王城②
光の格子。
それが消失し、開かれていく扉。
まるでジークを招き入れるかのように扉が開き、そして、ジークは見た。
視線の先。
謁見の間と呼ばれる絢爛豪華な室内。
赤絨毯が引かれ、黄金の装飾が至るころに輝くそこはまさしく、王の座する空間に相応しい。
かつて、ジークも勇者と共に訪れたことのあるその場所。
あの時は、「荷物持ちならもっと良い者がおるのではないか?」と小馬鹿にしたような笑いを王は響かせていた。
しかし、今は。
「ジーク」
そう声を漏らし、玉座に座する王。
その顔は怒りに満ち、上に立つ者としての風格は欠片もない。
「ここになにをしにきた? 王であるこの我の前に、なにをしにきた?」
「あんたを殺しにきた」
吐き捨て、歩みを進めるジーク。
「オレの大切なモノ。ソレを全て奪ったオマエを殺す」
呼応し、ジークの背に闇が現れる。
それはまるで、ジークの意思に応えるように更に濃くその深淵を増していく。
しかし、アレクは鼻で笑う。
「我に対し、殺すだと? どの口がほざいておる、この貧民めが」
同時に、アレクの側に現れるローブ姿の面々。
フードを深く被り、顔は見えない。
しかしその身からは漂っていた。
隠しきれぬ強者のオーラ。それが、はっきりと。
「この者たちは我の近衛。王国最強の者たち」
アレクの言葉。
それに、応えていく者たち。
そして一人の者が前に踏み出し、フードに手をかけーー
「近衛騎士が一人。閃光のーー」
「邪魔だ」
首を飛ばされ、収納の意思により瞬殺される一人目の近衛兵。
舞う、血飛沫。
それに笑い、歩きながら両手を広げた女。
顔は見えない。
しかしその余裕は崩れない。
「ふふふ。中々やるようね。今のどうやったの? できた
らお姉さんに教えて。この、近衛兵。旋律の」
「失せろ」
ぐちゃッ
神の手。
それを取り出し、女を後方の壁のシミにするジーク。
「ふんっ、二人をやっていい気になるなよ。俺は閃光と旋律の比ではない。来るなら全力でこい。この、近衛兵最強の炎使い。業火のシュエンが相手にーー」
「シね」
吐き捨て、ジークは距離を収納しシュエンの眼前に現れる。そして、「収納する、脳を」と呟き、その額を指で弾く。
瞬間。
シュエンは廃人となり、発狂。
そのシュエンの顔面。
そこにジークは天賦の拳を叩き込み、粉々に粉砕。
悲鳴をあげる間もなく、シュエンは無様な亡骸と化す。
残った最後の一人。
神速のミカミ。
近衛兵の中で最も速く、そして瞬きの間に対象を屠る【暗殺術】もつ者。
しかし、そんなミカミでも。
「後、一匹」
「……っ」
こちらを仰ぎ見る、ジーク。
その眼差し。
それに声さえも発することができず、ただ震えるのみ。
そしてそれは、アレクも同じだった。
目の前で繰り広げられた、現実。
それに息を飲み、アレクは懐に忍ばせた転移の翼を手にもつ。
「おッ、俺は神速のミカミ!! 俺の手にかかればッ、どんなモノでもーー」
ジークはその続きを呟く。
「コロす」
ミカミの速さ。
それを収納し、鈍足になったミカミに体を向けるジーク。
そして足元に転がる小さな瓦礫を手に取り、「この瓦礫にオマエの速さを」と呟き、ジークは軽く放り投げる。
刹那。
「!?」
ミカミの頭。
それを貫通し、瓦礫は壁に激突。
ミカミはその場に倒れ即死し、瓦礫は壁に無数の亀裂を刻みめり込んでしまう。
その光景。
それに、アレクは叫ぶ。
「こッ、この化け物め!!」
叫び、転移の翼をーー
「収納する。オマエの動きを」
「ぐぅッ」
「収納する。距離を」
アレクの眼前。
そこに現れ、ジークはアレクの記憶を収納。
そして、淡々と声を漏らしていく。
「故郷。火炙り。皮剥ぎ。八つ裂き。水責め。磔……」
ジークの故郷。
そこで行われた凄惨な処刑の光景。
それがジークの中に流れ込んでくる。
苦悶の叫び。
そして、幼い涙。幼い叫び。幼い悲鳴。
目をくり抜かれ、人の尊厳さえも踏み躙られ、火に包まれ、響く愉悦に満ちた者たちの嗤い。
「じ、ジーク」
「あ、あれは仕方のなかったことなのじゃ。お、お主の故郷。そそそ。そこに闇が宿っておると、勇者様が仰っておってな。こ、この国を。こ、この世界を守るために仕方なくーー」
「火炙り」
ジークの言葉。
それに応え、闇から首だけのドラゴンが現れる。
「ひぃっ」
顔を青ざめさせる、アレク。
瞬間。
大きく口を開け、ドラゴンは容赦なくアレクに向け炎を吐き出す。
アレクは、絶叫する。
しかし、その命は終わらない。
「収納する。オマエの死を」
「次は皮剥ぎだ」
「!?」
ゴブリンたちは駆け寄り、アレクの服を剥いでいく。
そして。
べちゃッ
ぐちゃッ
声にならぬアレクの絶叫。
それが響き、しかし、まだ終わらない。
故郷の人々に対し行われた、拷問。
それを全てアレクに行使するまでーー
「次は、八つ裂きだ」
ジークは決して、その手を緩めることなどないのであった。




