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別れ

ジークの力。

それを自らの身をもって受け、ネクロは嬉しそうに声を紡いでいく。


「やはり、貴方は」


ネクロの瞳。

そこから消失していく、命の灯火。


「このせかいを。おさめるべき」


「そん、ざい」


声を響かせ、仰向けに倒れ、ネクロはその命を終える。

しかしその表情はどこか恍惚とし、まるで最初からこうなることを望んでいたかのようだった。


倒れ伏した、ネクロ。

その側に歩み寄りーー


「俺は、この世界に興味はない。おさめるべき? てめぇの願望を押し付けてんじゃねぇぞ」


そう吐き捨て、ジークはネクロの身体を収納。

同時にその力を取り込んだのであった。


そして身体を反転させる、ジーク。


そのジークの視線の先。

そこには、女性に寄り添うソフィの姿があった。


ゆっくりと。

ジークはソフィへと近づいていく。


収納の力。

それを使用せずに。


〜〜〜


自らの眼前。

そこに佇む、ジーク。

その姿を見上げ、ソフィは涙を拭う。


そして、声を発した。


「ジーク」


「ソフィ。まけない」


「みんなの分も。がんばる」


「……」


ジークが村人たちを殺めた思い。

それを悟り、儚くジークに微笑むソフィ。


そのソフィの心を痛め続ける姿。

それに、ジークは決意した。


いくら、ソフィの心の傷を収納したところで。

何度も、収納の力でソフィの心の痛みを無くしたところで。

これから幾度となく、収納の力でソフィを救ったとしても。


自分と共に居る限りーー


ソフィは、また傷つく。


だとすれば。


「収納する」


響かんとする、ジークの決意の宿った思い。


それにソフィは呟く。

ジークの思い。

それに寄り添い、呟いた。


「ジーク。また、いっしょに」


「おはなのかんむり」


立ち上がり。

ぎゅっと、ソフィはジークの手のひらを握りしめる。

あの日の笑顔。それを浮かべながら。


「ソフィ」


膝を折り、ジークはソフィを抱きしめる。

優しく。これまでの思いを吐き出すようにして。


「ジーク」


「ソフィはずっといっしょだよ」


「ずっと。ずっと」


「いっしょだよ」


響くソフィの温かな声。

それに唇を噛み締め、ジークは表明した。


「収納する」


「ソフィが」


「イタみを感じる世界線を」


染み渡る、ジークの声。

呼応し、ソフィの身が眩い光に包まれていく。


その中で、ソフィはジークの頬に口付けをする。


ぽろぽろと涙をこぼしながらーー


「ジーク」


「だいすきだよ」


そうジークへの思いをその小さき胸の中で呟きながら。


イタみ有る世界から消える、ソフィ。

その余韻を噛み締め、ジークはゆっくりと立ち上がる。


その目に涙は無い。


あるのは、


「俺だけで。終わりにする」


己に対する揺らぎなき覚悟と決意。

ただそれだけだった。

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