第5章 セバン高原戦・3
グウィネスは軽く笑った。
「好都合ではないか。我々を皆殺しするつもりはないのかもな。おかげで新しい反射砲を据える時間がある。メジェドリンが崖上に出ている。艦隊戦になろうとも反射砲で奴らを木っ端みじんにしてくれるわ」
「そうですな、混乱は収まりつつある。工廠と兵站が短時間で仮説ケーブルを張った。後で褒めてやらねば」
「ああ」
グウィネスは答えたが、口に出さない言葉があった。
「後があればの話だ。マリラは私を捕らえる気だ。夜が来る前に地上軍のみで未制圧なら、爆撃に踏み切るだろうよ」
黒光りするメジェドリン艦は崖上で、セレンディ艦とマンダリン艦を両脇に従えていた。
イダ艦長は乗員に向けて放送した。
「こちらはイダ・タシュライだ。玄街ヴィザーツが勝利する日が来た。今朝の混乱の中、よく乗艦してくれた。各自、昨夜の酒は抜いただろうな?
これより我々が培った全てをガーランドにぶつけてやろう。
本艦は第2反射砲で遠距離射撃を2度行い、その後、ガーランド艦隊を至近距離で狙う。アガートが撃った時のようにガーランド母艦が邪魔をしてくるだろう。そこがチャンスだ。向こうの位置を特定し、艦を反転させようとも、浮き船を沈める。我々の任務は重い。重いがゆえに果たさねばならない。玄街の力を知らしめるのだ!」
玄街戦艦のあちこちで足を踏み鳴らす音がこだました。イダは号令した。
「反射砲、用意!」
ミナス・サレの市民たちは3度のビーム攻撃に驚いたが、ジュノア・アガンとタジ・マレンゴの全城放送でしだいに落ち着きを取り戻しつつあった。
「副領主殿、本当に実害はないだろうか」
「マレンゴ、黄鉄回廊はほんの少しだけ曲がっていて、どの角度からビームが入っても塩湖上を通過するだけよ。それより回廊内の設備が焼けてしまったわ。
レニア回廊まで焼かれたら、大半の飛行艇が帰ってこれない。ルビン・タシュライと連絡を取って戦況を確かめたい。カレナード、どう?」
本城の執政室に来ていたカレナードは手短に言った。
「90分前にセバン基地がオハマ1と2に戦闘に加わるべしと緊急連絡をよこしました。朝一番の兵舎襲撃で兵員数に不安があると見ます。戦況を確かめなくては」
マレンゴは続き部屋の通信室に行った。すぐにルビンの声が返ってきた。
「艦隊戦が始まっている。大型輸送艇に玄街捕虜を200人ほど詰めこんでミルタ前線基地へ送る。5分前に第1陣が出た。
ミナス・サレ軍は大きく二手に分かれている。白幇戦闘艇と緑幇戦闘艇はセバン基地の南で地上軍を守っている。私のいる黄幇軍は基地西方でガーランド戦艦の援護だ。
なかなか手ごわいが勝つさ。反射砲を潰せば、あとは戦力の差で押して降伏させる。
こちらはガーランド母艦を加えて6隻の戦艦だ。
向こうは今のところ3隻で、赤いアガートはまだドックから出てない。あとは随時通信兵に報告させる。オンヴォーグと言ってくれないか、マレンゴ」
「わ、分かった、オンヴォーグ、ルビン・タシュライ!」
傍でジュノアが微笑んでいた。
「あなたの口からその言葉が出るなんて。人は変われるものね。さあ、ミナス・サレ市民に新たな仕事を。じっとしていると不安になるわ。臨戦体制に移行します」
カレナードが付け加えた。
「移行の宣言をクラカーナさまにお願いできませんか。領国主さまのあのお声がよろしいでしょう」
午前9時20分、メジェドリンは大きく回頭していた。雲の切れ間から姿を現したガーランド母艦に狙いを定めつつあった。グウィネスは最初にマリラの船をやるつもりだ。
「ガーランド・ヴィザーツどもの目の前で母艦をズタズタにしてやれ。戦意喪失させてくれるわ。アガートの準備はまだか!」
標準合わせの間にも、トール・スピリッツが反射砲を潰しに来る。それを追い払う戦闘機はどれもメジェドリンの精鋭たちだ。マンダリンとセレンディの対空砲火も激しく、ピードたちは苦戦していた。
ホーン・ブロイスガーがビスケー艦に連絡していた。
「崖下のドックから血の色戦艦が急速上昇中。うあッ!」
アガート艦の後ろ甲板の小型反射砲が光を噴いた。同時にメジェドリンの反射砲が加わり、2条の紫色の光がガーランド母艦へと昇っていく。あまりの眩しさに雪原にいる者は目を閉じるしかなかった。
トペンプーラは巧みな操船でメジェドリンのビームを避けたが、もう一つのビームは第二甲板の中央付近を吹き飛ばした。




