アレンの死②
カレンの命。
それにより結界の張られた、人避けの空間。
世界に一時の平穏をもたらし、存在の心に負の感情が宿らぬ為の、カレンの意思。
しかし、そんなモノ。
アレンには関係のないこと。
闇を纏い、ジークに対する殺気のみを宿し、アレンはソコに現れる。
その手に血の滴る剣を握り、「殺す」と淡々と呟きながら。
「魔聖。てめぇにも俺の邪魔はさせねぇ」
吐き捨て、アレンはカレンの結界に手のひらをかざし、消失させる。
瞳孔を開き、「奴は俺が殺す」と吐き捨てて。
しかしそこに、カレンの従者たちが現れーー
「アレン。カレン様の意思に従えば、世界は元のカタチに戻る」
「今は堪えよ。お前もまた、世界で私欲を肥やしたいと思っているのだろう?」
「天秤にかけるのだ。一時より、これから先のことを」
しかし、アレンには通じない。
「従者」
染み渡る、アレンの意思。
同時に、従者たちは闇を帯び吹き抜けた風と共にその身を刻まれる。
ぼたぼたと降り注ぐ、肉片。
変わらぬ、アレンの表情。
そしてアレンは、無機質にその歩を進める。
一歩、一歩。
ただ一点に。ジークに対する殺意をその胸に渦巻かせながら。
〜〜〜
「ゴミ」
響く声。
それにジークは、応える。
「収納する、距離を」
視線の先。
そこに佇む、闇を帯びたアレンの姿。
それに意思を固定して。
漆黒に包まれ、ジークはアレンの数歩前に現れる。
それを、アレンは嗤う。
「こいよ、ゴミ」
「あのクソ餓鬼のお守り。それをまだ続けたかったらな」
ジークの後ろ。
そこに佇む、廃れた家屋。
その中にソフィを【視認】する、アレン。
「あの、魔聖の仕業か? くだらねぇことしやがって」
「魔聖様はてめぇのご機嫌取りに必死みてぇだな。なにを企んでいるかはしらねぇけど」
アレンは鼻で笑う。
そのアレンの姿。
それに、ジークは感じる。
自身と同じ気配。
それをはっきりと。
「収納する」
響かんとする、ジークの意思。
だが、アレンは動じない。
「覚えているぜ」
「なにがって? てめぇが俺の身でなにをしたのかをな」
崩れぬ、アレンの笑み。
そして更にアレンは言葉を続けた。
「もう分かるだろ」
アレンの言わんとすること。
それをジークは、悟る。
アレンの目に宿る、透視と千里の瞬き。
それは、ジークが収納せしガルーダの力。
即ち。
「てめぇの収納だ。てめぇが俺の身を使ったおかげで、な」
響く、アレンの言葉。
そこに込められているのは、ジークに対する蔑み。
だが、ジークは表情を変えない。
「それがどうした」
吐き捨て、アレンの眼前に現れるジーク。
そして、拳を固め、「収納してみろよ」と吐き捨て、アレンの顔面に天賦の拳を叩き込んだのであった。