表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/96

剣聖①

ジュリアの死。

それを見届け、響くは小声。

その小声は震え、まるで狩人に追われる獲物の鳴き声そのもの。


「じゅ、ジュリア様。ど、どうしてこのようなことに」


「ゆ、勇者様。お助けください、勇者様。闇が、闇が。世界を包んでしまい、ます。しゅ、終焉。世界の終焉。叙事詩に書かれていた、終焉。これが、そう。なのですね」


そんな譫言のような呟き。

それに、ジークは仰ぎ見る。

真っ二つ遮断された石柱。その方向を。


ジークの視線。

イライザはそれに気づく。

そして、悲鳴をあげた。


「みッ、見ないでください!!」


半狂乱になり、石柱の陰から飛び出すイライザ。


「助けてッ、お助けください!! 誰かッ、誰か!!」


響く、イライザの声。

それは反響しーー


刹那。


めきッ


「ぁぐっ」


捻転する、イライザの両腕。

同時に響く、幼く無機質な声。


「ダレも助けてなんかくれない」


「ダレも、誰も」


「ワタしもそう。ダレもわたしを」


身を起こす、少女モナ

揺れる青髪。そして、イライザ見据える双眸に宿るは闇。

その姿。

それに、ランスロットは剣を向ける。

倣い、レオンとコルネもまた少女へと意識を向けた。


めきッ

ごきッ


「た、助け……だれか」


手を捻られ、ふらふらとジークの元へと歩み寄るイライザ。

その顔に生気はない。

あるのは、痛みと得体の知れぬ力に弄ばれる絶望に満ちた表情のみ。


ぶちぃッ


捻り切られ、落ちるイライザの腕。

それでもイライザは、歩みを止めない。


その瞳から涙をこぼし、「勇者様。ゆうしゃ、さま。たすけ、たすけて、ください」と、霞む視界に佇むジークに勇者を重ね、声を響かせるイライザ。


「たすけ。たす、け」


しかし、それを遮るはジークの意思。


死に体のイライザ。

それに手のひらをかざし、ジークは呟く。


「収納する。命を」


ジークの数歩先。

そこで動きを止め、瞳から光を無くすイライザ。

そして、糸の切れた人形のように、イライザはその場に崩れ落ちる。


呼応し、響く嗤い。


その嗤い。

それは、人のソレではない。


モナから距離を置く、レオンとコルネ。

二人はジークからモナへと意思を向け、その表情を引き締める。


「モナ。といったか?」


「ぜんぶ、ウソ」


ランスロットの声。

それに呟く、モナ。


「ぜんぶ、ウソ。ぜんぶ、ぜんぶ。ウソ。ゆうしゃに頼まれたなんて。ぜんぶ、うそ」


くるりと身を翻し、モナは両手を広げる。


「ワタシは、闇」


「ジーク。ジークと同じ、闇」


「ゆうしゃのなかま。わたしをコロしたモノたちの死」


「それで、それで。ワタシは」


瞬間。


「遮断」


短き一言。

それと共に、剣聖の一太刀がモナへと放たれる。


軽く振るわれた、青白く輝くランスロットの剣。

それは白銀に彩られたーー


あらゆるモノを遮断せし剣聖の力。


それにジークもまた、続く。


モナに手のひらをかざし、「ゴミ」と吐き捨て、ジークはその手に握った漆黒の剣を投擲したのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ