聖騎士③
目を見開き、後退り距離を置く聖騎士たち。
その白銀の鎧を身につけた聖騎士たちに、ジークは手のひらをかざす。
そして、声を発した。
「聖女の玩具共」
響く無機質なジークの声。
それにしかし、彼等は退かない。
気持ちを奮い立たせ、叫ぶ。
「ジークッ、この世界を再び混沌に陥れようとする者!!」
「マリア様の加護の元ッ、ここで我らが貴様を殺す!!」
「勇者様と聖女様ッ、そしてその仲間たちがもたらした平和!! それを壊させはしない!!」
聖女の加護。
それをその身に受けた彼等は、ジークを畏れない。
金色に輝く、聖騎士たちの身。
全て攻撃。それに、聖属性が付与され闇に対し絶大なる力を発揮する加護。
それが聖女の加護がひとつ、【聖属性付与】だった。
「覚悟しろッ、ジーク!!」
「ここが貴様の墓場だ!!」
「ココネ様にッ、ガルーダ様!! そしてゴウメイ様がお前に殺られた理由ッ、それは聖なる加護がなかったからだ!!」
威勢のいい猛り声。
それを余韻に、一斉に聖騎士たちはジークに斬りかかる。
負けるはずがない。
そんな自信をその顔に浮かべながら。
それに、ジークは力を行使した。
「収納する」
「てめぇらにかかった加護を」
刹那。
聖騎士たちにかかった加護が消滅。
聖騎士たちはただの騎士になり、更に。
【収納物】
天賦の肉体×1→0
収納した、メイリンの亡骸。
そこから天賦の肉体を取り出し概念化し、ジークは己に付与。
真紅のオーラ。
それがジークを包み、闇と混じり合う。
そして、ジークはその足を一歩前に踏み出す。
軽く。【収納物】の中で、メイリンがそうしたように。
瞬間。
途方もない地響き。
それが遥か彼方まで轟き、巨大なクレーターがそこに形成される。
蟻地獄に落ちる、蟻。
そんな風に、聖騎士たちはクレーターの中に滑り落ちていく。
皆、その顔に滲むは焦燥。
そして、絶望だった。
その聖騎士たちを見据え、ジークは拳を固める。
天賦の拳。
それを握り、こちらに滑り落ちてくる聖騎士たちにを見据えながら。
「くッ、くそ!! わッ、我らは聖騎士!!」
「マリア様に仕えッ、この世界の平和を守る!! 誇り高きーーッ」
「聖騎士だ!!」
叫び虚しくーー
ジークの拳。
その射程圏内。
そこに、聖騎士たちは入る。
そして。
「収納する。この拳が世界に与える影響を」
ジークはそう呟き、容赦なく彼等に拳を叩き込む。
天賦の拳。
ザールの拳とは、天と地程の差がある拳。
地に打ちつければ、大地が沈むと称されるその拳を躊躇いなく。
断末魔。
それをあげる間もなく、聖騎士たちは目に映らぬほどの粉末になり消滅。
そしてその拳から放たれた衝撃波で、世界は数秒に渡って揺り動かされる。
ジークの先の言葉。
「収納する。この拳が世界に与える影響を」
という言葉。
それさえも凌駕して。
しかしその言葉があったからこそ、世界への影響は最小限に抑えられたのであった。