第5章 滅びの雷鳴
ジュノアは即座に応えた。
「つまり、ウォールはこれまでと違うものになった。そうですね?」
「おっしゃるとおりです。この変化は止まるのか、それともさらに変動していくのか、はっきりしません」
クラカーナは重い声で言った。
「ガーランドのマギア・チームは、どう予測しているのか、女王代理」
「そう簡単ではありません」
「ヒロ・マギアはナノマシンとやらに精通していると聞いたが、扱いにくいもののようだな。グウィネスは玄街コードを開発したくせに、ナノマシンについて我々についぞ語らなかった。そうだろう、ジュノア」
「カレナードがここに来なければ、ミナス・サレ市民はコードがナノマシンを操るシステムだとさえ分からなかったのです。ガーランド・ヴィザーツはナノマシンの薄氷を踏みながら、コードの使い方を見出した。今になってそれを知りました」
カレナードは首を振った。
「8年前、私はアナザーアメリカンの孤児でした。誕生呪が起動コードの別名と知ったのはガーランドに乗ってからです。最初の1年は、コードの成り立ちを知って震えたものです」
「ええ、私たちはまだまだたくさん学ばなくては。そうではありませんか、父上」
「儂も老骨に鞭打つか。ボケる暇がなくて良いぞ、はっはっ!」
翌朝、空に稲妻が走った。うす暗い夜明け時、臨界空間の上の面を太鼓の皮にして叩いたような雷鳴がとどろいた。凍てつく空気の中、ミナス・サレ市民はとび起きて外に出た。
カレナードとジュノアは調停の草案作りで朝堂脇の仮眠室にいた。上着を引っ掛け、広場から塩湖を見た。遠くから地響きが来た。血の気が引くような恐ろしい音が、塩湖の向こうで激しく鳴っている。
ジュノアはカレナードの腕をつかんだ。彼女の指は震えていた。
「あれは……あれは何なの。サージ・ウォールに何が起こったの……、ミナス・サレはどうなるの」
雷は四方八方で光を飛ばし、大きな振動が都を襲った。塩湖の向こうから迫る異様な音に人々は恐怖し、茫然と西の彼方を見ていた。クラカーナ・アガンは市民に呼びかけた。
「落ち着くのだ、我が領国民よ。これは天変地異のたぐいではない。サージ・ウォールのエネルギーが変動したものと考えられる。観測艇を出すゆえ、朝の腹ごしらえをして報告を待つのだ」
市民たちはすぐさま観測飛行艇が出るのを見守った。2時間後、震える声で報告が来た。
「サージ・ウォールが動いています。ミナス・サレに向かって嵐の壁が少しずつ動いています! このままでは我々の城が、我々の領国が消えてしまいます! 領国主殿ッ!」
カレナードはクラカーナの横で言葉を飲み込んだ。
「グウィネスが反射砲で狙ったのは…この事態だ。彼女の望みはアナザーアメリカそのものの崩壊。すべての領国が滅ぶ……ガーランドも共に…」




