万物収納はあらゆるモノを収納する③
響く声。
それを聞き、ジークは空を見つめる。
場所は街から離れた森の中。
勇者に対する、復讐。
それを果たすのは簡単。
しかし、それではジークは収まらない。
良心を収納した、ジーク。
だからこそ、ジークはすぐにはアレンには向かわない。
「一人残らず、やってから」
「あの野郎の全て。ソレを全て奪い、そして根絶やしにして。最後の最後に、あの野郎をヤる」
理不尽な理由。
それで故郷を滅ぼされ、そして信じていたジュリアにも裏切られた。
「ジュリア。じゅりあ。てめぇも、許さない。あの野郎と同じように、最後の一人にしてやってやる。楽しみだ、たのしみだ」
染み渡る、ジークの声。
そこに宿るは負の感情のみ。
そんな、自身の思いをこぼすジーク。
そして、その視界にソレは現れる。
「見つけたッ、見つけたぞ！！」
嬉々とした声。
それが響き、翼を生やした一人の女獣人がアレンの視線の先に現れる。
茶髪に、筋骨隆々とした体格。軽装に身を包み、その手には鋭い槍が握られていた。
「ジークッ、アレン様の命によりその命をもらう！！」
勝ち誇った表情をたたえ、ジークに槍の矛先を向けるエレン。
だが、ジークは動じない。
静かに。エレンを見据えーー
「収納する。その翼とその槍を」
呟き、力を行使。
刹那。
「なッ、なんだと！？」
声が響き、エレンの双翼が闇に包まれ消滅。
そしてそのまま、エレンは地上へと勢いよく墜落。
ドカッ
周囲に響く、墜落音。
それと同時に、エレンの悔しげな声と苦悶の声が響く。
「くッ、くそぉ！！ なッ、なにがどうなっている！？ ぐっ、全身が痛い。つ、つよく打ちつけたか」
顔に汗を滲ませ、なんとか起きあがろうとするエレン。
しかし、そのエレンの元にジークは歩み寄っていく。
「また一匹」
そう呟き、その目を闇に蠢かせながら。
【収納物】
良心×1
男たちの足×4
槍×1
獣人の双翼×1
脳内に浮かぶ、収納物。
その中から、ジークは選ぶ。
「自分の槍で死んでみるか？」
槍を選ぶ、ジーク。
瞬間、ジークの手の中にエレンの槍が現れ握りしめられる。
その光景。
それに、エレンは目を見開く。
「ば、馬鹿な。お、お前は一体」
「収納する。お前の槍術を」
更に力を行使し、ジークはエレンの槍術を収納する。
【収納物】
良心×1
男たちの足×4
獣人の双翼×1
エレンの槍術×1
そして、ジークはすぐにそれを取り出し自分のモノとする。
「てめぇの槍術を取り出す」
眩い光に包まれる、ジークの身。
そして、ジークはエレンの槍術を手に入れ槍を自在に操れるようになったのであった。
