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『ギルド』による派遣型異世界救済システムが始まって長い年月が過ぎていた。
派遣依頼を生業としている彼らを『救世主<メサイア>』と呼ばれている。
もとはこの仕事に対して名称などは存在していなかったのだが、どこかの世界にて彼らをそう呼んだ者がいたらしく決まったらしい。
メサイアたちによる目覚ましい活躍により運営は軌道に乗っていたと思われていたが、深刻な問題が一つ。
「・・・減らないし増えるし...どうなっているんですか!」
『ギルド』から遠く離れた場所でエルがため息と同時に愚痴をこぼした...
机をこぶしで叩いた衝撃で机上のグラスの中身もこぼれた。
もともと『ギルド』を創造し、世界の運営がうまくいくようになってきたタイミングで
エルが保有していた世界の救済は間に合うはずだったのだ。
しかし、そんなエルの目覚ましい努力の裏では悲しいことに神たちによる遊びは続いていたのである。
「よし、また一つできたぞ!今度のは自信作だ!」
世界を作っては放置する迷惑神の一人がつぶやいた、『ナス』だ
この迷惑な神<ナス>は、端的に言って阿呆なのだが謎の人望を一部の神から受けており
世界創造ブームの火付け役となっていた。
頭を抱えるエルの悩みの種ともいえる男であった。
― 時をさかのぼることXXX年前 ―
エルは『ギルド』を創造するにあたって問題の根本からの解決を図っていた。
「ナス様、これ以上世界をお創りになるのはおy」
エルの発言を最後まで聞くこともなく
「承知!」
と、ナスは一言返事を返した。
もともと飽き性で知られている神の説得は苦労しないとは踏んでいたエルであったが
あまりの即答に少し動揺をしていたが同時に安堵もしていた。
(やはり根は神なのだ、話せばわかってもらえた・・・)
「ありがとうございます。」
そっと胸をなでおろし、ナスに向かって感謝を告げその場は幕を閉じた。
はずだった・・・