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自然な出会いの演出は難しい


〜刹那視点〜


「バレないように……って言われてもな……」


 モニターを確認したから七瀬さんのいる場所はわかっているのだが、真っ直ぐ合流してそのまま連れ出すのは流石に不自然が過ぎるだろう。


「とは言ってもバイトでしたーって言ったら職場を見たいとか言われたらアウトだし……」

「困っているようだな刹那!」

「あ、あんたは……直参下っ端の……」


 どうしようかと困っていたら後ろから声をかけられる

 この声は凛花さんの直参の下っ端の人だったはず……だが名前がわからない……

 

「そうだ!九条凛花直参下っ端ナンバー003!凛花様に踏まれ隊隊長の足蹴郁弥あしげふみやだ!」

「ん?気のせいか?……今とんでもないこと言ってなかったか?」

「ん?あぁ、直参ナンバーの事か……001〜010までは設立メンバーのみに与えられるプレミアナンバーだからな、003と聞けば驚くのも無理は無い!」

「いや、そこじゃねぇーよ!なんか踏まれ隊だとか言ってなかったか……」


 なんだよ凛花様に踏まれ隊って……ドMなのかこの人……それに隊を組めるほど直参の下っ端にはドMが溢れてるのかよ……知りたくなかったわ。


「は?何を言ってるんだ??」

「そ、そうだよな……流石に気のせいだよな?」

「あの御御足に踏まれたい者が集う『凛花様に踏まれ隊』を知らない……だと?お前は同志ではないのか!?……まさか006の『凛花様に飼われ隊』か!?……いや、最近の貴様の行動からすると004の『凛花様に叱られ隊』に入る気なのか!!」

「ちょいちょいちょい!!!何言ってんの!?」

「ん?違ったのか?てっきり直参の仲間入りをして、配属先を決めかねているのかと思ったのだが……」

「全然違うわ!ってか初めて聞いたわその存在!」


 踏まれたいだの叱られたいだの飼われたいだの……変態が多くて凛花さんは大変そうだな……


「な、な……お、俺たち踏まれ隊の存在を知らない……だと……まさかPR不足だったか……いやしかしあの御御足を見れば誰もが踏まれたいと願うはず……これ以上俺たちは何をPRすれば良いんだ……」

「何を落ち込んでるんだか知らんが、俺は忙しいんだ……要件がないなら後にしてくれ」

「いや、待て!待ってくれ!せめてこのチラリもある秘蔵の凛花様生足写真集を見ればお前も気が変わるはずだ!」

「ゴクリ……詳しく話を聞こうか……」

「流石刹那……話がわかるやつだと思っていたぜ……」


 俺は七瀬さん一筋!!一筋だが……チラリもあると聞かれれば話は変わってくる……だって健全な男子高校生だもの!!

 

「せーつーなーちゃーん??」

「……り、凛花さん?」

「人の私服写真を持って外にも行かずこんなところでコソコソと何をしてるのかしらねぇ?」

「え、あ、あれ?足蹴はどこに……こ、コレは違うんです!お、俺ははめられたんですよ!」

「人の写真を勝手に持ってる時点で有罪よ!!成敗!!!」

「ぎゃーーーーー!!!」

「……全く……そんなに私の私服がみたいなら言ってくれればいいのに……」ボソッ


「ふっ……踏まれ隊に勧誘するつもりが叱られ隊のサポートをしてしまうとは俺もまだまだだな……」


 足蹴郁弥……踏まれ隊とか言ってたドMのくせに1人だけ逃げやがって……あいつにはいつか復讐してやる……


 ―――――――――――――――――――――――――――


「で、そろそろ本当に姫宮ちゃん来ちゃうけど刹那ちゃんはいつになったら出ていくのかしら?」

「そうは言ってもですね……パッと出て行ってバイトだって言う訳にはいかんでしょう」

「まぁ、そりゃそうよね」

「凛花さんもなんか考えてくださいよ」

「私は誰かさんを帰らせるからその分穴埋めに忙しいの」

「……なんかほんとすんません」

「ま、後は自分で考えなさいねー」


 そう言って凛花さんは颯爽と部屋に戻っていった。


「くそ……なんとかしなければ……」

「刹那とやらじゃないかどうかしたのか?」

「ちっ、またこのパターンか……次はどこの誰だ?」


 先ほどと同じパターンで声をかけられた俺は再び足蹴のようなろくでもないやつが現れるんじゃないかと警戒する

 

「ふっ、まぁそう邪険にするんじゃあない!困ってるなら助けてやろうじゃあないか」

「まぁ、そう言うなら……ってまじで誰っすか?」

「俺は組織のサポートスタッフ。名もなき海側の監視員だ!」

「は、はぁ……初めましての貴方がなぜ俺に?」

「今日は諸事情で早上がりすると聞いてな!これは釣り人を増やすチャンスではないかと誘ったのだよ!」


 放課後に釣りに行くために人の少ない倉庫街の海にやってきた……まぁ、確かに理由としては悪くなさそうだが……

 

「……で、本音は?」

「無論!貴様を釣りに誘うことであの美少女とお近づきになれる……ゴホン。……これから夕まずめの時間だからな、うん。沢山釣れると思うぞ」

「おいコラ、それで逃げ切れると思うなよ??」

「ちっ……だが貴様には時間がない。美少女と釣りデート(モブ付き)を取るのか、正体バレお説教コースどちらを取るんだ?えぇ?刹那くんよぉ?」

「……くそっ、確かに時間が無い今、あんたの提案に乗るしかなさそうだな……」

「俺は名もなき監視員だが、今日はとりあえず海野さんとでも呼ぶがいい!さっさと裏の岸壁に荷物を持って行くぞ」

「……わかった」


 どいつもこいつも七瀬さんにお近づきになろうなどと邪な考えを持ちやがって……指一本でも触れた瞬間サメの餌にしてやる……

 俺はピンチを切り抜ける言い訳を作ってくれた事に感謝しつつ、邪な監視員を監視するために気合を入れるのであった。


 ―――――――――――――――――――――――――――


 〜七瀬視点〜


「御影くん…どこにいるんでしょうか……」


 あれから倉庫の中を窓から覗き込んだりして学生のアルバイトを雇っていそうな場所を探し歩いているのですがなかなか見つかりません……


「そろそろ日没ですし……今日は諦めて出直したほうがいいですよね……」


 今のところ運の良いことに変な人に絡まれたりしていないけど、夜になればこんな場所を一人で歩いていれば何かのトラブルに巻き込まれることもあるかもしれない。ただ、いざ帰るとなればあの怒鳴り声がするような所まで一人で行かないといけないと思うと心細くなってきた。


「すぐに御影くんを見つけられると思ったのにな……」


 ザーー……バシャンーー


「ん?海の音?……ここまできたんだしせっかくだから少しだけ海を見てから帰りましょう……」


 この辺りの倉庫街は大型の船がコンテナを運んだりしている関係で海が近いのだったと思い出し、夕日の沈む海を見て気持ちを落ち着けてから帰ろうと歩き出す。


「海野さん!これ喰ってる!?喰ってるよな!?」

「……落ち着け!まだ前当たりだ、ヒラメ40、マゴチ20だぞ!本アタリが来てからあわせるんだ!」

ーー…………グイィ、グイグイィ!ーー

「今だ!刹那!合わせろ!」

「任せろ!!おらぁ!!!」

ーーーギィ〜ーーー

「掛かったぞ!!!この感じはヒラメじゃないか!?丁寧に巻いてこい!タモは任せろ!!」

「ああ!」


 倉庫の合間から海が見えてきて、左を向けばまさに夕日が沈んでいくところが見られたのだが、ずっと追いかけてきた人の声が右側から聞こえた事で咄嗟にそちらを向いてしまう。

 後ろを向いていて顔は見えないけど、私は御影くんだとすぐに確信できた。


「御影くん!!やっと会えました!!!」


 こんなところまで勝手に後を追いかけてきたことを御影くんは怒るだろうか……

 それとも学校と同じような優しい笑顔で振り向いてくれるだろうか……

 私は一人でいたことの心細さからなのか、気がついたら彼に向かって走り出していました。

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