表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/96

神に背きしモノ③

無限収納。響いたその力の名。

それに、神々は認識する。

ジークが、自分たちの敵だということ。

そして、これまでの【神に背きしモノ】と比べ明らかな異端だということ。それを、明確に。


「ジーク」


「オマエを我々の敵だと認識する」


わたしたちの敵だと。断定するわ」


ジークを見定め、彼等は力を行使する。


因果律の操作。

現実改変。

存在ジークそのものの否定。

そんな、およそ人の境地では到達しえない神の敵意チカラの行使。


だが、ジークはその全てを【収納】する。


「収納する」


その短き意思の表明で。


ジークの内。

その中に広がる無限の闇。

そこに、彼等の力は収納されていく。

有無を言わせず、たったひとつも例外もなく。


「なぜ、通じぬ」


「何故。我らの力が人に通じぬ」


「あり得えてはならないわ。人如きに……こんな。こんな、馬鹿げたこと」


響く声に宿るは、焦燥。

そしてそれは、神々が今まで抱いたことのない感情だった。

そんな神々に、ジークはもはや言葉をかけることはしない。


静かに。

神々に対し、手のひらをかざすジーク。

その瞳に宿るは、【無限収納】の力の胎動。暗く冷たい闇の瞬き。


それに、なおも神々はジークに力を行使し続けようとした。


たった一人の人間。

永遠と呼ばれる時の中。自分たちが、矮小と罵った【人】という存在。

その存在に、【神】が畏れを抱く等、あってはならない。


「矮小なる人の分際で」


轟く、神の声。


「畏れを抱くべきは、我らではなくキサマ。その頭を下げ、我らを崇めるのだ」


「さすれば、此度の不敬」


「不問にしてやってもよいぞ」


どこまでも不遜で。

どこまでも、威圧的。


「オマエらも同じだ」


勇者共あいつらと同じだ」


神々の姿。

それにジークは、重ねる。

勇者アレンとその仲間。そして、今まで自分が収納してきた数多の人々の姿。

それを、己の脳内で重ね合わせる。


「同じ?」


「我らと人を同列に」


語るでない。


響かんとした、そんな神々の言葉。

それをジークは、【無限収納】の力をもって遮った。


「収納する。神という存在を」


瞬間。


神々は、闇に包まれそこから消失。

ジークの中。

無限に広がる闇の中に収納されてしまう。


呼応し、空間が揺らぐ。

それは、神々が消失してしまったことによる神の空間の消滅と、神の掌握していた【全ての世界】の消滅を意味していた。


その中で、ジークは呟く。


「収納する」


「この空間から元の世界への次元を」


漆黒の闇。

それに包まれ、消滅に向かうべき空間から己を収納するジーク。


そして、ジークは次元を収納し、元の世界へと戻っていったのであった。


神に背きしモノ。ではなく、ジークという名の一人の存在として。

【無限収納】の力。

それを持つ、一人の人間という存在として。元の世界へと。


〜〜〜


神が存在を無くした世界。

そこに戻り、ジークは目を開けた。


視界に広がる、景色。

それにジークは、途方もない違和感を覚える。


夕焼けに染まった、色のついた石畳。

そして、水が噴き出す奇怪な形をした造形物。

光の灯る長細い柱。


同時に吹き抜けるは、風。

その中で、ジークは声を聞く。


「ねぇ。この世界に神様って居ると思う?」


「うーん。わかんない」


「実際に居たらさ。どんなお願い事する?」


「えーと、ね。お金持ちになりたいってお願いする」


「ははは。この【現代の世界】でお金持ちになりたいなら、神様になんか頼らなくてもさ」


ジークの側。

そこを会話を交わしながら通り過ぎる、二人の見慣れない装備をした女子。

その姿を仰ぎ見、ジークは呟く。


「神の。存在しない世界」


己の胸中。

そこでそう呟いたのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ