表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/134

最終章 魔女の復活

 白いものはゆらりと形を変え始めた。石膏泥漿のような液体がおびただしく垂れた。形は次第に高い帽子をいただいた女、眼窩だけが黒い女、消滅したはずの玄街の魔女となった。野太い声が出た。

「はぁぁぁ、春分……過ぎたというに、はぁぁぁ。マリラ……マリラァ、なぜここに来ない。来れば命を取ってやったに。ハァーッ!」


 女官の盾に鋭い一撃があった。執務室の奥の扉の一部だった。グウィネスの白い手には引きちぎられた扉の取っ手があり、今度はそれが盾に当たった。

「こちらベル。グウィネス・ロゥも人外として現れました。相当の怪力あり。銃を使います」

マリラは言った。

「用心しろ」


 ベルの銃弾はグウィネスの白い体にめり込み、すぐに同じ威力で返ってきた。盾にカンカンと火花が散った。ベルは報告を続けた。

「ワイズ・フールはグウィネスの傍から離れません。魔女の足元は床から離れず、ゆっくり滑るように移動。まるで床から生えているようです」


 司令部ではトペンプーラがマリラの通信を受け取った。

「衛兵小隊は兵站勤務を解き、そちらに送ります。武器は、何ですって、鏑矢?」

「トペンプーラ、奴には通常の武器が効かぬと思え。効くとすれば、霊的な何かか、コード類かもしれぬ。作戦終了まで女王区画に封じるぞ。カレナードには知らせるな、作戦に集中させよ」


 作戦開始から40分過ぎていた。

 トペンプーラはホワイエの隅に衛兵を招集し、司令艦で数少ないミナス・サレ出身者とマイヨール女史も呼んだ。

「女王区画にグウィネスと道化が出現し、女王と女官が対峙中デス。完全に怪物と化し、作戦を妨害するでしょう。女王は霊的な何か、あるいはコード類が必要と言いました。皆さんの知恵を借りたい!」


 対策が練られた。ミナス・サレのコード遣いはシド・シーラ医師を呼ぶべきと言った。

「彼はあらゆるコードに通じています。グウィネスを形成しているのが玄街コードなら、おおいに助かります」

 マイヨールは「有効か否か分からないけど」と前置きした。

「魔女の魂がウーヴァから力を得て復活したのね。悪霊を払う詠唱、あるいは呪い返しの類が効くとでも?」

「そうなりマス。マイヨール先生、歴史学者の勘でなんなりと引き出してください」


 懇願しながら彼はフロリヤ号に命令した。

「大至急、オハマ2からシド・シーラを司令本部に連れてきなさい! 30分以内に! 緊急事態につきオハマ2には私から連絡しておきマス!」


 マイヨールは悪霊払いの詠唱をいくつか、加えて「非常時のみ用いる呪いの詞」を挙げた。

「狂った魔女が自滅すれば、女王を煩わさずにすむでしょう。強力なの力を持つ者に任せたいわ」

 ミナス・サレの若者が言った。

「女史、あなたはやれるのでは?」

 女史は首を振った。

「トペンプーラ、司令艦員のデータは頭に入っているわよね。今すぐ思い出して! 巫者ふしゃを!」


 マイヨールが呪いの詞を書きつける間に、トペンプーラはカレナードの傍に控えているニアをホワイエに連れ出した。ホール内の200スクリーンに、赤い点が均等に並び始めた。発声までは、まだ時間がかかりそうだ。


 ニアは落ち着いていた。

「極秘事項ですか」

「聡明ですネ、ニア・キーファ。そして、外れ屋敷随一の巫者でもある。ここに居合わせたのは奇跡です。マリラ女王を助けて下さい」

「何をすれば?」

ニアはマイヨールが渡した詞に目を通すや、支度を始めた。

「2分下さい。控室から道具を取ってまいります」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ