1階の制圧は叱られ隊と飼われ隊に任せて俺たちは最深部まで突っ込むぞ!」
「「了解!!」」
「建物の奥まで一直線に向かってる……まさか!あいつらの狙いは機密と資源か!?させないぞ!!」
「イィ!(足蹴さん!モブヒーロー1人が付いてきてます!)」
「イィ(都合が良い!この先トラップを設置して確保する!)」
「「イィ!!(了解!!)」」
モブヒーローは俺に誘い込まれてるとは気付かずに俺達の後を追いかけてくる。
人目につかない通りの角を曲がり、壁面にに刹那特性トラップを設置する。
「イィ!!(設置完了!安全装置外しました!!)」
「イィ!(よし!退避!)」
「待て!下っ端ども!機密は奪わせ……なんだ!?」
ーーパン!!ーー
「イィ!(起爆確認!ヒーロー拘束完了!!)」
「イィ!!(よし、作戦を次の段階に進めるぞ!)」
「「イィー(了解!)」」
俺たちは拘束されて動けないヒーローを気絶させ、スーツを剥ぎ取り、下っ端の1人と衣装を交換する。
「私は予備のコスチュームと拘束用の手錠をもらいに行ってきます!」
「イィ!(任せたぞ)」
「マスクを外してるので何を言ってるかわかりませんが、任されました!」
ヒーローに扮した下っ端を先ほどの路地を戻らせて目的の物資を探しに向かわせる。
俺たちは機密と資源を狙っていると言う痕跡を作るためにさらに奥に足を運ぶ。
「ここから先は行かせないぞ!すでに他の協会にも機密を狙いにきている奴がいると伝達した!ここを含めて機密を手に入れることは諦めるんだな!!」
「イィ……(くはっ、見事に騙されてやがりますね)」
「イィ!(普通ここまできた時点で狙いはそれだと思うだろうさ)」
「何をごちゃごちゃ言ってるか知らんが覚悟しろ!」
「イィィ!!(すでに貴様らは切れ物幹部候補と刹那の術中にはまってるんだよ!!)」
「イィ!(あとはタイミングを見て手はず通り1階まで撤退だ!)」
切れ物幹部候補の狙いはこうだ。
年齢を重ねているヒーローはそれなりに修羅場を潜ってきているが、長時間の戦闘は難しい。
だからこそ、そういう存在は若手ヒーローとは違い早々に出撃はせずに控えている。そして、協会に控えているので有れば、俺たちが協会を襲撃した時点で機密と資源を狙いに来たと予想して最奥で待ち伏せするだろう。
その警戒体制をこちらが読んでいれば、あとは機密を守る扉に近づく存在を認識させて各協会に連絡をさせることも可能だ。
ベテランヒーローからの注告の連絡となればヒーロー達は各地の襲撃は囮で協会を狙っているのが本命だと思うだろう。
そして、鎮安せずに協会を守ろうと引きこもれば、各地の被害は広がりヒーローの信用は落ちる。
各地の襲撃をヒーローが鎮安したところで、協会襲撃の報告があれば完全確保までする余裕はない。協会へ急いで引き返した場合、放置された下っ端は復活し、別の場所で悪事を行う。
ヒーローが協会に引き返す動きを取れば、仕掛けられたトラップが起動。さらに背後から悪の組織の追撃をくらいヒーローはすり潰されていく。
本命の作戦が決定してすぐにここまでの展開を読み、各幹部に準備をする様に動かした切れ者の幹部候補がいるのも驚きだが、その考えを汲み取った上で俺たちを動かしている刹那もなかなか優秀だ。
「貴様ら……なぜそんなに余裕そうな雰囲気をしている?」
「イィ?(さぁねぇ?とりあえずお手合わせ願おうかベテランヒーローさんよ!)」
「イィ!(所詮はオールドヒーロー!俺たち若者の相手が務まるかな?)」
刹那と凛花と時を同じくしてこちらでも古参直参下っ端と古参ヒーローの戦いが始まった。