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ジュリア③

「今度はソレか?」


ジークに殺された勇者アレン

その記憶を共有し、アレンは闇に染まったジークを見据える。


「前とはまた違う戦法か? まっ、少しは楽しめそうか」


純白の光。

それに包まれ、アレンはジークから距離を置く。

その表情は未だ余裕に満ち、ジークを自分の脅威とは感じていない雰囲気を醸していた。


武神の力。

それは、戦いのみに特化した神の力。

前のアレンが女神の加護だとすれば、今のアレンはまさしく武の化身。


「ハンデだ、ゴミ。片手だけで相手をしてやる」


響きわたる声。

その余韻のみで、世界を震わせるアレン。


「メイリン。半端な神。んなモンの力、今の俺に比べたらーー」


「その辺に転がる石ころ以下だ」


吐き捨て、アレンは軽く片手を振るう。


瞬間。


漆黒に包まれたジークの身。

そこに、武神の力が打ち込まれる。

目に見えぬ拳。そのカタチをとって。

一発、二発。いや、数十発。一撃、一撃が世界を滅ぼすその武神の力。

それが、たった一人のジークに対して。


途方もない衝撃。

それが巻き起こす、閃光。

それに周囲は純白に包まれ、明滅する。


それを嗤う、アレン。


「どうしたッ、ゴミ!! 突っ立てるだけじゃ、意味ねぇぞ!!」


響くアレンの声。


「せめて原型は留めてくれよッ、最後に一発てめぇの顔面を殴りてぇからな!!」


ジークを嘲けり、アレンは三度、片手を振おうとする。

だが、その間際。


「返すぞ、ゴミ」


そんな声が響き、アレンは目を見開く。


【収納物】

 武神の拳×98→0


ジークに叩き込まれたはずの武神の力。

それが収納され、そして取り出される。


「てッ、てめぇ!!」


目に見えぬ、武神の力。

ジークに叩き込まれたその力。

それがアレンへと打ち込まれる。


二歩、三歩と後退り、武神の力を避けるアレン。

その目を武神の目にし、あらゆる攻撃を見切るれるようにして。


「……っ」


歯を食いしばりーー


「それだけか、ゴミ」


無傷でそう声を発した、ジーク。

その漆黒に包まれたジークを、アレンは睨む。

そして、声を響かせようとした。


「少しはやるようだな。まっ、これで終わるとは俺も」


アレンの言葉。

それを遮る、ジークの声。


「シね」


フェンリルの力。【万物捕食】。

アレンに向け、ジークは収納せし魔物の力を行使する。

視線を向け、その瞳を赤く瞬かせながら。


アレンを覆う、影

否、それは影ではなくフェンリルの捕食の意思。


万物を喰らうーー


めきッ

ゴリッ


闇に包まれ、咀嚼されるアレン。

武神の身。

それさえも、万物捕食の前では餌に過ぎない。


アレンの絶叫。

それさえも、【万物捕食】は喰らう。


時にして、数十秒。


アレンと武神の力。

それを喰らい尽くし、ジークは無機質に踵を返す。


【収納物】

 武神の力


その力さえも、己の中に収納して。


こちらを歯牙にもかけず、先へと進むジーク。

その背を見つめーー


「闇。漆黒の、闇。収納、フェンリル。じ、ジーク。怖い。こわい、です」


ジークの圧倒的な力。

それに震え声を漏らす、イライザ。


「お、お伝え。お伝えしなければ、剣聖様に」


胸中で呟き、イライザは小刻みに震えながら【転移】を行使する。


ジュリアと剣聖。

その二人が居る都へと。


「せ、世界がほんとうに終わってしまう。ジーク。ジークの。あの、ヤミの手によって」


恐怖を押し殺し、絶望のこもった思いをその心の中で呟きながら。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「せ、世界がほんとうに終わってしまう。ジーク。ジークの。あの、ヤミの手によって」 でもその“闇”が生まれた原因は元を辿ればジークを不当に扱って、剰え彼の故郷すら自分のエゴの為に蹂躙して滅ぼし…
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