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聖騎士①

メイリンの死。

それを見つめ、ジークは自らを【収納物】の中から取り出す。

死んだモノに興味はない。そんな表情を浮かべながら。


【収納物】

 ジーク×1→ジーク×0

 

そしてそこで、ジークは倒れ伏したレオナを見る。

ゴウメイの道場。

そこで冷たくなった子どもの頬を撫でていた、レオナ。


その姿を思い出し、


【収納物】

 レオナ×1→0


と意思を表明し、レオナもまた収納物から取り出したのであった。


〜〜〜


聖なる地。

そこは、大聖堂が佇み神々の加護に満ちた地。

そして聖女【マリア】が生まれ育った地でもあった。


「マリア様。先の魔王討伐、ご苦労様でした」


「できることなら我らもマリア様と共に旅立ち、勇者アレンと共にこの世界を救ってみたかった」


大聖堂の中。

そこに広がる、広大な内陣。長机と長椅子が並べられ装飾に満ちたソコは荘厳な雰囲気に満ちている。そこに響いたのは、先の二つの声。


曰く。

それは、メティスとクリスの声。

そしてその二人に礼を述べるのは、マリアその人だった。


「ふふふ。およしになって、二人とも。こうしてまたここで、お二人に会えたこと。わたしはそれが、とても嬉しいのです。ねっ? 神級治癒師メティス様と聖騎士団長クリス様」


太陽ような笑顔。

それを浮かべ、主祭壇から眼下の二人を見つめるマリア。

その背には鮮やかなステンドグラスが聳え、マリアの姿を艶やかに照らしていた。


「おぉ、相変わらずお美しい。流石はマリア様。献身的に勇者様の側にお仕え、魔王を討伐したにも関わらず……その有り様。このメティス。涙が止まりませぬ」


瞳を潤ませ、白髪白髭を蓄えたメティスはマリアに両手を合わせる。


そして精悍な顔つきしたクリスもまた、そんなメティスに倣いその場に片膝をつきーー


「団長として。このクリス率いる騎士たちは皆、この命にかえてもマリア様をお守りします」


そう声を響かせ、マリアに忠誠を誓う。


その二人を見つめ、「ありがとうございます」とマリアは微笑む。

しかしすぐに表情を曇らせ、続けた。


「ですが、今。再びこの世界は混沌に落ちようとしています」


二人に背を向け、ステンドグラスを見上げたマリア。

その顔は悪意に満ち、笑っている。

だが二人はそれに気づかず、マリアに問いかけた。


「混沌?」


「それは一体」


それにマリアは答えた。

視線を二人には向けず、わざと震えた声を発して。


「ジーク。勇者様を裏切りし者。その者が、勇者様のもたらした平和を崩そうとしているのです」


「「!?」」


表情を変える、二人。


「知っているでしょう? 昨今、様々なことがこの世界に起こっていることを」


「それは全て。あのジークがもたらしているのです」


笑いを堪え、言葉を紡いでいくマリア。

その姿。

それは聖女などではなく、悪女そのもの。


「しょ、証拠はあるのですか?」


「ジークという者がやったという証拠。それはーー」


「勇者様がそう仰っていたのです。あら? もしかして、勇者様のことが信用できないと仰るのですか?」


二人の疑問。

それにマリアは口調を変え、二人を仰ぎ見る。

二人はそれに慌てて頭を下げ、声をあげた。


「い、今すぐ奴の討伐を」


「あぁ!!」


マリアの言葉。

それを信じ、内陣から走り去っていく二人。

その背を見つめ、マリアは呟いた。


「さっさと行けって。時間の無駄だろ」


そう、忌々しく舌打ちを鳴らしながら。


〜〜〜


メイリンを見たモノ。

それらが全て収納され、静まり返った街中。

そこにジークとレオナは、【収納物】の中から現れる。

闇の揺らぎ。

そこからその身を現して。


時は既に、朝。

朝焼けが静かな街を白く照らしーー


そこでジークは力を行使した。


【収納物】

 メイリンを見たモノ


それを取り出し、街に人々を戻すジーク。


そして、更に。


「収納する。レオナの精神の損傷を」


そう呟き、ジークは自分の側に横たわったレオナの精神を元に戻す。


目を開け、「ジーク、さま」と声を発するレオナ。

そしてゆっくりと立ち上がってジークの側に佇み、「ありがとうござい、ます」とレオナは淡々とジークに礼を述べたのであった。

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